第2話 転生したらスラムの孤児だった件
「ここは……」
目が覚める。なんだか不思議な夢を見ていたような気がする。
「いや、夢じゃない」
はっきりと覚えてる。俺の名前は黒保根修汰。
前世で毒入りパンを食って死んで、イーツとかいう女児熟女の神様に会って、この世界に転生したんだ。
「よっしゃー! 多分貴族とかに転生してるし、これで毎日腹いっぱいメシが食える生活に……ん?」
そういやここ、随分と薄暗い所だな。
あとちょっと臭い。今座ってる地面も固いし。
まるで、よく行ってたレストランの裏路地のゴミ捨て場みたいな……。
「てか服とか前と同じじゃん、本当に転生したんか?」
死ぬ前に着てたTシャツと短パン、ボロボロのスニーカーを履いている。
「とりあえず向こうにいってみよう」
ここでぐだぐだしててもしょうがないので、薄暗い路地から明るい通りへ移動する。
「うわあっ……」
足が6本ある馬みたいな動物が、荷物や人を乗せて道を歩いている。
周りの店には見たこともない魚や、フルーツが売っている。
店員らしき人が呪文を唱えると、大きな壺から噴水みたいに水が出て、
お客さんが持ってるコップに注がれていく。
空中に炎が浮いていて、それで肉を焼いて売っている屋台もある。
「ここ、異世界だ!」
ぐー……
「腹減った……」
なにか食べたい。あ、あの串焼き美味そうだな。
「うーん……なんも持ってない」
転生したとき、荷物は何も持ってなかった。ポケットの中も探したけど何も入ってない。
「おいそこの坊主、買うのか?」
串焼き屋の前で突っ立っていたら、店のおっさんに話しかけられた。
「買いたかったんだけど、お金ない」
「チッ、スラムのガキかよ。買わねえんならどっか行け。商売の邪魔だ」
スラムのガキ? ってなんだ?
「おっちゃん、スラムって何?」
「何って、おめえみたいなガキや浮浪者が棲みついてる所だろうが」
「どこにあるの?」
「なんだお前、スラム街のガキじゃねえのか?」
「母ちゃん、いなくなっちゃって」
「……捨てられたばっかりか」
「そんな感じ」
「はあ……やるせねえな」
おっちゃんはため息をつくと、屋台の裏から何か袋を取り出した。
「これをくれてやる。独り立ち記念だ。ちゃんと焼いて食え」
「これ……骨?」
袋の中には、少しだけ肉が残っている骨がたくさん入っていた。
「スラム街はあっちだ。骨はその辺に捨てとけば野良犬が勝手に持っていく。さあ行った行った。金がないやつに売れるもんはねえ」
「おっちゃんありがとう!」
「……死ぬなよ、坊主」
__ __
「ここがスラム街か」
おっちゃんに教えてもらった場所へ行くと、崩れた建物や、壊れた家具、
廃材の山がいくつも連なるゴミ捨て場のような所だった。
無職の浮浪者や、乞食、親を失った孤児などがここで暮らしているらしい。
「うーん、どこで休もうかな」
前世でよく食べられる野草を探しに行っていた川の土手には、ホームレスのおっちゃんが住んでいた。
勝手に草をむしると、「そこは俺んちのナワバリだ!」と怒られたことがある。
多分、このスラム街に住んでる人たちもそれぞれナワバリがあると思う。ちゃんと場所を選ばないと……
ガサゴソ
「ん?」
「にゃあ」
野良猫がおっちゃんにもらった袋を漁っていた。
「ちょいちょい、勝手に漁んな猫……ねこ?」
しっぽが3本あるし、なんかめっちゃ長い。猫じゃないかも……。
「なあおまえ、この辺で休める所知らない? 食いもん分けてあげるから教えてよ」
「にゃあ」
猫(?)はしっぽを器用にくねらせて、ガレキの山のほうを差す。
「ついて来いって?」
「にゃあ」
「よし行こう」
俺は謎の猫っぽい動物の案内で、スラム街の奥へと足を踏み入れた。
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