03


お昼時を過ぎたとはいえ、思ったよりもガランとしている店内。

それほど大きいわけでもないのに少し物寂しい。


メニューを開けば定食がずらりと並ぶ。

刺身定食、天ぷら定食、アジフライ定食、焼き魚定食、焼肉定食……。

どれも魅力的なワードでさらに値段も思ったより手ごろ。


「迷っちゃいますねぇ」


「俺はアジフライ定食」


「じゃあ私は~」


小金井はメニューとにらめっこしながらうんうんと優柔不断に悩む。

かく言う俺も、即決に見せかけてかなり悩んだ。

小金井、早く決めろ。俺の決意が揺らぐだろうが。


「私は焼肉定食にします」


ようやく決めた小金井が声を上げると、先ほどの店員さんが「はーい」と注文を取りに来る。

注文した料理が来る間、俺は店内を見回した。


明るい店内は掃除がよく行き届いて清潔感がある。

店員さんは彼女一人、他に働いている人はいなさそうだ。

いや、厨房には調理している男性がチラリと見える。


「雰囲気いいお店なのに、人少ないですよねぇ?」


小金井が声を潜めて言うので、俺は無言で頷いた。

ちょうど同じことを思っていたからだ。


「なんでだろうな? もしかしてあんまり美味くないとか?」


「えー、だったらガッカリですよねぇ」


そんな失礼なことをコソコソしゃべりながら待っていると、しばらくして「お待たせしました」とこれまた朗らかな声で定食が運ばれてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る