第7話 マリ、ついに浮浪者の仲間入り

「なんだい、それならお嬢さん先に言ってくれよ」

 そう言ったかと思うと男が作ったであろう三畳ほどの小屋の後ろに周り、鎌のような物を持って来た。

 「さぁ俺の隣に小屋を作ってやるよ。取り敢えず草刈りをしないとな。あんた出来るか?」

「そっそれ、なんですか? 刃物は危ないですよ」

「危ないって、これは草を刈る道具だよ。さてさて困ったものだ。黙って見ていても何も出来んぞ」

 周りを眺めていた数人の浮浪者達は笑いだした。


「まったく困った娘だなぁ。こりゃあ本物のお嬢さんのようだ。しかしなぁ世の中は甘くはないぞ。人に頼むならそれなりの物を頂かないとな」

 他の連中もこの娘は金を持っていると読んだのか新たに催促してくる。

 彼等も手伝うから何か寄こせという意味だろう。真理は仕方なくスーツケースを開けた。二本のワインが出て来た。借しコンテナから数本持って来たのだ。まだコンテには三千本以上残っている。真理はスマホでワインの値段を調べて見た。一本最低でも十万円以上。もっとも高価な物で数百万もする。総額で億の価値がある。だが真理は父の遺産として出来るだけ残しておこうと思っている。

「どうこれ。ただのワインじゃないわよ。売ったら飛び抜けるような高値が付くわよ」

 また周りは笑いだした。彼等にはこのワインの価値が分かってない。彼等はどんな高いワインより焼酎の方が好きなのだ。

仕方なく真理はスマホで調べ、彼らに値段を見せた。コルトン・シャルルマーニュ ドメーヌ ルロワ 750ml、1990年 DRC ロマネコンティ Romanee-Contiなど、とてつもない高級ワインだった。彼らは驚いた。これは本物お譲さんだと。 

「はい見て一本二十八万よ。こっちは三十九万よ。誰か売って来て。少なくて二十数万で売れるわよ」

 こんな所に高級ワインを見せベらかしても何の意味もない。しかし彼等の度胆を抜いたことは確かだ。

「お願い、誰かこれをお金に代えて来てくれたら、私のお家を作ってくれた人には合計で一万円差し上げます。但し手伝った人だけで分けてね。分け方は貴方達で考えて。但し私が留守の間、絶対に残りの持ち物を持ち去らないこと。もっとも金目の物は置いて行かないけどね」

男達は真理の家作りを喜んで始めた。金の威力は特に凄かった。

だが男達にワインを捌ける術を知らない。浮浪者がワインを売りに行っても、何処で盗んだと言われるだけ。仕方なく真理は自分で売りに行くことにした。真理はネットで調べて高価買い取りという店を探しあて三十万円の現金に換えた。半額に叩かれたけど仕方がない。これで暫くは食い繋げられる。帰りにスーパーに寄り日本酒に焼き鳥、つまみなどを買った。世間知らずでもネットで調べれば、おじさん達は何を喜ぶか知っていた。


つづく

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