第15話 普通の鬼ごっこはスポーツと呼べるのか
生徒会の臨時メンバーとして迎えられてから一週間が経過した。
俺はもう逃げる事を諦め、今日の放課後も素直に生徒会室へと向かう。
「あ、魔王様だ!やほー!」
「……コイツは」
廊下で鉢合わせたのはエウロラだ。
あの後俺は仕置きとしてコイツに散々惨たらしい嫌な事をしたのだが、その全てを逆に喜ばれた。
何故喜ばせねばならんのか、だんだんと虚しくなってきた為に惨たらしい嫌な事の数々を止めたのだ。
それを、やほー!だと?よくもぬけぬけと言えたものだな。
はぁっ……と俺はため息一つ溢し、諦めて生徒会室へと歩みを進ませた。
そうして目的地に向かうのだが、隣を歩くエウロラがやけに大人しい。
昨日の嫌な事が効いたのか?と思うもそんなたまではない事を俺は知っている。
何せ前世からの付き合いなのだ、嫌でも分かってしまう。
「何だ貴様、具合でも悪いのか?ならば保健室にでも行ってこい。俺は連れ添わんがな」
「なぁに魔王様、あたしが心配なの~??」
「阿呆め。そんな訳ないだろう」
などと言い合いながら、最後にエウロラはボソッと呟いた。
「……そういうとこなんだけどなぁ」
「ん?今何と言った?」
上手く聞き取れずに俺が返すも、エウロラは笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。
何だ、訳が分からん。
俺はそう思うも特に追求はしなかった。
部屋に着き、席に座る。
早速始まる今日の話し合い。
「それでは先日の人体模型の件ですが、火野先生への報告は副会長に一任したいと思います。木島先輩、よろしいでしょうか?」
『ああ、構わないよ会長。上手く伝えておこう』
あの一件をどうやって一般民に伝えるのか。
人体模型に転生したガルドールの仕業でした、とも言えぬだろう。
まあヨハンの事だ、言い回しを考えるなど造作もない事であろうな。
俺はそこに大した心配はしていなかった。
それよりもあのゴリアテが哀れでならない。
学校の人体模型に転生など、生まれ変わる対象を間違えたというべきか。
……いや間違えすぎであろう。
奴はこれからどうするのだろうか。
俺は在学期間中だけでも奴の話し相手くらいにはなってやろうかと考えていた。
「では次に、本日の話し合いの議題ですが」
華恋が話を進める。
今度は一体何をやらされる事になるのだろうかと俺は身構えた。
「来月に控えているスポーツ大会の計画、立案を主な内容とします」
何だ、急に生徒会らしくなっているではないか。
俺はてっきりまた怪現象に挑む展開かと思っていた為、少し拍子抜けしていた。
スポーツなどどれも平和な種目だ、その中でもまあ球技が妥当な所か。
俺も剣道で鍛えた動体視力がある、ボールの球速くらい何てことはない。
けれどそんな俺の油断は、全く予想しない形を生み出す。
「それで、どんなスポーツにするかだけれど」
「はーい!鬼ごっこは?」
「ええ、じゃあそうしましょう。では次に——」
「いや待て。話し合える速度ではないわ」
俺は華恋とエウロラのやり取りにストップをかけた。
何だ、高校生にもなって鬼ごっことは。
頭の悪すぎる会話に流石の俺もついて行くので精一杯だぞ。
そんな風に考える俺は1人、完全に孤立している事に気付く。
「え、何がいけないんだよ如月?楽しそうでいーじゃんか」
「そうですよ魔王様!生き残りサバイバルは社会に出ても役立ちますよ!」
いや、そういう競技ではあるまい。
競技という枠に入るかすら、微妙に怪しい。
『舞人君、君は固定観念に囚われ過ぎのようだ。いいではないか、鬼ごっこ。通常の球技では得手不得手が生じてしまい、上手くバランスを取れない。だがその点幼い頃から慣れ親しんでいるであろう鬼ごっこならば、そんなに大きなハンデにはならない。まあ陸上部が優位に立つかもしれないが、そこはルールで補うとしよう』
俺はそこまで言われて観念した。
というか別に断固鬼ごっこを反対したかった訳ではないのだが。
まあ確かに、スポーツ大会という概念に囚われていたのかもしれんな。
内容が決まり、その他調整する点の話し合いを進めていく。
そうして俺たちはそれぞれの仕事を割り振って、この日は終了となる。
最後に生徒会顧問の眼鏡がやって来て、今日の決まった内容に目を通す。
だが眼鏡はその印刷したプリントを読み終えてすぐにこう言った。
「え、鬼ごっこ?ダメに決まってるでしょう?スポーツ大会は毎年、球技限定よ?」
「……。」
と——。
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