第3話 猫(仮)と一緒にスラムごはん



「……ここ、君んち?」



「にゃあ」



 スラム街で安全に過ごせる場所を探してたら、俺の食糧を狙う猫っぽい動物がいたので根城へ案内してもらった。



「なんか公園の遊具みたいだな」



 猫(仮)の後についていったら、大きなパイプや土管みたいなのが捨てられている場所に到着した。

どうやらここに住んでいるらしい。



「にゃあ」



「案内してくれてありがとな! 一緒にこれ食おうぜ」



 串焼き屋のおっちゃんに貰った余りの骨付き肉、というか肉がちょっと残ってる骨を袋から取り出し、猫と一緒に食べる。



「はぐはぐ」



「美味い?」



「にゃあ」



「そりゃよかった」



 さて、俺はどうやって食べよう。



 おっちゃんはよく焼いて食えって言ってたし、そのまま食ったら腹壊すよな。



「あ、そういえば、スキル……」



 転生するときに、イーツからスキルを貰っていた。

あのとき、たしかイーツが言っていたこと……



 ”どんな料理でもそれなりに美味しく食べられて、何を食べても死なないようにしてあげるの”



「……つまり、どういうことだってばよ」



 どんなスキルを貰ったのか何も分からないじゃん。

とりあえず本当に何食べても美味しく感じられて、そのうえ死なないならこの肉もこのままいけるか……?



「……よし、いくか」



「にゃあ」



 もしダメでも、おなか壊すくらいで死にはしないだろ。

それにしてもでっかい骨だなあ。

ワンピで出てくる骨付き肉くらいでかい。肉はちょっとしかないけど。



「……ぱくっ」



 もぐもぐ。



「……うっ」



「にゃあ?」



「うっま!!!!」



 え、めっちゃ美味いじゃん! なんだこれ!



「生ハム? 生ハムっぽい感じ」



 これが俺のスキル……スキルなのかな。なんていうんだろ、メシウマスキル?



「……なんでも美味しく食えるって言ってたし、この骨も食えるんかな」



「にゃあ」



 バリバリ。



 この猫みたいなやつは骨もバリバリ食べている。



 俺も昔、ケンタッキーのチキンを骨まで食ったことあるけど、別にそんな美味しくなかった。



「まあ、試しに食ってみるか」



 バリッゴリッ



「かってえ……あ、でもこれ、美味いかも」



 嚙んでるとビーフジャーキーみたいな味がしてくる。



「ふう、ごちそうさま」



 肉が付いてる骨ごと食ったら1本でかなりおなか一杯になった。

貰った骨はまだまだたくさんあるから、しばらくは生きていけそうだ。



「今のところは腹の調子も大丈夫だ」



 とりあえず今日はもう寝よう。



「おやすみー」



「にゃあ」



 ……。



 …………。



「おはよう」



 朝起きたら猫(仮)は居なくなっていた。どっか散歩でも行ったんかな。



「……元気いっぱいだ」



 お腹も痛くないし、熱もない。身体もだるくない。

捨てる寸前の肉を生で、しかも骨まで食ったのに。



「本当になに食っても大丈夫かもしれない」



 金持ちな貴族じゃなくて、スラムの孤児に転生してちょっとテンション下がってたけど、このスキル? があれば全然幸せに生きていける。



「よし! なんでも食って生きてやるぞ!」



「んーにゃあ」



「あ、おかえりー。ん、なにそれ? ……うわ」



 猫(仮)がスズメくらいの大きさの鳥を咥えて帰ってきた。



「にゃあ」



 口にくわえていた鳥を俺の前に落とす。



「え、なに、これくれんの?」



「にゃあ」



「ありがとな」



 鳥の全身が黄色と黒のシマシマだ。

でっかいスズメバチみたいな見た目だな。



「これはさすがに……食えるのか……?」



 勇気を出して食べてみたら、バナナみたいな味がした。なんでだよ。

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