第7話 夕暮れ時の森から脱出せよ!
「やば、もう夕方じゃん」
きゅーたろうに貰った謎の木の実を食べたおかげで元気になったので、
キノコと野草探しを再開してたら日が落ち始めていた。
ちなみにきゅーたろうは俺が割ってあげたドングリみたいな木の実を口の頬袋に詰めるだけ詰めてどっかいった。
リスじゃん。巣に帰ったのかな。
「俺もそろそろ帰らないと」
夜になると魔物が凶暴になり、昼間より強くなるらしい。
通常の魔物だって倒せる気がしないから、魔物がいたら隠れてやり過ごしてたのに、
もしそんなのが襲ってきたら俺の異世界ライフ終わっちゃうぜ。
「けっこう採れたなー」
激辛キノコと、殻が硬いけど中身が美味い木の実、あとなんかの草。
薬草の見分け方とか知らなかったからそれっぽいやつ適当に採ってきた。
まあ何かしら売れるっしょ!
「お、森の入り口が見え……ん?」
ガサガサ
「ブヒィ」
森の入り口にツノが生えたブタみたいな魔物がいる。
「マジか……あそこ通らないと出られないのに」
「ブヒブヒ」
あ、あの硬い木の実食ってる。
殻めっちゃ硬いのにそのままいくんだ。
「あれに噛みつかれたらやばいな」
そんな感じでブタから隠れて様子を見ていたらさらに日が落ちてきていた。
「ど、どうしよう。夜になっちゃうよ」
もう走ってブタの横を駆け抜けるしか……夕方に駆けようかな。
ピシッ
「あっ」
まずい、なんか踏んだぞ。
「ブヒッ? ブヒィ!!」
あーバレたわこれ。しかもなんかブタの角が赤く光ってるし。
「これもしかして、激おこモードになったってこと?」
「ブッヒイ!!」
「うわー!!」
怒ったブタが突っ込んできた。もうダメかも……
ガシッ
「ブ、ブヒ……」
「……ん?」
とっさに突き出した両手が、豚の突進を押さえている。
え、俺こんな力あるの……?
「さっきも握力すごくなっててびっくりしたけど、もしかして俺、強くなってる?」
きゅーたろうがくれた木の実はパワーアップアイテムだったのかもしれない。
「お、おいブタ野郎……俺はここから帰りたいだけなんだ……だからお前も戻ってくれ」
「ブ、ブヒ」
「戻らないなら、お前の鼻にこの激辛キノコを詰めてやるぞ!」
「ブヒィ!!」
あ、なんか挑発されてキレてるかも。ヤバい。
ヒュンッ
「ん?」「ブヒ?」
ぺたっ
「ブッ」
「キュウ」
「ええ……」
きゅーたろうがどこからともなく飛んできて、ブタの顔に張り付いた。
「ブ……ブヒ……!!」
「キュッ」
「ブヒィ~!!」
ドタドタッ
きゅーたろうの顔面張り付きから解放されたブタは慌てて逃げだした。
「し、死ぬかと思った……きゅーたろう、ありがとう」
「きゅきゅ~」
きゅーたろうは「いいってことよ」とでも言ってそうなしぐさをして、また森の中へ飛んで行った。
俺はなんとか夜になる前に森を抜け、スラムに戻ってきた。
もう少ししたら完全に日が暮れて、凶暴な魔獣とやらが出現していたかもしれない。
きゅーたろうのおかげで助かった。
「あー疲れた」
とりあえず、今日採ってきた素材は明日売りに行こう。
どれくらいで売れるかな。
はやく1万エル貯めてステータスを確認しに行きたい。
「あのブタを倒せば経験値とかドロップアイテムとかもらえたのかな」
でも突撃してきたブタを押さえるので精一杯だった。もっと強くなってからじゃないと無理かー。
「にゃあ」
「あ、ねこのすけ。ただいまー」
「にゃっふ」
「こら袋を漁るな。あ、木の実いる?」
きゅーたろうが食べていた木の実をねこのすけにもあげてみる。
「……にゃっ」
ぺしっ
いらないらしい。
そんな感じで、はじめてのダンジョン探索をした1日が終わった。
「おやすみ~」
「にゃっ」
明日もがんばって、そんで美味いもん食べよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます