第8話 今日から青いテントの住民
河川敷に帰ると既に真理の青いテントの家が出来上がっていた。真理は此処でもお嬢様になった。金の威力がものをいった。五人のおじさん達は笑みを浮かべて家? に招き入れた。天井は青いテント、横には何処から掻き集めたか知らないが、古い板とトタンを貼り合わせた四畳ほど部屋があった。床は板とダンボールを合わせたものだった。
「どうだ。お嬢さん出来栄えは? 俺達の所より立派なもんが出来たぜ。気に入ったかい」
真理は正直、こんな所に住めと言うのと文句を言いたかったが、それは我儘というもの。
「有難う御座います。今日から皆さん宜しくお願いします。それではお礼のお金。それと近所付き合いということで、お酒とツマミを買って来ました」
「ほう若いのに気が利くねぇ。久しぶりだなぁ生の瓶を開けて飲めるなんて。今日は御馳走だな」
皆は喜んで仲間に入れてくれた。真理はあっと言う間に浮浪者達の人気者になっていた。
これで彼等との信頼関係は出来た。それから半年が過ぎた。綺麗だった洋服も薄汚れていた。一番困ったのは風呂だった。ここのおじさん達は外で石鹸を付けて、木の上に取り付けたバケツに穴を開けた即席のシャワーを浴びていたが年頃の娘には到底出来はしない。仕方なくテントハウスの中で体を拭くしかなかった。更に三か月が過ぎて季節は十一月を迎え、寒さも増して来た。おじさん達は親切にしてくれるが、惨めでならない。既に残り二本のワインも売り払っていた。落ちると所まで落ちた。そんな感じだった。そんな生活が暫く続き真理は二十歳になった。田園調布に住んで居た頃は盛大な誕生祝してくれたのに、今はテント仲間のおじさん達と祝うことになった。
つづく
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