ダンジョンでぼっち飯してたら最強のSSSランク冒険者になってた。
ふぃる汰@単行本発売中
1章 魔獣の森 編
第1話 パンを食べたらお亡くなり
あーあ、やっちまった。
まさか公園に落ちてたパン食ったら死ぬとは思わなかった。
カビも生えてなかったし、見た目きれいで全然腐ってなさそうだったのになー。
「てかここどこだ? 天国?」
真っ白で何もない。
昔、栄養失調で貧血になったときみたいだ。
あの時は目を開けてたのに視界が真っ白になって気絶したんだよな。
病院のごはん美味しかったな。
ずっと入院してたかったな。
「イツコの部屋へようこそなの!」
「わあっ! びっくりした」
いきなり背後から声をかけられた。
振り向くと、そこには……
幼稚園の年長さんくらいの女の子がいた。
「お嬢ちゃんいくつ? お父さんかお母さんは近くにいる?」
「ワタシは幼女ではないんですの! 来年で5012才なんですの! 熟女なんですの!」
「それはもう熟女っていうか魔女だけど」
幼女じゃなくて妖女だったみたい。
「ワタシは転生神、イーツなの!」
妖女じゃなくて神様だった。
え、イツコの部屋はどっから来たん?
「あなたは黒保根修汰、10才、無職なの」
「あ、うん。無職ってか小学生だけど」
「あなたがかわいそうな死に方をしたので、前世の知識を引き継いだまま他の世界に転生させてあげるの」
「かわいそうな死に方……」
「あなたは公園に落ちていたパンを拾い食いして死んだの。パンには致死量の毒劇物が混ぜられていたの」
イーツの話によると、公園の近所に住む男が、
カラスや野良猫を駆除するために毒入りパンを作り、公園に放置したらしい。
結果、人間の俺が食ってしまい、パンに入ってた毒のダメージで死んで、男は逮捕。
公園にばらまかれたパンは回収。
「……俺以外に被害にあったやつはいる?」
「いないの」
「猫やカラスたちも?」
「食べられる前に回収したから大丈夫なの。ネズミ1匹死んでないの。あなた以外は」
「そっか、よかった……」
あの公園にいるカラスや野良猫たちとは、一緒にメシを食った仲間だった。
近所のコンビニの廃棄弁当や、レストランのゴミから食べられる物を探して、みんなで飢えをしのいだ。
「どうして拾い食いなんかしたの?」
「母ちゃんと二人で暮らしてたんだけど、ちょっと前に母ちゃん、いなくなっちゃって」
「そうなの……」
「金もないし、給食で余ったパンとかデザート持って帰ったりしたけど、足りなくてさ」
「それは、つらかったの……」
「もともと母ちゃん、週イチくらいで帰ってきて、1000円札だけ置いてどっか行っちゃうような人だったから」
1週間1000円生活もキツかったけど、もらえてるだけマシだったのかもしれない。
「修汰はがんばって生きてきたの! 来世ではもっと良い環境で幸せに暮らして欲しいの!」
「俺はおなかいっぱい美味いメシが食えればなんでもいいや」
「なにか欲しい能力とかはないの? ワタシが修汰を最強にしてあげるの!」
「えーそういうのは別に……。あ、じゃあ1個だけお願いしてもいい?」
「お任せあれなの!」
「食い物に毒とか入ってても死なないようにしてほしい」
毒入りパンを食べた後、体の中が焼けるように痛くて、何回も血を吐いた。
死ぬまで多分1時間くらいもがき苦しんだ。
あんなのはさすがにもう、嫌だ。
「分かったの。じゃあ、どんな料理でもそれなりに美味しく食べられて、何を食べても死なないようにしてあげるの」
「お、それはいいね!」
石ころとか舐めたらキャンディーの味がすんのかな。それはないか。
カタン。
「ん? あれ、なんでこんなところにドアが……?」
気づいたらどこ〇もドアみたいな扉が近くに置いてあった。
「……そろそろ時間なの。あのドアの先に修汰の新しい世界が待ってるの」
「そっか。じゃあ、俺、行くわ!」
ギィ……
ドアを開け、その先へ1歩踏み出す。うわめっちゃ眩しい。
新しい世界では、毎日おなかいっぱいごはんが食べたいな。
「転生先でもがんばって生きるの!」
「うん! イーツありがとー!」
「年上を敬うの! あと拾い食いはもうしちゃだめなの!」
「えー? なんだってー?」
「そこは主人公補正発動するとこじゃないのー!」
こうして俺は、異世界に転生した。
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