無能かと思われた不殺の権能が強そうな件

 とあるゴブリンは迷子になっていた。

 空腹なゴブリンは自分の死期が近いことを理解していた。どこか、休める場所を...フラフラと足取りのおぼつかないゴブリンは、山に洞窟があるのを発見した。

 のそのそとゆっくりとした足取りで、一縷の望みにかけその洞窟へ向かった。



 __________________________

 名称:未定

 性別:男

 経験:1Lv

 称号:来訪者 新人ダンジョンマスター

 肉体強度:F

 権能:不殺

不殺のダンジョン

 攻略難易度:F

 DP:100

 所有するモンスター:0

 このダンジョンの地下に地脈は通っていないため地脈からDPを集めることは不可能です。

 ______

 まずこの世界は弱肉強食、弱いものが淘汰され強いものだけが生き残る世界。

 Q、ダンジョンが1番攻略されやいのはいつか

 A、ダンジョンが生まれた瞬間

 つまり早急な対応が必要なのである。彼はまず自分のダンジョンをどうすべきか考えた。

 100DPで出来ることは...

 小部屋...DP30

 通路..DP20

 階段..DP50

 トラップ..DP100


「これみたら100DPって少なすぎだろ!!そりゃダンジョン生まれた瞬間攻略されるわ!!」


『侵入者を察知しました。繰り返します、侵入者を察知しました』


「え...わりぃ、俺死んだわ...」


 ダンジョンコアから鳴る緊急音に俺の心拍数は一気に上昇した。え、いきなり過ぎない?この世界来てから1時間も経ってないぞ...対策を考えないと、そもそも侵入者は誰だ?数は?未知が多すぎて対策のたてようもない...


『侵入者はゴブリン。1匹です。私たちのダンジョンへ一直線に向かってきます。あと三分ほどで来るかと。推定討伐ランクはFマイナス、今のマスターでも行けます。』


「てかお前喋るの?!ダンジョンコアって喋るんだ...?!」


『早急な対応をお願いします』


 ダンジョンコア曰く今の俺でも行けるらしいけど...わかった。ここで戦わないのは男の恥だ。

 ...とりあえずDPで武器とか出せない?


『剣や弓など出せますが、銃などは出せません。素人がいきなり武器なんて使えるはずないですし、どうせゴブリン程度石投げるだけで死ぬので無駄な出費かと。マスターならできます。』


「いや俺にそんな期待してくれてるのは嬉しいけど、こちとら温室育ちの日本人ぞ?!」


 せっかく100DPあるんだからゴブリンへの対策に使わないとじゃん!!これで負けて異世界生活終了とかシャレにならないからね?!DP使お?!トラップとかさ!


『では、権能の覚醒などはどうでしょうか?』


「権能の覚醒...?それでいいよ!!強そう!!」


『はい、時間が無いので私の方で覚醒させますね。DP使用許可をお願いします』


「うんなんでもいいから早くして!!!」


 ダンジョンコアから流れてくるエネルギーを感じとり、自分の中のが解き放たれるのを感じた。


 不殺...生物を殺せない

 削ったHPの分だけ経験値を得られる(解放済)

 未解放(DP1000で解放)

 ....


「これは...?」


 これは...全く戦闘に役に立たないスキル...?

 は?!温室育ちの日本人がいきなり異世界で命かけた争いしなきゃ行けないの?!武器もスキルもなしで?!異世界エグいって!!異世界えぐいって!!


『侵入者、きます』


「えあ?!速いって!!テンポ速いって!!ちょっと待ってよ!」


 心の準備もできないままにダンジョンの入口から足音が響いた。俺は突然の自体の連続に気持ちの整理もつかぬまま、あたふたと立ち尽くして石を構えた。どさっ...何かが倒れるような音が聞こえた。侵入者が転んだのであろうか...

 恐る恐るそちらを見ると...


 やせ細ったゴブリンが倒れていた。


「(ラッキー!倒れてんじゃん!!)」


 俺は躊躇いなく右手に握りしめた石をなげつけた。

 倒れてる相手に最低だって?うるせえよ!


「ごブっ」


 突然投げつけられた石、かなりの痛みがあるはずだが..痛みと疲労で動けないようである。


 対象のHPを削る…経験値を1獲得しました!DP1を獲得しました!


 おっと??これは??


「いいこと思いついちゃった!!」


 俺はその辺に落ちている石を死屍累々なゴブリンへと何度も投げつけた。


 経験値を1獲得しました!DPを1獲得しました!

 経験値を1獲得しました!DPを1獲得しました!

 経験値を1獲得しました!DPを1獲得しました!

 経験値を1獲得しました!DPを1獲得しました!

 経験値を1獲得しました!DPを1獲得しました!

 経験値を1獲得しました!DPを1獲得しました!


「俺の異能弱くなかった!!!むしろ最強だろ!!」


『マスター、可哀想です』


「強くなるためだ、許してくれ...」


『ニヤニヤしながら石投げつけないでください、怖いです』


 ///


「あれ?経験値貰えなくなっちゃった」


『ゴブリンのHPが1になったのでしょう』


 どうやら不殺スキルの効果である削ったHPに応じて経験値が貰えるという効果が残りHPが1になった事で発動しなくなったのだろう。


「これってHP回復させたらまた経験値稼げるかな..?」


『稼げるかと』


「ふーん...休憩所みたいなの作れる?あと飯も」


『出せますけど...まさか飼うんですか?このゴブリンを?』


 ダンジョンコアに感情とかは無いはずだけど...なんとなくジト目のダンジョンコアちゃんが目に浮かんだ。


「おう!もちろん飼う!!こいつは経験値の塊だぜ!!」


『マスターの倫理感はどこへ...』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る