第10話 魔物の買取り価格



「お、重かった……」



 魔獣の森で倒したトンホーンを売るため、商業ギルドまでやってきた。



 で、どうやって巨大なトンホーンを持ってきたかというと……背負ってきた。

何故か背負えてしまった。俺、10才の普通のスラムのガキだぞ。

スラムのガキは普通じゃないかもしれないけどさ。



 初めて魔獣の森に行った時に比べてめちゃくちゃ強くなってる。



「とはいっても、さすがに重すぎる……」



 俺5人分くらいのデカさがある。みんなはどうやってコイツ運んでるんだ?



「てか、コイツデカ過ぎてギルドに入れないし」



 とりあえずギルドの入り口にトンホーンを置いて、買取りカウンターに向かう。



「おっちゃーん、買取りたのむー」



「おうシュータ。毎日がんばるな。いつもの木の実と薬草か?」



「うん。あとトンホーン1匹」



「おうよ。……ん? トンホーン?」



「うん」



「狩ってきたのか?」



「うん。デカすぎて持ち込めないから、入り口に置いてある」



「……ちょっと待ってろ」



 ギルドのおっちゃんがトンホーンを確認しに行く。あ、戻ってきた。



「おっちゃんおかえり」



「おうただいま。いやーマジでトンホーンじゃねえか」



「アイツ売れる?」



「もちろんだ。あのサイズは中々狩れねえからな。すげえじゃねえかシュータ」



 俺が倒したトンホーンは結構大物だったらしい。

やっぱ普通のはもうちょっと小さいのか。



「剣の刺し傷や炎魔法の火傷もないから値下げも無しで高く売れる。どうやって倒したんだ?」



「えっと、ツノ持って殴った」



「……素手で?」



「うん」



「アレを素手で殴って倒したって……シュータお前、パワーのステータス値いくつだ?」



「わかんない。今日の売り上げで1万エル貯まったら、教会でステータス確認しに行くんだ」



「そうか……安心しな、1万エルは確実にいくから」



「よっしゃ!」



「買取りに出さないで自分で欲しい部位はあるか? ツノとか皮とか」



「いや、まるごと買取りでいいよ」



「おっしゃ。じゃあ査定してくるからちょっと待ってな」



「はーい」



 ……。



 …………。



「お待たせいたしました。買取りでお待ちのシュータ様~」



「おっちゃんその言い方やめろキッショいから!」



「せっかく上客扱いしてやったのによお」



「そんなんいらん」



 だれも幸せにならないよ……。



「で、シュータの今回の買い取り額だが」



「う、うん」



「木の実と薬草が合計で800エル」



 これはいつも通り。初日が300エルだったことを考えると倍以上だ。



「で、トンホーンが……」



「ご、ごくり……」



「ドゥルルルル……」



「そういうのいいって!」



「3万2000エルだ」



「……マジ?」



「ああ、マジだ」



「めっちゃ高いじゃん……!!」



「トンホーンは通常サイズが大体2万エル。今回は大物で、損傷もないからな。どうする? 買取りは成立か?」



「もちろん!」



「よしきた。こちら代金だ。トンホーンの肉は需要が多いからな。またよろしく頼む」



「うん!」



 俺は今日の稼ぎを握りしめて、意気揚々とギルドを後にした。



 今までの稼ぎで貯めたお金が7500エル、今日の稼ぎが3万2800エル。



「合計で、えーとえーと……4万300エル!」



 一気に所持金が増えた! これでステータス確認が4回もできる!



「いや、とりあえず1回できればいいんだけど」



 さっそく明日、教会に行ってステータス確認だ!

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