十一話 虚偽
宿主「君たち、来客だよ」
俺「なんだよもう・・」
宿主が俺たちを起こしに来た。今日はゆっくり休みたかったのに早く起こしやがって!
美月「はいはい、起きるのよー!」
美月に布団を引き抜かれた。
終え「布団なしでも寝てやるからな・・」
雷煌「清次さん、いい加減にしてください!」
俺「うわぁ!」
雷煌が体に電気を流してきた。
俺「わかったわかった! 今起きる!」
皆で玄関から飛び出すと、久遠さんがいた。
久遠「出るのが遅いな・・まあいい、宰川殿がお呼びだ」
華城「ついに来たな」
そう、俺たちは幹部になるのだ。
久遠「早急に来い」
今日の久遠さんは冷たいな。機嫌が悪いのか?
とりあえず、将英の風刃術で爲田城に来た。
了斎「霧島の瞬間移動の範囲がもっと広かったらなー」
棒読みで言う。
霧島「無茶言うな」
幹部「では行くぞ。約束だが、納得のいかない部分があったら気にせず言って良い。もう君たちは候補生ではない。自分の意見を言える立場にあるからな」
やったー。
気に食わないところ全部言ってやる。
宰川「よし、長々と話す気はないからさっさと本題に入ろう。まず義和について聞かせてくれ」
広間に座った瞬間言った。
華城「我が説明する」
やはり、こういったところで頼りになるのは華城だ。主観を入れずに事実を伝えてくれる。
華城「義和という男は銃を巧みに扱う奴だった。銃によって我らを寄せ付けない上に元の戦闘技術も段違いだったな」
宰川「じゅう・・火縄銃か?」
宰川殿が眉をひそめる。
華城「いや、あのような大きなものではない。片手で持つことが出来る上に連射可能の銃だった。今の技術であれを作ることは出来ないということから、あの銃はきっと義和の術で生み出されたものだろう」
すらすらと答えていく。
宰川「なるほど・・その銃は再現可能か?」
華城「構造は理解しているが、技術を持ったものがいなければ不可能だな」
宰川「そうか」
了斎「話はそれだけか?」
そんなはずがないことを理解してるくせに。
宰川「いや、もちろん約束した以上幹部になってもらう」
よしきた!
霧島「俺たちが共同で生活するという話はどうなった?」
宰川「今、家を建てさせているところだ。幹部は普通、窮屈な暮らしを嫌って自分一人のための家を欲しがるんだが」
俺「普通の武士とは俺たちは違うんだよ」
宰川「そして、幹部になったということは、幹部の仕事もしてもらうということだ」
霧島「幹部の仕事?」
宰川「基本的には周辺地域の見回りだ。もちろん戦が始まったら今まで以上に働いてもらう」
正直、面倒臭いと思った。
華城「任せてくれ。そして一つ我から提案があるのだが宜しいか?」
華城が言った。
宰川「勿論だ。何でも言ってくれ」
華城「我らに、候補生を育てる『先生』としての仕事も与えてくれないか?」
宰川「というと?」
華城の提案は、見回りの仕事を無くす代わりに俺たちで候補生を育てるという話だった。正直度肝を抜かれた。
なんで俺たちがそんな事をするんだ!?
宰川「非常に面白い。いいだろう、そうしよう」
宰川殿はこの案を気に入ったようだ。
宰川「細部は会議で決めてもらおう」
俺たちは立ち上がって、久遠さんのもとに歩いた。
霧島「どこで話すんだ? 幹部は」
あたふたしながら聞いた。
久遠「一旦落ち着いてくれ、オレが案内するから」
幹部としての行動の仕方が全くわからない。飛び級で幹部になった俺たちはしばらくこれに悩まされるだろうな・・・・
幹部「では、幹部の者で会議をする。皆会議室へ集合だ」
久遠「会議室まで案内するよ」
火蓮「会議室の場所は妾が知っておる。先に行っておいてくれ」
久遠「そ、そうか・・・・」
火蓮は俺たちと話がしたいようだった。
火蓮「華城、稽古のくだりは何だったんじゃ?」
火蓮は少し怒っているようだった。
華城「話した通りだ。我らで武士を育てるんだよ」
なんで武士を育てるんだ・・・・
了斎「待て、わしらはそんな話してないだろ?」
華城「ああ。驚かせてしまって申し訳ない」
ただ、華城の目的が分からなかった。なぜ俺たちが武士を育てる必要があるんだ?
華城「すまん、その話はあとにしてくれ。会議では我が話を進めるから余計なことは言わないで欲しい」
やっぱりよくわからない。
将英「しょうがないな・・・・」
渋々承諾した。
火蓮「まあ、見回りの仕事がなくなるなら良い。妾に着いてくるんじゃ」
十人で会議室に向かった。
会議室は、かなり質のいい畳と座布団が用意されていた。
幹部になったらこういう贅沢も出来るんだな。
将英「今日は何の会議だ?」
幹部「まず自己紹介を・・」
霧島「いや、面倒だ。やっていくうちに知っていけば良い」
ありがとう霧島。見たところ俺たち以外にも幹部が三十人ほど居る。一人ひとり自己紹介していたらきりがない。
久遠「ではこれより、戦後処理と新入りの仕事についての会議を始める」
どうやら、久遠さんは議長のような役割もあるらしい。
久遠「まず、山河軍との戦の報告を鎌田に」
鎌田「ああ。宰川軍の死者は合計千八百人。山河軍の死者は合計二千六百人。そして、山河軍幹部が二人死亡し、宰川軍幹部は全員生存だ」
久遠「農民への被害は?」
鎌田「戦場が野原だったから今のところ報告されていない」
久遠「よし、ありがとう鎌田」
おそらく、長くなるのは今からの話だろう。
久遠「では、新入りの幹部の仕事だね。仲良し十人の仕事についてだ」
幹部「そうからかうな久遠」
すごく普通の人っぽい女性が言った。あの人も幹部なんだよな?
会議の結果、一人あたり五人を三ヶ月間育てる。候補生募集の定員は合計五十人と決まった。
また、募集方法は宿舎を俺たちが回るということになった。
了斎「質問いいか?」
了斎が挙手した。頭のいい人に了斎が混ざって大丈夫か?
幹部「なんだ?」
了斎「それで本当に候補生が集まるか? 教えを請うほど志の高い候補生が五十人も集まるとは到底思えないのだが」
確かに。そんなひたむきな奴って居るのかな・・?
幹部「確かにそうだな・・」
久遠「なるほど。では門下に入る者は待遇を少し良くしよう」
霧島「それでは、待遇を良くすることを目的に入るものが増えてしまうのでは?」
霧島の意見も分かる。
久遠「それは仕方ない。募集から門下生を決める際に見極めよう」
久遠「では決定。大筋が決まればあとは東二に任せよう」
東二という男が無言で頷いた。
久遠「ではまた明日、ここで会議を行う。そこで東二に細部までの方針を聞き、募集を開始するとしよう」
久遠さんが締めた。
幹部「では、会議を終了とする。じゃあねー」
急に雰囲気が緩くなった。他の幹部の人も談笑しながら戻っていった。
俺「よし、俺たちも戻ろうか」
霧島「そうだな。華城、宿に戻ったら話を聞かせてもらおうか」
霧島が圧をかけた。
華城「わかった」
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