第6話 魔物がくれた木の実を食べた結果……



「え、なんだおまえ。俺とバトルする気か? 俺戦えるポ〇モン持ってないぞ」



「キュウ」



「わっぷ! こら顔にくっつくな!」



 なんだこのモモンガ。おそらくこの森に棲む魔物なんだろうけど。



「キュウ」



「ん? あーこの殻はさっき俺が食べた木の実の残り。いる?」



「キュッ」



 モモンガは木の実の殻を投げ捨てた。



「いらないんかい」



 その後、俺の採集用の袋をガサゴソして、新しい木の実を取り出すと、俺に渡してきた。



「キュウ……」



 ぺしぺし。



 モモンガは何故か木の実を叩き出した。



「どうした急に。あ、もしかしてこれの中身が食いたいのか?」



「キュウ!」



 この木の実を食べたいけど、殻が割れないのかな。



「じゃあ、1個だけな」



 木の実の殻を嚙み割って、中身をモモンガにあげる。

相変わらず硬いなこれ……歯が折れそうだし、何か殻を割る道具が欲しい。



「キュウ!」



 モモンガは美味しそうに木の実を食べている。



「美味いかー? そうかそうか」



 よし、コイツの名前はきゅーたろうにしよう。性別知らんけど。



「キノコも食うか?」



「キュッ」



 キノコはいらないらしい。まあ辛いもんな。



「キュ~」



 ヒュンッ



 木の実を食べ終わったのか、きゅーたろうはどこかに飛んで行った。



「元気でな~」



 ……。



 …………。



 ヒュンッ



 ぺたっ



「キュウ」



「わっぷ! ん~! っぷは! だから顔にくっ付くのはやめろ!」



 どっか行ったと思ったら戻ってきた。

とりあえず俺の顔に着陸するのは辞めて欲しい。



「キュウ」



「せめて口と鼻はふさがないでくれ……ん? なにこれ。くれんの?」



「キュウ」



 きゅーたろうが赤く光るサクランボみたいな木の実(?)を持ってきた。



「さっきのお礼? ありがとな」



「キュウ~」



 きゅーたろういいやつだな。それにしてもなんだろこれ。

めっちゃ光ってるな……食えるのかな。



「食ったらお腹が光ったりして。んなわけないか」



「キュッ」



 ぎゅむ



「むぐっ」



 きゅーたろうが持ってきた木の実を俺の口に押し込んできた。いーから食えってこと?



「もぐもぐ……んん!?」



 えっなんだこれ……



「辛!!!! めっちゃ辛いんだけど!! でもめっちゃ美味い!!」



 こんなの今まで食べたことない。口から火が吐けそうなくらい辛いのに、旨味がすごくてずっと食べていたい。



「す、すごいな異世界の木の実……こんなんあるんだ」



 採集で歩き回った疲れもなくなって、身体中から力が湧いてくるみたいだ。



「キュウ!」



「ありがとなきゅーたろう。なんかすごい元気出てきた。あ、俺の木の実もう1個食う? 割ってあげるよ」



「キュウ!」



 俺は袋から木の実を取り出し、殻を噛み割ろうとした。



「これ美味いんだけど、手で殻が割れるくらいの硬さだったらな~」



 ピシッ



「ん?」



 木の実を指でちょっと強くつまんだだけで殻にヒビが入った。

え、なんで? さっきまで指で全力で押しつぶしてもびくともしなかったのに?



「……えいっ」



 パキッ



 更に指に力を入れたら普通に殻が割れた。



「……マジ?」



「キュッキュウ」



「あ、きゅーたろう、これどうぞ」



「キュウ~!」



 美味しそうに木の実を食べるきゅーたろうを眺めながら、俺は戸惑っていた。



「なんでか知らないけど握力がゴリラになっちまった」



 今なら体力測定で握力10点取れるかも。

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