第15話 能力の鍛え方は、戦闘と…食事?



「……なんじゃって? 魔法なんこつ?」



「ナックルだよ! 魔法ナックル! そんなお酒のツマミみたいなんじゃなくてさ!」



 リフレックスを倒せる武器、魔法剣を発明したのがリッツさんだと知った俺は、

似たような構造を持つナックルを作ってもらえないか相談するため、再度リッツの工房へ押しかけた。



「リッツさん、魔法剣を発明したんだろ? 俺も似たような武器が欲しくってさ」



 俺はリッツさんに、リフレックスにダメージを与える為には、

パワーをマジックパワーに変換して物理攻撃を行なう必要があること、

それには魔法剣という武器が必要なこと、しかし、俺にはナックルの適性しかないので、

マジックパワーに変換できる、魔法剣のようなナックルが欲しいことを説明した。



「たしかに魔法剣を作ったのはワシじゃ。……そうか、リフレックスを倒すにはアレが必要じゃったの。忘れてたわい」



「そうなんだよ。だからどうにかして作れないかな? 魔法ナックル」



「ふむ……」



 リッツさんはしばらく考えるようなそぶりを見せ、紙に何かを書きだした。



「ここに魔術回路を組み込んで、魔法剣の作用機序を応用して……」



「な、なに言ってるか全然わかんないんだけど」



 ちょっと10才には難しいかな……。



「うむ、多分作れるぞ」



「ほんと!?」



「必要な素材も、まあワシのツテで手に入る物で作れそうじゃな。少し時間はかかるがの」



「全然大丈夫だよ! よっしゃ!」



 欲しい魔道具を作るための素材を獲るために、倒さなきゃいけない魔物がいて、

更にその魔物を倒すための特殊な武器を作る……かなり遠回りだけど希望が見えてきたぞ。



「新しく武具を作るなんて久しくやってないからの。腕が鳴るわい」



「……ちなみに、お値段はどんくらい? 俺の全財産、今3万エルくらいなんだけど」



「なら2万エルで良いぞ。それよりシュータよ」



「マジ!? やったー! ……ん? なに?」



「お主、マジックパワーのステータスはいくつじゃ?」



「いくつって、Fだけど……あっ」



 魔法剣はマジックパワーがD以上ないと装備出来ないんだっけ、ということは……。



「ナックルの適性は良いとして、マジックパワーをもっと上げないと今のままじゃ使えんぞ」



「うう……ねえリッツさん、ステータスってどうやったら上がるか知ってる?」



「なんじゃシュータ、知らんかったのか」



「うん」



 教えてくれる親もいないしな。商業ギルドのおっちゃんとかに聞けば教えてくれたんかな。



「まず、ステータスの上がりやすさは個人差がある。シュータはナックル適性があるから、パワーやガードが上がりやすいかもしれんの」



 確かに、パワーのステータスだけ高かった。俺は物理攻撃タイプが上がりやすいのかも。



「ただ、逆にマジックパワーやマジックガードは上がりにくいかもしれん」



「マジかあ」



 今回に限っては能力適性が裏目に出ちゃってるな。



「ステータスを上げる方法は2つじゃ。1つは戦闘、そしてもう1つは食事じゃ」



「戦闘と食事?」



「そうじゃ。まず、戦闘についてじゃが……」



 リッツさんの説明によると、戦闘で相手にダメージを与えるほどパワーやマジックパワーが成長し、

相手の攻撃を受けるほどガードやマジックガードが成長する。


 そして、攻撃を回避するとスピードが成長する。

HPは長時間の戦闘や、戦闘回数を重ねることで上がっていくらしい。



 戦闘相手は魔物じゃなくても良いらしい。

冒険者の育成学校では、生徒同士でよく模擬戦闘をして鍛えているとのことだ。



「次に、食事じゃが……」



「うん」



「”命を喰して躰を造れ。炎は力、苦難は守り、飛躍の脚には酸を摂れ。甘露は魔力の糧となり、塩基は魔を防ぐ。”」



「……なんて?」



 雷とか落とす秘奥義の呪文かな?



「古代の人間が見つけ出した、食事で能力を上げる為の法則みたいなもんじゃ」



「全然わかんないんだけど」



「ほっほっほ。そうじゃろうな」



 リッツさんは俺にも分かるように要約してくれた。



「パワーの成長には辛い物、ガードには苦いもの。酸味でスピード、甘味でマジックパワー、塩味を摂るとマジックガード」



「それって……」



「HPは何を食べても成長する。命に感謝して頂こう、ということじゃ」



「なるほどなあ」



 食味でステータスの成長度合いが変わるのか。



「そういや俺、しばらく激辛キノコばっかり食ってた気がする……」



 きゅーたろうに貰って食ってた謎の木の実も辛かった。それでパワーだけ異常に上がったんだろうか。



「本来なら、この話は親が教えたり、幼年学校で習うんじゃが、こんな所に来てるくらいじゃ。シュータは通っとらんのじゃろ?」



「うん……」



 この世界の学校か。スラムでの生活に精一杯ですっかり忘れてた。



「リッツさん、詳しく教えてくれてありがとう!」



「うむ。武器が出来るにはしばらくかかる。それまでに鍛えてマジックパワーをD以上にしておくんじゃな」



「わかった! それじゃあ、魔法ナックルの開発お願いします!」



 武器が完成するまでに、がんばって鍛えてステータスを成長させよう!



「次回! シュータ、地獄の特訓編スタート! だぜ!」



「なんじゃそれ」



 前世でそういうアニメ見たんだよ。

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