十七話 決着
俺「待たせちまったって・・また敵の援軍か?」
しかも、とんでもない人数を連れてるぞ・・・・挟み撃ちにされたか!?
斬真「待て・・待て待て待て待て待て!!」
急に敵が焦り始めた。
俺「何が起こってんだ!?」
全員が混乱し始めた。
華城「遅れてすまんな。こいつは真栄田斬豪だ」
男の後ろから華城が出てきて言った。
「真栄田斬豪・・・・まさかお前!?」
宰川殿と長年対立している・・・・
真栄田「ああ。真栄田軍総大将とは吾輩のことだ」
大柄な男が胸を張って言った。
斬真「なんでここにお前が居るんだよ!?」
裏返った声で言う。
俺にも真栄田がいる理由が分からない。華城が裏切ったのか?まさか。
真栄田「反乱者に宰川軍が潰されるなど、面白くないであろう! お前ら! 反乱者を殺せ!!」
真栄田が敵を指さして言った。
真栄田軍兵士「うぉぉぉぉぉ!!」
後ろから真栄田軍の武士が数百人出てきた。
落ち着いた頃には、既に敵が死んでいた。多勢に無勢だな・・・・
真栄田「よし、お前ら下がってろ! 吾輩はコイツラと話をしたいんだよ」
真栄田軍兵士「ははっ!!!」
真栄田軍の武士が走って戻っていった。
了斎「華城! これはどうなってるんだ?」
真栄田が味方なのか・・?
華城「そんなことの前に、久遠殿が死んだ上に、霧島はもう数分も持たない状況だ。助けたいとは思わんのか?」
何いってんだ華城・・・・・・ん?
俺「久遠さんが・・死んだ? 将英の間違いじゃないか?」
雷煌「将英さんが死んだって・・本当ですか?」
俺「ああ、さっき東二って奴に・・・・」
俺の言葉を聞いて、火蓮と雷煌と了斎が膝から崩れ落ちた。
美月「ごめん、戦いに支障をきたすと思ってまだ言ってなかったんだけど・・久遠さんは鎌田という男に殺されてしまったらしいわ」
震えた声で言った。
俺・了斎「久遠さんが・・・・・・」
全く状況が理解出来ない。
仲間だけでなく、恩人も失ってしまったのか・・・・?
真栄田「よし。亜美! こちらにこい」
真栄田が手招きをする。
亜美「はい!」
若い女が走ってきた。誰だ?
真栄田「久遠と将英を蘇生しろ」
蘇生だと・・?
亜美「はい!!」
華城が、久遠、将英のもとへ亜美という女を案内した。
亜美が死体に手を触れてしばらくすると、久遠さんの体が治っていくのが見えた。
久遠「いってぇな・・・・」
そう言って久遠さんが起き上がった。
翔斗「生き返った・・・・?」
いや、元々生きてたんじゃないのか?
真栄田「ハハ、こいつは『半分以上体が残っている死体』であれば生き返らせることが出来るんだ! どうだ?すごいだろう?」
自慢げに言う。腹立つ野郎だ。
ただ、本当に蘇生なんて出来るのか・・・・
了斎「将英も・・生き返らせられるのか?」
将英を指さす了斎の指は震えていた。気持ちはわかる。
真栄田「見とけ、少年」
また亜美が将英に手を触れ、傷が治っていく。
将英「は・・・・? オレは生きてるのか・・!?」
そう言って一気に将英が起き上がった。
雷煌「落ち着いてください! もう敵は死にました。一旦休みましょう。こっちに来てください」
雷煌が手招きした。
美月「真栄田! 早く霧島の回復もさせなさいよ!!」
美月は真栄田が相手でも全くひるまない。流石だ。
真栄田「どこに居るんだ」
情けない声で聞いた。
美月「そこにいるの見えないの!? 早くしなさいよ!」
亜美が美月に怖気づきながら霧島の治療をした。
霧島「ありがとう・・・・」
霧島の濁った瞳には涙が浮かんでいた。
俺「霧島!! 大丈夫か?」
駄目だ、こっちも泣きそうになっちまう。我慢だ我慢。
霧島「ああ」
霧島が立ち上がりながら言った。
本当に良かった・・・・
しばらく皆で久遠さんたちが生き返った喜びを分かち合った。
すべてを見ていた翔斗が状況説明を行うと、久遠さんが言った。
久遠「獅電はまだ戦っているのか?」
そういえば近くに獅電さんが居ない。どこに行ったんだ?
