第3話舞妓さんの犯罪
同心の川路圭吾はドザエモンを検分をしていた。
そこに、ひょっこり、長五郎じいさんが現れた。
「川路どん、こん人はだいな?」
川路は長五郎の姿を見て、
「あぁ〜、長五郎さん。この顔は米問屋三嶋屋の若旦那の富吉だそうで」
「へぇ〜、よくろて(酔っ払って)て、川んなけひっちゃえた(落っこちた)とな?」
「あたいも、そう考えたどん、こいが?」
と、川路は長五郎に富吉の首を指さした。
「ははーん、首を絞めた跡があいな」
「長五郎さん、どげん思いや?」
「昨日の晩さね、どけおったろかい?」
「小間使い茂作の話しによれば、味泉閣におったち」
「味泉閣?あら〜、また良か店で飲んじょらいわ。川路どん、そけ行ってみっが!」
「はい。分かりもした」
二人は高級呑み処味泉閣に向かった。
店主の話によると、富吉は一人部屋で飲んでいたと言う。そこに、お菊と言う舞妓を呼んで、三味線を楽しみながら飲んでいたと言う。
「お菊はどこにおっどかい?」
店主は、
「お菊さんは、今は朝倉さんの屋敷で三味線の稽古をしとる頃でごわす」
長五郎は足が痛むので、川路と二人駕籠に乗り朝倉家に向かった。
川路が銭を払い、朝倉家の門をくぐった。
「おいっ、すまんがお菊さんはおらっどかい?」
外にいた若いおなごは、屋敷に上がりお菊を呼びに行った。
間もなく、年の頃17,8のお菊が現れた。
「おはんが、お菊さんね?」
「へい」
「ちっと、尋ねるが、三嶋屋の若旦那の富吉とどげな関係ね?」
「富吉どんは、あたいのようなおなごん子に優しかお人で、いつも飲みの時は呼ばれておりもしす」
「その、富吉なんだが、死体でみっかってね」
「そ、そげな事が……。病かなんかで?」
「うんにゃ、ドザエモンで岸に引っ掛かっているのを洗濯しげきたばっさんが見っけてね」
「信じられない」
お菊は、はらはらと涙を流した。可哀想なこの少女は縁側にヘタリと腰を落とした。
それを良く見ていた長五郎じいさんは川路をお菊からちょっと離れた場所に連れて行き、耳打ちした。
「下手人は、あんおなごん子よ」
「な、何を言わしゃっとな?あげな、おなごん子を疑ごうとは。証拠でもあっとかいな?」
「まず、人ん死んだ知らせを聴いた時、いつ、どこでって、尋ねるがね。あんおなごん子は、そよ川路さんに聞かんかった」
「と、言うこつは……」
「お菊は知ってるんだよ、いつ、どこで富吉が死んだこつば」
川路は身震いした。あまりに、長五郎の勘が冴えていることに。
「じゃっどんからん、長五郎さん、証拠がなか」
「下手人はお菊だけではなか。裏で手を引くヤツがおいごたい」
「だ、誰?」
「恐らくは、同じ米問屋の長洲屋じゃなかどかい?三嶋屋が潰れて得するのは長洲屋やっでや」
「分かり申した、長洲屋を調べ上げます」
「じゃ、あたいは帰っでな」
「あがとさげもす」
数日後、長洲屋の若旦那とお菊は出来ていて、富吉を殺害後、夜陰に紛れて川へ投げ込んだらしい。お菊が酒に薬を盛って富吉を眠らせ、長洲屋の若旦那が絞め殺し運び役をしたとの報告を長五郎は聴いた。
その晩は、川路のお礼で飲めや歌えやの接待を長五郎は受けた。
長五郎は飲み過ぎで、溝に盛大に嘔吐した。
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