04


俺の前には大きなアジフライが二枚と添えのサラダ。

ご飯とみそ汁からはほんのり湯気がくゆり、食欲を誘う。

小金井の頼んだ焼肉定食も、細切れの肉がたっぷりのっていて食欲をさそってくる。


「わあ、美味しそう! いただきまーす」


さっきまで失礼なことを口走っていた小金井が真っ先に箸をつけた。

普通そこは先輩が箸をつけてから食べるもんだろ、と思ったけれど、こいつには何を言っても野暮ったくなる気がして言うのは止めた。

俺もさっそくアジフライを一口頬張る。


「うまっ!」

「美味しい~!」


まさかの小金井と声がハモった。

俺たちは顔を見合わせる。


「アジフライめちゃくちゃ美味い。衣サクサクでたまらん」


「こっちのお肉もめちゃくちゃ柔らかいしご飯進む味です」


俺たちは夢中で食べ、あまりの美味しさに少しだけ交換して食べ比べまでしてしまった。

普段そんなことはやらないんだが……まあ、美味しさに感動したというかなんというか。


あっという間にペロリと平らげ、腹も満たされ大満足だ。

そんないいタイミングで温かいお茶が運ばれてくる。

ほっとするような細やかな気遣いに心まで満たされていくようだ。


「あのっ、すっごくすっごく美味しかったです!」


小金井が興奮冷めやらぬ様子で伝えると、店員さんはふふふと上品に微笑んだ。


「お口に合ってよかったわぁ」


「お二人で切り盛りされてるんですか?」


「ええ、そうなんよ。お父ちゃんと二人でやってるの」


「へぇ~、大変ですね」


「見ての通りお客さん少ないから、大変なんてことはないんよ」


「こんなに美味しいのに。もっとお客さんに知ってもらいたいなぁ」


「まぁ~、ありがとね。嬉しいわぁ」


店員さん――朝子さんというらしい(小金井がコミュ力発揮していろいろ聞き出した)は、「また来てね」と和やかな笑みで俺たちを送り出してくれた。


美味しいご飯と朝子さんの人柄に絆されたのだろうか、なんだかとても満たされた気分だ。

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