製品や開発者を貶める言葉

 品質管理の現場には、製品や開発者をおとしめる者がいる。さげすむ言動に同調する者もいる。残念だが事実である。

『こんな製品をいったい誰が買うというのか』

『発想に乏しく、程度の低い技術力。よい製品になるはずがない』

『素人制作にも劣る』

 実際、同じことを口にするお客さまは少なくはないだろう。仕事が終われば、あなたもひとりのお客さまに戻る。お金を払って購入した製品が不出来であれば、文句のひとつも言いたくなる気持ちはわからなくもない。しかたがない、負の感情であっても好きに発散すればいい。あなたが、品質管理のプロフェッショナルでもなんでもないのであれば、それでいいのだ。

 だが、品質管理を仕事として選び、製品を世に送り出す側になったのなら話は別だ。目の前にあるものは、たとえ不出来であれ、プロジェクトにかかわるすべての人の心血が注がれてかたちをなしている。評論家ぶって、軽々しくけなしていいものではない。こきおろす暇があったら、どうすればよりよくなるのか、制作に携わるひとりとして考え抜いてほしい。製品の開発段階によっては、手を加えて改良するのが難しくなる。すでに手遅れの状態だ。たとえそうであったとしても、開発者へのリスペクトの心は、どうか失わないでほしい。

 完成したものが理想まで届かずに終わる場面は多い。予算、時間、人、能力など、開発にかかわるあらゆるものには限りがある。そんな中、最大限の努力によって形をなしたのが、目の前にあるものなのだ。不出来を酷評するのは構わない。だが、自らが手がける製品を、他人事のようにして貶めてはならない。敬意をもって接するのだ。そうした時間の積み重ねこそが、製品の品質を左右するのである。それを理解し、行動で示せるようになったとき、あなたは品質管理者としてだけでなく、お客さまとしてもすばらしい人物になるだろう。

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