第11話 NO1ホステスになった真理
ママの言う通り上流階級の気品があり他のホステスにはない品格が備わっていた。自分でも気が付かなかった才能が開花する事になる。まず話し上手で客を飽きさせない会話術が備わっている。客は真理を指名するようになった。接客が上手く、あっと言う間に二年でNO一ホステスに登りつめた。
このバブル期は最大三千軒以上もあったと言われる銀座でNO一ホステスともなれば月収一千万以上も稼ぐと言われる世界の頂点に立ったのだ。勿論当時の話で、この令和の時代と比べれば天と地の違いがある。令和時代のホステスの平均賃金は月収三十五万前後と言われる。殆どが歩合制ではなく日給月給のようなもの。もちろんこの時代もNO一は居る。ただ銀座は他の繫華街と格が違うから、それなりに稼ぐホステスも居る。その点、この時代はノルマ制が多く、ノルマを達成すれば自然と上がって行く。人気ホステスとそうでないホステスの差は大きかった。
お嬢様時代は欲しい物は何でも手に入った。しかしそれは親が出してくれた金だ。自分で働いて得た金はやはり違う。まず一番先にお礼をしたい人が居る。私を立ち直らせてくれた園子へのお礼だ。
これまでも誕生日には豪華な宝石をプレゼントしようとしたが断られた。
「あのね真理、気持ちは嬉しいけど真理の小遣いの範囲内でいいの、宝石よりも真理の真心があればそれで充分なの」
どうしてもまだお嬢様時代の金銭感覚が残っているようだ。でもそう思うほど大金を手にしていたからだろう。親から貰った金ではなく自分で稼ぎだした金である。金が溜まると同時に自信も生まれた。既にこの業界に入って十年になる。真理は間もなく三十歳になる。それでもまだNO一の座に居座っていた。貯金は数億稼ぎだしたから自信もついて当然だ。園子に何度も高価なプレゼントをしようとして断られたが、しかし今回は園子へプレゼントをする絶好の口実が出来た。あの時の教訓を思い出した。高価な物ではなく園子はかつて交際していた彼と結婚すると聞き、それならば有名な落語家を披露宴の司会者として贈った。少なくても一回百万はする司会だが園子も粋な計らいに喜んで受けてくれた。
お蔭で披露宴は大いに盛り上がった。更に海外旅行までプレゼントした。園子は勿論そんなものは要らないと言ったのだが、友情の証といって強引に承諾させた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます