第19話 魔獣狩りと同業者(?)
リッツさんから魔撃ナックルを受け取った翌日、俺はさっそくリフレックス討伐のため、魔獣の森へやってきた。
「夜まで待たないといけないし、もっと遅く来てもよかったかも」
いつもの癖で朝イチで来てしまった。
リフレックスの住処は今まで見つかっておらず、夜に森の中を徘徊している姿しか確認されていない。
「森の奥まで巣を探しに行って、帰ってこなかった人もいるらしいし……」
リフレックス以外にも凶悪な魔物がいるんだろうか。ダブルバトルはさすがに避けたいなあ。
「とりあえず夜まで時間潰そう。体力温存しとかないと」
いつも休憩のときに使ってる、大きな木の上に登って寝っ転がる。
木の幹が良い感じにへこんでて、外から隠れられるんだよね。
「……無駄に早起きしたから眠くなってきた」
……。
…………。
__ __
「キュウ」
「……ん」
「キュッキュウ」
ペタッ
「……フガ。……ンッ!?」
な、なんだ……? 息が……ッ
「キュ~」
「ンン~! っぷはぁ! ってなんだ、きゅーたろうか……」
とりあえず鼻と口をふさぐのはやめてくれ……。
「キュウ」
「ん? あーそっか、もう夕方か」
いつもは森から出る時間だ。きゅーたろうは日が暮れる前に起こしに来てくれたみたいだ。
「起こしてくれてありがと。でも今日は大丈夫なんだ」
「キュウ?」
「今日は森の”魔獣”を倒しにきたんだ」
「キュッ!?」
きゅーたろうがなんかビックリしてる。
やっぱリフレックスは森の魔物にとっても危険な存在なのかな。
ガチャガチャ。
「ん?」
木の下のほうに誰かいるな。
「いくぞお前たち! グズグズするな!」
「で、ですが坊ちゃん……」
「やはり勝手に行くのは……」
「僕にはパパに買ってもらったこの魔法剣があるんだ! 魔獣なんて余裕で倒せるさ!」
俺よりいくつか年上っぽい男の子が、家来(?)の男の人を2人連れて森の奥へ歩いていった。
「あの人たちもリフレックス討伐に来たのかな?」
「キュウ~」
きゅーたろうは興味なさそうに俺のポケットを漁っている。
「今日はクリミ採ってきてないんだよ。ごめんね」
「キュウ……」
「代わりにこれをあげよう」
俺は昼食用に市場で買って持ってきた食べ物が入った袋を取り出した。
トンホーンのハムを挟んだサンドイッチと、干したフルーツの詰め合わせだ。
「好きなフルーツある?」
「キュッキュウ!」
きゅーたろうはレーズンみたいなやつを喜んで食べ始めた。
よかった、お気に召すものがあったみたいだ。
それからふたりで食事を楽しんでいたら、遂に日が暮れて森は真っ暗になった。
「よっと」
ボゥ……
「わ、ちょっと明るい」
リッツさんに貰った「微光ランタン」という魔道具を付ける。
青白い炎でそんなに明るくないけど、足元が見えれば十分だ。明るすぎると魔物を呼び寄せてしまうかもしれない。
「キュウ?」
「ここでリフレックスが来るのを待つんだ」
リフレックスを探して暗い森を歩き回るより、木の上で待ち伏せて下を通ったところで襲撃する方が良い。
「まあ、ギルドのおっちゃんに聞いたんだけど」
確かに、歩き回ったら他の夜行性の魔物に出くわすかもしれないしな。
「というわけで、これから凶暴な魔物と戦うから、きゅーたろうは巣に帰ったほうがいいぞ」
「キュウ……」
きゅーたろうは心配そうな声で鳴いて、俺のポケットをなんかガサゴソやったあと、森の奥へ飛び去っていった。
「また明日な、きゅーたろう」
さて、あとはリフレックスが来るのを待つだけ……
「うわああああああ!!」
「!?」
森の奥で誰かの叫び声が聞こえた。
「誰か魔物に襲われてる……?」
助けにいかないと……!!
「ちっくしょ~うまくいかないなあもう!」
俺は待ち伏せ作戦をさっそく諦め、声の聞こえた方へ向かって夜の森を走り始めた。
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