第13話 スラム闇市と謎の工房
「うーむ、ロクなものが売ってない……」
スラム街に戻り、俺が暮らしている近くの闇市らしき場所をブラついてきたんだけど、
片っぽしかない靴とか、割れた食器とか、謎の魔物の干し肉とか、そんなのばっかりしか売ってなかった。
ステータス確認ができるアイテムについて聞いても、
「そんなもん売ってねえ、冷やかしなら帰ってくれ」って感じで追い払われてしまった。
「にゃあ」
「あ、ねこのすけ」
こいつは一緒に住んでるねこのすけ。というか俺がねこのすけのナワバリに居候してるんだけど。
「にゃっ」
「あ、これ? とりあえず闇市で買ってみた干し肉。食べる?」
「にゃあ」
謎の干し肉を二人で食べる。ワニの手みたいなのが先に付いたままなのが気になるけど、結構美味しい。
「もぐもぐ。それにしても、どっかにレアアイテムとか売ってる人いないかなー」
隠れて売ってる人のツテとかもないし。
「にゃい」
「どしたんねこのすけ。え、ついて来いって?」
「にゃっふ」
普段よりもキリッとした顔のねこのすけがどこかへと歩いていく。
とりあえず付いて行ってみるか。
__ __
ねこのすけが足を止めた場所は、スラム街の中心から外れた、崩れた家が並ぶ廃墟だった。
「え、そこ入るの?」
「にゃ」
屋根が崩れ落ちて、寝泊まりも厳しそうな家にねこのすけが入っていく。
「いや俺そこ入れないよー……お?」
家に近づくと、地下への階段があることに気付く。
ねこのすけが階段を降りていく。
「しゃーない、行くか」
ちょっと怖かったけど、勇気を出してねこのすけの後を追った。
……。
…………。
「ここは……」
階段を降りた先には、大量の物が積まれた空間があった。
何かが焦げたような、変なにおいもする。
「おや、お客さんかい? 珍しいのう」
奥から丸眼鏡をかけた、物腰が柔らかそうな老人が現れた。
「”リッツ工房”へようこそ。よくここが分かったね」
「ねこのすけが案内してくれたんだ」
「ねこのすけ……ああ、コイツのことか」
「にゃあん」
ねこのすけは工房にある棚の上で寝っ転がっていた」
「コイツは”トライテイル”という魔物じゃ」
ねこのすけ、魔物だったんだ。たしかに妖怪みたいなしっぽしてるもんな。3本生えてるし。
「コイツに気に入られるとは中々やりおるの。坊主、名前を聞いてもいいかの?」
「……シュータ・ブラックボーンだよ」
「ブラックボーン? 名前めっちゃカッコいいの」
うるさいな。
「俺、ステータス確認ができるアイテムを探してて。ここに売ってたりしない?」
「ふむ、能力鑑定の魔道具か。昔は売ってたこともあったんじゃが」
「えっ本当!? それまだ売ってる!?」
「何十年も前の話じゃ。とっくに売れちまったわい」
「なんだ~今はないのか」
やっぱ掘り出し物ってだけあって、探せばすぐ見つかるものじゃないんだな」
「ブラックボーン、どうしてもその魔道具が欲しいんかの」
「ブラックボーンじゃなくてシュータって呼んでよ。うん、俺どうしても欲しくってさ……でもどこにも売ってなくて」
そういうとリッツさんはニヤリと笑った。
「それなら、ワシが作ってやろうか?」
「え? じーさん作れるの!?」
「言ったじゃろ? ここはリッツ工房じゃ」
話を聞くと、リッツさんは昔、王家直属の鍛冶師をやっていたらしい。
しかし色々と違法な魔道具を作り、追放処分となり、今はスラムでひっそりと闇鍛冶師をやっているということだ。
「昔はよく貴族の連中に作ってやったわい」
「……でもお高いんでしょう?」
なにせ正規で買うと数百万だ。ローンとか組めないかな……
「20万エルで良いぞ」
「え、やっす! いや安くはないけど、それならいける! マジでいいの?」
「マジじゃマジマジ」
しばらく魔物狩りを頑張れば、稼げなくはない金額だ。
よっしゃ、希望が見えてきた!
「そのかわりなんじゃが……」
「ん、なんかあんの?」
「魔道具を作るための材料が1つ足りなくての」
「うんうん」
「"魔界の鏡"って素材なんじゃが、これがかなり強い魔物を倒さないと手に入らないのじゃ」
「なるほどなるほど」
「シュータ、それ獲ってきてくれんかの」
「えっ」
なるほどなるほど……。
上手い話には裏がある、ということである。
「にゃあ」
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