不具合がもたらす不利益

 製品に不具合があれば、必ず誰かが不利益を被る。「誰か」とは、製品を購入・利用するお客さまだけを指すのではない。不具合によっては、販売する者にも不利益がもたらされる。販売元にとって利益にならないこととは、多数の苦情や思わしくない売れゆき、企業のイメージダウンのほかにもある。そこが不具合の厄介なところだ。

 たとえば、製品の動作に具合のよくないところがあったとしよう。こんな不具合を想像してみてほしい。消費者に税を課す必要があるのに、不具合により課税されない。利用者は手数料を支払わなければならないのに、不具合により手数料がかからず、それどころか手数料ぶんが入金される。金属探知機が金属を探知しない。くじを引いたらあたりしか出ない。

 これらの不具合によって不利益を被るのは誰だろうか。お客さまの立場であれば、少なくとも不具合が発生したその瞬間に、なんら不利益はない。利益を得ているといってもいいだろう (ただし、のちのち生じうる必要手続きを考えると、楽観視もできないが) 。このとき、不具合によって損をするのは、製品を業務上利用する者、開発した者、販売した者たちである。不具合がある=不利益とはならないのだ。立場が違えば、不具合によって利益がもたらされることだってあるのだから。

 品質管理に従事するのなら、基本的にはお客さま第一の思考をもってほしい。お客さまにとっての利益こそが、製品開発にかかわるすべての人にとっての利益だ。しかし、お客さまに一方的に利益がもたらされる不具合は「お客さま第一だからよい」とはできない。「この不具合によってお客さまには利益が生じる。だが、販売元に著しい不利益がもたらされる。だからこの不具合は修正するべきだ」と、発見した不具合を公平な目線で見て、開発者と販売元に報告しよう。開発者と販売元から不要な負担が減って健全な企業運営ができれば、消費者であるお客さまにもたらされる利益は、より大きくなるだろう。

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