雷煌「まさか負けっ・・・・」
久遠「ありえない。獅電が東二ごときに負けるなどありえん」
力のこもった口調で言った。
真栄田「東二とやらは知らんぞ。お前らで頑張れ」
冷めた口調で言った。
久遠「おい! お前も手伝えよ! さっきは助けてくれたじゃねえかよ! というか・・待て? 何でここに真栄田がいるんだ?」
久遠さんがようやく真栄田に気づいたようだ。
華城「すまん、我が仕込んだ」
久遠「仕込んだって・・どういうことだ?」
久遠さんが刀を構えながら言う。
戦う気満々だ。
華城「いくら獅電殿がいるとはいえ、二十人以上の幹部に勝てるとは信じきれなくてな・・そこで真栄田に会って依頼したんだ」
当然かのように言う。
久遠「そんな簡単に・・なんで真栄田は承諾したんだよ?」
ごもっともな質問だ。
真栄田「宰川上午。あの男は吾輩が殺さねばならん。反乱者などに殺させるものか!」
笑いながら言った。本気なのか冗談なのか・・
まぁ、九分九厘本気だな。
了斎「宰川殿を殺すために宰川軍を助けるって・・お前は頭が悪いのか?」
真栄田「何だとお前?」
真栄田が了斎を睨む。
怖すぎる・・・・
了斎「す・・すまん。とりあえず話はわかったから、獅電さんを助けに行こう」
急に弱気になった。無理もないか。
真栄田「吾輩はここで待っておる。必ず敵を倒して戻ってこい」
腕を組みながら言った。
華城「蘇生や治療が必要な時は笛を鳴らす」
真栄田「フン。助けに行くとは限らないぞ」
『どうせ助けに来るんだろうな・・』と愚痴をこぼしながら獅電さんを探した。
久遠「あの二人の戦いは異次元だからな・・かなり遠くまで行っている可能性も否定はできない」
俺「ほんとかよ・・どう探すんだ?」
空でも飛んで見渡すか?
霧島「手分けして探そう」
華城「駄目だ。危険すぎる」
翔斗「真栄田を呼ぶなんて博打を打つやつが言うなよ」
ごもっともだ。
華城「あいつ以上に頼れるやつはいないと思ったんだ」
華城は申し訳無さそうだった。
実際、真栄田が居なかったらどうなっていたか分からない。華城の予想は的中したと言っていいだろう。
了斎「まあ確かに頼もしかったけどな・・・・」
剛斗「オレの骨!!!!!」
急に剛斗が言った。
びっくりした・・・・
華城「骨がどうしたんだ」
剛斗「折れた!!!!」
今までで一番の声量で言った。
了斎「なんで真栄田が居る時に言わないんだよ!?」
剛斗「皆が盛り上がってたから言い出しにくかったんだよ!!!」
意外と繊細だった・・・・
霧島「後で治してもらえ」
しばらく野原を駆け巡った。
翔斗「ん? 音が聞こえた気がするぞ・・」
久遠「どっちからだ?」
翔斗「こっちだ」
翔斗についていくと、獅電さんが戦っているのが見えた。
俺「獅電さん!!」
獅電さんがこっちを見る余裕はないようだ。
久遠「とにかく、東二には近づかないようにしろ。東二の瞬刀は獅電でないと対抗できない」
全「はい!」
霧島「だが、遠くからとなると清次や将英しか加勢できないぞ」
了斎「わしを忘れるなよ」
俺「了斎は無理だろ」
火をつけるにしても近くへいかないと意味がない。
了斎「ふふっ、術の派生を思いついたんだ」
そう言うと、了斎が東二の方へ火球を飛ばし始めた。
火球は瞬時に捌かれているが、少しでも邪魔が出来るのなら十分だ。
久遠「そんな事ができるのか! ならば了斎もだな」
火蓮「それは妾にも出来そうか?」
雷煌「同じような術ですし、出来るんじゃないですか?」
適当言ってないか・・?
