第9話 魔物、倒せちゃいました



 初めてのダンジョン探索で300エルしか稼げなかった、あの日からしばらく経った。



「あの時の俺は無知で無力だった……」



「キュウ」



「しかし、俺は成長した!」



「キュウ」



「あ、クリミおかわり? はいはいちょっと待ってなー」



 採集袋からクリミを1つ取り出して、殻を割ってきゅーたろうにあげる。



「どうぞ」



「キュウ~」



 あれから俺は、魔獣の森でクリミ拾いをしながら小銭を稼ぎ、

稼いだお金で中古の薬草図鑑を買って、森で採れる薬草を調べた。



 その成果もあって、いくつかの種類の薬草を見つけることができた。、

それからは、クリミ拾いに加えて、薬草の採集も行ない、少しだけ稼ぎが増えた。



「キュウキュ」



「あ、今日もくれんの? ありがと。ぱくっ……激辛っ! でもめちゃうまっ!」



 森で休憩するときは、魔物に襲われないように木に登ってごはんを食べる。

そうしてると、どこからともなくきゅーたろうが飛んできて、一緒に過ごす。



 クリミをあげると、きゅーたろうはお礼にめっちゃ美味い謎の木の実をくれる。

これを食べると身体の疲れが取れて、力がみなぎる気がする。



「うーん、ちょっとは力が付いたかな?」



 いつかあのブタ野郎……トンホーンを倒すため、身体も鍛えている。

魔物との戦い方の本も探したんだけど、良いのが見つからなかったから、

昔読んだマンガを思い出して、とりあえず腕立て腹筋スクワット、そして正拳突き。



「キュウ」



「俺も剣とか魔法が使えたらな~。でも剣も魔法の杖も高くて買えないし」



 あと適性とかもあるらしいから、ステータス確認に行かないとその辺が分からない。



「もうちょっとで1万エル貯まるし、はやく確認にいかないと」



「キュッキュウ」



「ん? あーもうすぐ夕暮れか。教えてくれてありがとな」



 森が少し暗くなってきた。そろそろ帰らないと。



「きゅーたろう、またな~」



「キュウ~」



 __ __



 そんな感じで、きゅーたろうと別れて森の入り口まで戻ってきたんだけど……



「ブヒッブヒッ」



「マジかよ」



 トンホーンに遭遇してしまった。



 初日に出会ってからは、見かけても隠れてやり過ごしていたけど、

また森の入り口で、道を塞ぐようにウロウロしている。



 ここしばらく出会ってなかったから油断していた……



「ブッヒイ!」



「うわっ見つかった!」



 トンホーンがツノを向けて突撃してくる。あかん、死ぬ。



「と、とりあえず抑えることはできるはず!」



 俺は前回同様、自分の力を信じてトンホーンを両手で迎え撃った。



 ガッ!!



「……ん?」



「ブ、ブヒ」



 見事にトンホーンの突進を止めることに成功した。

しかも、なんか前よりも軽い気がする。



「あれ、こんな軽かったっけ」



 片手でも抑えられるじゃん。



「ブヒ……」



「これ、倒せるかもなあ」



 とりあえず1発殴ってみるか。



 左手でツノを掴んで、右手にパワーを溜める。

いやパワーとか溜まらないけど。雰囲気ね。



「くらええええ! 感謝の正拳突きパーンチ!」



 ボガンッ!!



「ブ、ブヒィ~!!」



 バタン、とトンホーンが倒れて動かなくなる。



 マジ? 一撃必殺? ワンパンメエエエン?



「や、やったか……?」



 あっこれ言っちゃいけないやつじゃん。



 ……。



 …………。



 大丈夫みたい。あ、あぶねー……ちゃんと倒せたみたい。



「や、やった……!」



 トンホーン、ぶっ倒したぜ!!



 今まであんなに恐れていたのが、嘘みたいにあっさり倒せてしまった。

いつの間にか俺、こんなに強くなってたのか。



「さてと、倒せたのはいいんだけど……」



 倒したトンホーンは全長3mくらいある。めっちゃデカい。



「これ、どうやって持って帰ればいいんだ?」

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