十六話 先代幹部の実力

剛斗と共に敵を殺していたが、戦いの中で火蓮が負傷したので、華城と翔斗の元へ戻ってきた。




俺「火蓮が負傷だ。大きなけがではないが手当を頼む」




火蓮「悪い、清次」




俺「問題ない。あれ、久遠さんは?」


華城と司令をしていたはずだが・・




華城「獅電殿のもとへ行った。きっと今頃共闘しているだろう」


華城が獅電さんの居る方向を指さした。




俺「そうか。こっちに幹部が居ないのには何か理由があるのか?」


明らかに手応えがない。豪の武士でさえ簡単に勝てているほどだ。




華城「きっと、獅電殿を狙い撃っているのだろう」




俺「卑怯な奴らだな・・俺たちが加勢しても良いか?」


いくらなんでも二人で幹部と戦わせるのは酷だ。




華城「そうだな・・では、集団戦に特化した者をここに残し、単体戦を得意とするものを獅電殿のもとへ向かわせる」


少し考えて言った。




俺「俺はここに残るのか?」




華城「ああ」


正直、久遠さんたちを助けに行きたかったが、地割れを最も活かせるのは集団戦だ。仕方ない。




翔斗「それで、獅電さんの方に向かわせるのは誰だ?」




華城「雷煌、美月、翔斗、そして剛斗の四人だ」




俺「翔斗も行くのか?」


ここで華城の護衛をしたほうが良いのでは?




翔斗「おいらが守る必要のないくらいの敵しか居ないからな。強敵から守る方がいいだろ」


確かにこっちは雑魚ばかりだ。




俺「わかった。伝達してくる」


四人のもとを周り、加勢するよう伝えた。




      *




 アタシたちが獅電さんのところに行って助けになれるのか、正直疑問に思った。


でも華城に言われちゃったし、幹部はあっちに集まってるみたいだし・・・・




アタシ「行くしか無いわね」


四人で獅電さんたちのところへ来た。




雷煌「助太刀に来ました!」


雷煌が獅電さんに伝えた。




獅電「そうか」


獅電さんの声は冷めきっていた。


足元にはたくさんの死体が転がっている。




剛斗「これは!!!!!」




アタシ「どうしたの? 剛斗」




雷煌「こ、これ・・・・久遠さんですよね・・・・・・」


声が震えていた。


久遠さんの胴体が切り刻まれた状態で転がっていた。




美月「獅電さん! 久遠さんは・・・・」


まさか・・・・!




獅電「話はあとだ。この二人を殺すためにここに来たんじゃないのか?」




アタシ・翔斗・雷煌・剛斗「はい!!」


五対二の戦闘が始まった。




獅電「俺の所には絶対に近づくな。体を細切れにされたくなければな」


激しく戦いながら言った。




アタシ「ということは・・アタシたちが相手するのはあそこの大剣馬鹿野郎ね」




剛斗「よし! 行くぞ!!!!」


剛斗が敵の大剣を砕き何度も殴る。




剛斗「畜生! どうしてびくともしないんだこいつは・・・・」


剛斗が拳を触りながら言う。痛かったのかしら・・・・




アタシ「剛斗! そのまま殴り続けるのよ!」


アタシと雷煌で一気に決める。




剛斗「うぉぉぉぉぉ!!」




翔斗「危ない!」


翔斗が盾をこちらに投げてきた。




雷煌「な、何が!?」


おかしい。敵が別の大剣を振るってきた。




翔斗「そいつの大剣もきっと、術で生み出されたものだ! 何度破壊しても意味がない!」


攻撃を防ぎながら言う。




アタシ「義和と同じってことね・・では、盾を持って行くわよ!」




ぐお「オレには必要ねぇ!!!!」


剛斗が殴り、骨が砕ける音がした。


相手の骨が折れた!