火蓮「試してみよう」
そう言ってすぐに火蓮が彩色炎の火球を飛ばした。
了斎「何だ今の!!」
了斎が火球を飛ばすのやめてこっちに来た。
火蓮「お主の火球を真似させてもらったのじゃ」
自慢げに言った。
了斎「彩色炎で出来るのか」
霧島「了斎の立場無くなったな」
とんでもないことを言うな・・
了斎「そんなことはない!」
そういって了斎は人を五人ほど飲み込めるような大きさの火球を飛ばした。
俺「おいおい、無理すんな!」
ただでさえ炎の術は体力を消耗する。
了斎「これくらい大丈夫だ」
ずっと一緒にいるから分かる、やせ我慢だ。
火蓮「流石の体力じゃな。妾にはないものじゃ」
素直に感心していた。
霧島「お、じゃあ立場あるみたいだな」
また茶化す。
了斎「うるさい!」
了斎は赤面していたが、疲れているからなのか恥ずかしいからなのか・・・・
*
クソ、東二がこんなに厄介なやつだったとは・・・・
勿論、優秀な武士であるということは知っていた。ただ、ここまでとは思っていなかった。
瞬刀を捌くのは容易だが、その先の攻撃ができない。
理由はおそらく刀の長さだ。
東二は瞬刀の効果をより強くするために短い刀を使っている。
それ故に東二はかなり俺に近づいて攻撃をしてくる。
射程が短いから捌きやすいのだが、近すぎて俺の刀で上手く斬ることが出来ない。
根本で当たっても大した攻撃にはならない・・・・
残された手段は一つか。
俺「すまない、もう時間がないんだ。けじめを付けさせてもらう」
すると、東二が微笑んで頷いた。最後の最後まで喋らないようだ。
久しぶりに本気を出す。俺が本気を出すと周りへの被害が大きく、滅多に本気で戦うことはなかった。
ただ、ここは野原。清次たちの声は聞こえるが、影響はないだろう。
俺「死んだ仲間のもとへ行かせてやる」
東二の心臓を拳で一突き。返り血で俺の体は血まみれになった。
俺「刀が俺の本当の武器だと思ったら大間違いだ」
体が汚れてしまったし、早く風呂に入りたい。清次たちのところへ戻ろう。
・・・・久遠の弔いもしてやらねば。
*
霧島「おい! 獅電さんが血まみれだ!」
ずっと獅電さんを見ていた霧島が言った。
俺「まさか斬られちまったのか!?・・獅電さーん!!!!」
走って獅電さんのところへ向かった。
雷煌「獅電さん、大丈夫なんですか!?」
雷煌が寄っていった。
獅電「これは俺の血じゃない」
獅電さんはひどく疲れているようだった。
久遠「やったんだな。獅電」
獅電「久遠・・?」
久遠さんを見て獅電さんは静かに驚いた。
久遠「心配かけてすまない」
獅電さんはしばらく言葉を失っていた。
獅電「生きてるのか・・・・?」
獅電さんの手が久遠さんの肩に触れた。
久遠「ああ」
久遠さんがそう答えると、獅電さんは「そうか」と微笑んだ。
了斎「真栄田軍の人が蘇生させてくれたんです」
獅電「真栄田軍・・・・?」
獅電さんの顔が強張る。
華城「話はあとだ。とりあえず真栄田のところに戻るぞ。日が暮れる」
俺「とりあえず、今は真栄田さんと敵対していないです」
それだけ分かってもらえたら今は大丈夫だ。
獅電「全く理解が出来ん」
獅電さんはしばらく立ち止まっていた。
雷煌「いいんです! さあさあ早く、久遠さんに置いてかれますよ!」
雷煌が獅電さんの腕を引っ張っていった。
霧島「雷煌、変なところで肝据わってるよな・・・・」
翔斗「ああ。おいらは獅電さんの腕を引っ張るなんて恐れ多くて出来ない」
苦笑いして言った。
霧島「だよな」
さっきまで死ぬ寸前だった霧島が、今は普通に会話をしている。
仲間がいつまでも近くに居てくれると思っちゃいけない。
あっという間に死んでしまうかもしれない。俺の両親のように・・・・
命は儚く、そして美しい。
俺は死ぬために生きているわけじゃない。だが、死が訪れることに変わりはない。
生きることが出来ている『今』を今まで以上に大切にしていきたい。
久遠さんの速度に合わせて、皆で速歩きをしていった。
もうすぐ真栄田が居るところだ。
将英「華城、豪の武士は今どうしてるんだ? 帰らせたか?」
華城「いや、ずっとあそこで突っ立ってるよ」
華城が遠くを指さした。
了斎「酷いなお前!!!!」
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