第9話 親友、園子の誘い

 そこでやっと腰を上げたのは、やはり親友の園子であった。ある日みすぼらしい姿をした真理の前に現れた。落ち込んだ姿を笑い飛ばし、活を入れてやろうと思った。

「真理、久し振りね。どう? 居心地は」

「うん、快適よ。毎日自由だし……皆は親切だし天国よ」

「相変わらず口だけは強気ね。そろそろ世の中の厳しさを知ったでしょう。どう脱出する気はあるの」

「……」


 口では強気の事を言ったが本音は自分が情けなくて仕方がなかった真理だった。

 ついに真理は感情を抑えられなくなり、園子の胸に縋って泣き出してしまった。

「園子、待っていたよ。もう来てくれないかと思った」

「真理は頑固だから私がいくら言って聞く耳をもたないでしょう。だからお仕置きしてやったのよ」

「悪かったわよ。でもありがとう園子。私、地獄の底まで落ちて世の中の厳しさを思い知らされたわ。今度こそきっと園子の友情に報える為と、自分の為に必死に生きて行くわ」

「真理、本当にその覚悟はあるの? 今度こそ仕事を選んでいられないのよ」

「うん分かった。どん底の世界も味わった。清掃員だって水商売だってなんでもやってやるわ」

「ほう、超お嬢様育ちの真理が清掃員でもやるって言うの、うんその意気よ。どん底から這い上がって見せて」

「分ったわ。でも這い上がるためにどんな仕事があるのかなぁ」

「真理、本当に覚悟があるならホステスになることね。残酷かと思うかも知れないけど這い上がるには一番良い方法だと思う。事務系の仕事も探せばあるかも知れないけど真理には無理ね。人に使われる事が出来ない性格だし、清掃員なんて真理には絶対無理だし給料も生活するにはギリギリよ。ただし二度と辞めるなんて泣き言は聞きたくないからね」

「うん。なんでする。きっと這い上がって見せるわ」


 園子は考えたあげくホステスが一番だろうと感えた。接客さえ出来てお喋りが出来れば良い。それに普通のOLより何倍も稼げる、いや売れれば何十倍も稼げる。それが銀座のホステス。園子の父が仕事の関係で使う銀座の高級クラブのママとは親しかった。園子の頼みで引き受けてくれたのだ。それから園子の勧めで、銀座の高級クラブのホステスをする事になった。


つづく

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