アタシ「よし! 今なら!!」




翔斗「違う! 美月!」




剛斗「うぁぁぁぁ!!」


剛斗の叫び声が聞こえる。




雷煌「剛斗さん!」




翔斗「骨が砕けたのは剛斗の方だ!!」




アタシ「は!?」


剛斗が倒れているのが見えた。




アタシ「あいつ、剛斗より小さいでしょ!?」


体格差的にそんな事ができるわけ・・・・




雷煌「翔斗さん! 剛斗さんの手当を!!」


応戦しながら言った。




翔斗「ああ!」


翔斗が剛斗を連れて走っていった。


まずい、二人になっちゃったわね・・・・




      *  




俺「ほぼ全員掃討したか・・」


見渡しても、ほとんど敵が残っていない。




華城「よし、集まれ! 豪の武士はここで待機! 幹部の皆は久遠殿の助太刀に向かうぞ!!」




俺「ようやく俺たちも強えやつと戦えるんだな」




華城「行くぞ」


将英の風刃術に任せて移動した。




将英「ここだな」




俺「って、敵二人しか残ってないじゃねえか!」


獅電さんと久遠さん、想像以上に強いな・・・・


そしてどちらも戦闘中だ。わざわざ俺たちが来る必要はなかったのかもしれない。




美月「将英! 獅電さんの助太刀に行って! 清次も!」




俺「なんでだ・・・・?」




将英「そんな事はいい! 早く行くぞ」


将英に腕を引っ張られた。




俺「わかった・・そいつは任せたぞ、了斎!」




俺「将英、何で俺たち二人だけが獅電さんのところに行くんだ?」


人数が均等じゃない。




将英「オレと清次の共通点は、敵に近づかなくてもある程度攻撃ができることだ。つまり、獅電さんの相手は『近づいてはいけない敵』なんだろう」




俺「そういうことか・・」


さすが将英。情報整理を欠かさず、状況判断能力も桁違いだ。


華城は知識で答えを導くが、将英は『現状』を見極めるのが得意なのだろう。




戦っている獅電さんが見えてきた。




俺「獅電さん! 大丈夫ですか!!!」




獅電「俺は大丈夫だ。それよりもあっちを・・」


こちらを見ずに言う。




俺「あっちには俺たちの仲間が皆居ます! あっちはもう大丈夫です!」




獅電「そうか・・倒そうと思わなくていい。最大限敵の邪魔でもしてくれ」


信じられないほど冷静だ。今もなお戦ってるのに・・・・




将英「はい!」


将英の風刃でじわじわ弱らせていく。




将英「地割れは起こせるか?」




俺「ああ」


地割れも起こした。獅電さんはすぐに避けたが、敵は穴にはまっているようだった。




俺「よし、行くぞ将英!」


二人で殺す。




獅電「退け!!」


と叫ぶ。




将英「ぐっ」


声を出す間もなく、将英は切り刻まれた。


俺は何とか避けられたみたいだけど・・・・速すぎた。




俺「将英!!!!」




獅電「清次、一旦下がれ!!」




俺「将英! しっかりしろ! お前ならまだ大丈夫だ! 翔斗を呼ぶから!!」




獅電「清次! そいつはもう助からない!! 分かるだろ!!」


獅電さんが応戦しながら怒鳴った。




 俺も死んでしまったら元も子もないと、敵のところから将英を連れて離れた。




俺「将英! 大丈夫だ! まだ・・まだなんとかなる・・」




将英「清次」




俺「将英! 喋れるのか!? 今すぐ翔斗を連れてくるから・・」




将英「いい」




俺「いいってなんだよ! 死んじまうぞ!」




将英「オレはもう・・戦えない・・生き延びたとしても、お前らの役には立てない」


よく見ると、将英には指が数本しか残っていなかった。




俺「だとしても、お前は必要だ・・・・!」




将英「豪の武士に・・とても優秀な者が居る・・今後の宰川軍は・・・・清次たちとそいつらに託す・・」


将英の声が小さくなっていく。




俺「将英!!!!」


顔を近づけたが、息をしていないようだった。


まただ。また仲間が目の前で・・・・




東二「ぐぁ!!」


獅電さんが一発斬っているのが見えたので、俺も地割れを起こした。


そろそろ勝てるんじゃないか・・?




獅電「よし、よくやった清次」




 何で泣いてんだ俺は・・・・


生まれてからあんなに仲良くなった歳上は初めてだった。


俺たちがどんなに馬鹿なことをしていても、将英は笑って見守っていてくれた。


将英は俺たちを叱ることがなかった。歳上としてどうなんだ?と思うことも合ったけど、それが将英のいいところなんだろうな・・・・


地割れを起こしたのでもう俺の仕事は残っていない。


一旦美月たちの所に戻ろう。




      *




わし「火蓮、もうけがは大丈夫なのか?」


火蓮は普通に戦う気満々だった。




火蓮「あら、妾を甘くてみてもらっちゃ困るわね。あんな弱小武士に付けられた傷で動けなくなるはず無いじゃろ」


いくらなんでも口が悪すぎはしないか?




わし「ならいいが・・」




霧島「そんなこと言ってる場合じゃない! こいつを二人で燃やせ!」




火蓮・わし「せーの」


二人で敵に火をつけた。大剣があろうと燃えてしまえば終いだ。




雷煌「華城さんはどこに居るんですか?」


確かに華城の姿が見当たらない。




美月「そういえば居ないわね・・・・まだあっちに居るのかしら?」




雷煌「そうかもしれませんね・・終わったらあっちに戻りましょう」


刀を抜きながら言った。




美月「そうね。でもまず、敵を倒してからよ」




雷煌「はい!」




 まずいな・・・・一向に終わる気配がない。というか、この人数差があっても消耗戦に持ち込まれている。体力ではおそらく先代の幹部の方が上。この状況を打破するには・・・・・・




霧島「はっ・・・・・・」


霧島の声が聞こえた。




わし「霧島!!!!!」


霧島が胴を真っ二つにされている。


とんでもない出血だ・・




わし「翔斗! 霧島を陰に連れていけ!」




翔斗「わかった!」


翔斗が霧島を抱えて走っていく。




美月「あいつ大丈夫なの? 下半身なかったわよ」


大丈夫なはずは無いが・・・・




わし「大丈夫だ!! とにかく、今は目の前の敵に・・」








?「ハハハ、だいぶ待たせちまったようだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る