4話 御守り 1


私…んです。




…よく、この事を話しても信じて貰えないんですけど……。

幼い時から視えていて…


…知ってますか?幽霊ってに人の形をしてるんです。

まぁ、身体の一部が損傷してたりとかするんですけど…人なんですよ。


だから…幼い時は普通の人との区別がつかなくて…

「ママ、あの人おててがないよー」

とか言ったりして家族をビックリさせてました。


あ、もう今は区別がつくんですけどね?

頭がなかったり、首が伸びてたり…明らかに違うんですから分かりますよ。

…まぁ、中には分かりにくいのもいるんですけど…雰囲気が生きてる人とどことなく違うので区別はつきますね。まぁ、幼い時はそれが普通だと思っていたので区別がつかなかったんですけど…。


ただ視えているだけなら良かったんですけど……ほら普通の人には視えないじゃないですか、だからなのか視えている私に寄って来るんですよ…。


幼い時なんて無邪気なもので、視えていることを隠そうともしないもんだから、いっぱい寄って来ちゃって…



ある日とんでもない出来事が起こりました…。



幼稚園年中ぐらいの時だったかな?

朝起きると身体が動かないんですよ。しかも身体が凄く熱くて息苦しい…

どうにかしないと…って思って声を出したんです。


「…ママぁ…あついの……」


一言隣に寝ているお母さんに助けを求めたんです。


「…っ!?…誰!?」


そしたら急に声をかけられたからか、お母さんがギョッとした顔で飛び起きて周りを見渡すんです。

お母さんがどうしてそんな反応するのか分からなかった私はもう一度助けを求めたんです。


「…ママぁ…」


バッとお母さんがこっちを見て…


理恵りえ!?どうしたの!?…ん?ちょっとあなた熱があるじゃない!ちょっと待ってなさい」


お母さんは私に駆け寄るとおでこを触って熱を確認し、部屋にある棚へ向かい、ゴソゴソと何か探し始めました。


私はそんなお母さんを見ながら、先程お母さんが言った「」が気になりました。

自分では変わってないように聞こえるけど、こんな状況だから声が変わってるのかな…なんて子供ながらにぼんやり考えてたんですよ。


そんなことを考えていると、お母さんが体温計を持ってやってきました。


「ほら、これを脇に挟んで…とっちゃダメよ?」


そう言うと、お母さんは忙しそうに奥の部屋に行きます。

バタバタと音はしているので、なにかしているのは分かるんですけど、私は寝転がっているから何してるかは見えなくて…けど


「…はい、娘が熱を出しちゃって……はい、はい、すみませんお願いします。」


みたいな声が聞こえたから、幼稚園に電話をかけたり、病院に行く準備をしていたんでしょうね。

その時は苦しさの方が勝っていて、そんなこと考えていなかったんですけど、お母さんは私のために色々とやっていたんだなと思います。


ピピッ


…と音がなり、お母さんが私に駆け寄ってきました。

脇に挟んだ体温計を抜き取り確認すると…


「…41度!?高熱じゃない!?」


その時はお母さんは何を驚いてんだろう?って思ってましたけど…41度って凄いですよね?大人になった今なら分かります。

なんなら、あの日以来39度以上の熱になった事ないですからね。


「理恵!あなた大丈夫なの?」


「…ママぁ…あつい……くるしい…」


「…!?…今すぐ病院に行きましょう、大丈夫よ!大丈夫だから」


お母さんは私を励ましながら抱きかかえようとするんですけど…


「…!?なに!?なんで!?」


持ち上がらないんですよ



それはそうですよね…



だっていましたから…




んです…




…お母さんには見えていなかっただろうけど、部屋の中にはビッシリとがいたんです…その人達がジッと私を見ていて、身体を動かそうにも、何人もの人が私を掴んで離さないんです…。



