第16話 ステ確認アイテムの中の人【ステ確】



「ふう、今日はこんなもんか」



 リッツさんに魔法ナックルの開発をお願いしてから、しばらく経った。

完成するまでにマジックパワーをDにするため、俺は魔獣の森で修行していた。



 今日の成果はトンホーンが2匹と、バックスロックっていう、石の角が生えたシカみたいな魔物が1匹。



「これ以上は持って帰れないしな」



 荷馬車とかないから、相変わらず自分で担いで持って帰る。



 商業ギルドのおっちゃんに聞いたら、倒した魔物やアイテムを異空間に収容できるマジックアイテムがあるらしい。



「めっちゃ高かったけどね……」



 収容できる量にもよるけど、ステータス確認アイテムと同じくらいの値段だった。

しばらくは自分で持って帰るしかなさそうだ。



「でも、だいぶ力が付いてきた気がする」



 前まではトンホーン1匹でヘトヘトになっていたのに、今じゃあ3匹だ。

ギルドのおっちゃんにも「10才のガキが持ってこれる重さじゃねえだろ……」とちょっと引かれた。



「マジックパワーが上がってるのかは正直微妙なんだよなあ」



 そもそも魔法が使えないので、魔物との戦闘経験でステータスを上げることができないのだ。

基本殴って倒すから、パワーは結構上がってる気がするけど……。



「甘いお菓子は高級品でなかなか食べられないし……」



 マジックパワーは甘味の強い料理を食べることでも上げられるけど、

甘いお菓子やフルーツは貴重でとても値段が高い。



 たまに自分で見つけたクランベリーみたいな木の実を食べてるけど、甘いっていうより酸っぱいんだよなあ、アレ。



「キュウ」



「わっきゅーたろう、重いよ」



 魔獣の森に来ると、どこからともなくきゅーたろうが飛んできて顔に張り付いたり頭に乗ってくるようになった。



「キュッキュ」



「嘘つけって?」



 まあきゅーたろう全然重くないけどさ。

正直何言ってんのか全然分かんないけど、なんとなくでコミュニケーションを取っている。



「俺のズボンのポケットにクリミの実が入ってるから、勝手に取っていいよ」



「キュウ~!」



 きゅーたろうは俺のポケットからクリミを取り出して頬袋に詰めると、かわりにクランボの実を1個ポケットに入れる。

クランボっていうのはきゅーたろうがいつもお礼にくれる、辛くて美味い謎の木の実。

サクランボみたいだからそう呼ぶことにした。



 クランボの実を食べると、疲れが吹き飛んですごく力が湧いてくる。

クリミや他の木の実を食べてもそんなことにはならないので、なにか特別な木の実なのかもしれない。



 自生しているのも見たことがなくて、きゅーたろうが持ってきたものしか知らないんだよな。

きゅーたろうはどこで手に入れてきてるんだろう。



「そうだ、久しぶりにステータスを見に行こうかな」



 初めて教会までステータスを確認しに行って以降、行ってなかった。

だって高いんだもん。



「もしかしたらマジックパワーがDランクになってるかもしれないし」



 毎日森で狩った魔物を売って、お金も結構貯まってきたので、久々に教会へ行くことにした。



 __ __



「大将~やってる~?」



「居酒屋みたいなノリで教会来る子初めて見たよ」



 シスターのお姉さんがあきれたような顔で迎えてくれる。



「ごめん。居酒屋っぽい所に行ってきたからついクセで」



「子供が居酒屋なんていっちゃダメじゃ~ん」



「商業ギルドだよ。今日狩った魔物とか売ってきたんだ」



「……あーたしかに。あそこは居酒屋っぽい」



 買取りカウンターのおっちゃんの大将感はすごい。



「今日はステータス確認?」



「うん」



「まいどあり~。1万エルになります」



「割引クーポンとかないの?」



「ないよ。てかクーポンてなに?」



 やっぱ1万エルは高いなあ。早くステ確認アイテムがほしい……。



「あ、部屋の場所覚えてる? 今の時間はたしか……うん。もう使えるから勝手にやってきていいよー」



「ええ……」



 適当だなもう。



 場所は覚えていたので、俺はステータス確認の部屋へ向かう。



「……ん?」



 地下のステータス確認の部屋まで来たら、部屋の扉が少し開いている。



「誰かいるのかな? あのーすみませーん」



 (……えっやば、もう来たのっ?)



 ガタッ



 ……。



 …………。



「……ん?」



 なにか中で物音がした気がするんだけど。



 コンコン。



「あの~ステータス確認にきたんですけど~」



 ……。



 …………。



「……気のせいかな」



 まあいっか。ネズミかなんかいたんだろう。



 ギィ……



「相変わらずでっかい鏡だなあ」



 えーと、たしか呪文を言うんだったな



「コホン。えー、鏡よ鏡、わたしの秘めたる……なんだっけ」



「(……力を写したまえ)」



「あ、そうだった。わたしの秘めたる力を写したまえ」



「チャントオボエトケ」



「……は?」



 パアアアアア……



「ケッカ、デマシタ」



 鏡が光り出し、ステータスが浮かび上がる。

さっきなんか鏡に暴言言われたような気が……気のせいか?



【シュータ・ブラックボーン】

・11才・男

・所持金:782000エル

・HP:D+

・パワー:A

・ガード:D

・マジックパワー:E

・マジックガード:E

・スピード:E+

・スキル:毒耐性+、味覚補整+、魔素吸収+

・装備適性:ナックル(D+)



「78万!? ……って、パワーA!? この年で!?」



「マジックパワーあんまし上がってないな~……ん?」



「…………」



「え、今……」



「モンダイアリマセン」



 ステ確認の鏡、なんかいつもの説明口調じゃなくて感情持ってた気がしたんだけど。



「それにしても、マジックパワーが今Eでしょ。次がE+、その次がD……まだしばらくかかるなあ」



 マジックパワーのステータスをDまで上げないことには武器が手に入っても装備出来ない。



「あ、よく見たら11歳になってる。そっか、誕生日過ぎたんだ」



 この世界では、1年が12か月ではなくて、春夏秋冬がそれぞれ90日、計360日という数え方だ。



「俺の誕生日ってどうなってんだろうな」



 ちなみに前世では6月6日だ。



「……シュータ・ブラックボーンノ誕生日ハ、夏季ノ6日デス」



「あっそうなんだ。ありがとう鏡さん」



「誕生日くらい覚えとけ」



「…………」



「……あっ。えーと、モ、モンダイアリマセン」



 これって……もしかして……



「中の人いる?」



「イ、イマセン」



「君、名前なんていうの?」



「シ……ナマエハアリマセン」



 ……。



 …………。



「あ、でっかい虫モンスターだ」



「えっ無理無理無理!! どこどこどこ!!??」



 ガタガタッ!!



「あ」



「えっ」



 ステータス確認用の大きな鏡の後ろから、修道服を着た女の子が現れた。

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