そんな状態じゃあ…お母さんの力じゃ持ち上げられないですよね…


「…理恵!ちょっと待っててね!」


数十分ほど私を抱きかかえようとしていたお母さんでしたが、無理だと諦めたのか、私から離れて違う部屋に行き…


プルルル


電話をかけてるようでした。

どこにかけているのか分からなかったんですけど…


「もしもし!すみません!娘が…」


お母さんの焦ってる声はしっかりと聞こえてきて…しばらくしてお母さんが私の元に戻ってきて言うんです。


「大丈夫よ、大丈夫」


そう言って私の頭を優しく撫でるんです。

私、この後どうなっちゃうんだろ…って考えて沢山泣いちゃって、その間もお母さんは「大丈夫、大丈夫」って励ましてくれて…数十分経ったところで…


ピンポーン


インターホンが鳴りました。


お母さんが急いで玄関に向かって行き、その後、玄関の方からお母さんに連れられて1人の男性が部屋に入ってきました。


歳は40代ぐらいですかね?ボウズ頭でTシャツとジーパンを履いた男性でした。


「な、なんだここは…っ!」


その男性は部屋の中を見た瞬間に凄く驚いたように言うんです。


その言葉を聞いた瞬間に、あぁこの人もんだな…って思いましたね。


たぶん、この時が人生で初めて同じく人に出会った瞬間です。

まあ、当時はそれ以上に苦しくて、誰だろう?程度でしたけど…


それで、その男性が言うんです。


「…これは、まずい状態です。このままだと娘さんは死んでしまいます…」


「!?…そ、そんな!住職さんお願いします!娘を!理恵を!助けてください!」


「…助けますが…これは……いえ、できる限りのことをやりましょう!」


…どうやらその男性は住職の方らしく、私を助けてくれるって言うんです。


そして1回部屋を出ていき、なにやら大きな風呂敷を持ってきました。


「…奥さん、いまから娘さんを助けますが…誠に申し訳ないのですが、この部屋の外にいてください」


「そ、そんな…」


「本当に!危ないんです!…いまこの部屋には沢山の霊がいるんです…娘さんから引き離す際に、近くにいる人に取り憑く可能性があるんです!」


強く住職の人に諭されたお母さんは震えながら一言


「…む、娘を頼みます」


と言い頭を下げました。

それに対し住職も…


「…お任せ下さい、できる限りのことをさせてもらいます…。」


そう言って頭を下げた住職の額には脂汗が滲み出ていました。


「…それと、部屋の中にあるものが荒らされますので、大事なものは部屋の外へと出してください」


「分かりました。」


お母さんが部屋にある陶器の物やアルバム類など、大切な物を部屋の外に出している間に、住職は私の方に来て言うんです。


「君は…ているね?…子供の時は良くやすくなるというけれど…君のこれは…じゃない…。」


住職がそう言うんです…続けて



「現に今、この部屋にはている私と君のお母さんがいるが…奴らは…ハッキリ言って…異常だよこの空間は…」



そんなことを言われたものだから、どうしてなのか聞こうと口を開いた…



「…ど…∡∣∀…て」



これには、私も住職もお母さんも皆ギョッとしました…言葉が明らかにおかしいんです。


「まずいまずいまずいまずいまずいまずい!!」


住職は慌ててお母さんを部屋から出し扉を閉めました。


ドン!ドン!


母が慌ててドアを叩いて


「娘は!理恵は大丈夫なんですか!!」


「まずいまずい!非常にまずいっ!今すぐに除霊を始めます!お母さんは部屋に入ってこないでください!」


住職はそれだけ言うと、風呂敷からペットボトルを取り出し、部屋の四隅に


「…テイッ」


何かブツブツ唱え、最後に一言「テイッ」と言って中の液体をこぼすんです。


それが終わると、風呂敷から金属の深めの皿のような物と棒を取り出し…



カァーン



部屋に響き渡る音…不思議と心地良さを感じたのもつかの間、急に苦しくなったんです…

掴んでる力が強くなって…



カァーン



また音が響くが今度は苦しいまま…


「この部屋にいる者達よ、その者から離れよ!」


カァーーーン


「…離れよ!」


カァーーーーーン



「オン アボキャ…………」


住職の人が何かをブツブツ唱えながら


カァーーーン


何度も音を鳴らす。


それを聞く度に苦しさが増し、涙が止まらなくて…


「ああああああ∢∽>едг∫⊇ッ!!!」


「その少女から離れよっ!!」


カァーーーーーン!



ドン!ドン!


「理恵!理恵!大丈夫なの!?」


お母さんの焦ったような声が聞こえた当たりで……



目の前が真っ暗になりました。









気づいたら、お母さんに膝枕をされて頭を撫でられていました。


「理恵?……大丈夫なの?」


あれ?と思い辺りを見回すと部屋が散らかって…いえ、壁の至る所がボコボコになっており照明は落ち…見るも無惨に荒らされていました。


「理恵…理恵!ほんとうに!良かった!」


そう言うとお母さんが泣きながら私を抱きしめました。

…たしかに、身体が動く、苦しくない、周りにも…あんなにいた人達が全員いなくなっている。


助かったと思った瞬間に…涙が…止まらなくなって…。

お母さんに泣きついたのを今でも覚えています。


「…理恵ちゃん…だったかな?」


急に声をかけられてビックリして、慌てて声のした方を向くと、あの住職の人がいました…


「君はどうやら、あちらの人達に好かれる体質みたいだ…だから、これをあげよう」


そう言って住職の人が何かを差し出して来ました。


恐る恐るそれに手を伸ばし受け取ると、なにやら小さい袋を渡されました。


「それは僕が作った物で…まぁ御守りみたいなものだよ」


「…おまもり?」


「うん、まぁ普段お寺で配ってる物とは全然違くてね?それは理恵ちゃんを守ってくれる物…」


「…まもってくれる…」


この御守りを持っていれば守ってくれる…

その事実が凄く私に安心感をくれました。


「…けどね、その御守りは気休め程度にしかならないんだ…僕の力じゃこれが限界でね…

…お母さんに理恵ちゃんの体質をどうにかしてくれる人を紹介したからさ…その人に会うまでは…大丈夫!その御守りが守ってくれる」


住職の人が疲れきった笑みで、それでいて力強く「その御守りが守ってくれる」と言ってくれました。


「…理恵を…ありがとうございました。」


「…奥さん…私の御守りもいつまで持つか分かりません、今日にでも向かった方がよろしいかと…」


「…分かりました。本当にありがとうございました。」


「いえいえ、ではこれでおいとまさせていただきます。」


住職とお母さんが話終わり、住職が部屋を後にする…


「ほら、理恵もありがとうございましたって」


「…ありがとうございま




…言葉を失いました…




玄関へと向かう住職








その背中にが浮かんでいたんです……





言葉に詰まった私に気づいたのか、住職が振り返り、そっと口に指をあて「しっ」とジェスチャーをして玄関を出ていきました。






…あの住職の人は、たぶん私に憑いていたものをて持ち帰ったんだと思うんです…。








…あ、長い間話してしまってすみません。

まだ話は続くんですけど…少し休憩をしましょう…。







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