第6話 アパートを追い出され河川敷へ
そんな事は知らず真理は、意地を張ったのは良いが、それから一ヶ月。仕事も見つからず……いや、そもそも働く気がないのだ。それでも生活水準は下げずに食事はレスランで食べ、欲しい物は何でも買った。やがて残った金は二百万ばかりになった。意地を張って喧嘩別れした園子に泣きつきたくない。かなり頑固な一面もあるようだ。
真理は危機感を覚えることなく、そのまま浪費。ついには金も無くなりワンルームマンションを追い出された。超お嬢様はついに青いテントの住人に成り下がることになる。つまり橋の下にテントを持った浮浪者である。気がつけば十九歳で浮浪者に成り下がるとは、しかも年頃の娘だ。本来なら今頃は華の東大生だったはずだ。
此処は都内のある河川敷、若い娘が大きなキャリアケースとその上に旅行バックを二段重ねにして歩いて来る。背中に大きなバックを背負っていた。周りには青いテントが沢山あり、其処の住人達が珍しそうに眺めていた。若い娘が迷い込んで来たのかと思った。ところが……
「あの~今日からお世話になります」
「なんだって? お嬢さん。くる所を間違えたのか」
「いいえ、そんな事がありません。申し訳ありませんが私に場所を少し分けて貰いませんか。お礼は致しますから」
「どんな事情があるから知らんが、あんた見たいな若い娘がくる所じゃないぞ。別に縄張りなんてないし自由だが、寝床は自分で用意出来るのか」
「出来ません。何方か協力してくれませんか」
「調子がいいね。まぁお礼をしてくれるなら助けてやってもいい。だがどんなお礼かそれ次第だな」
つまり地獄の沙汰も金次第ということらしい。世間知らずでも金がモノを言う事くらい知って居る。いくらアパートを追い出されたからと言って無一文ではない。最低限の金は持ち歩いている。場所が場所だけに襲われるかも知れないし盗まれるかも知れない。何ヶ所に分けて金を持って歩いていた。その中から千円札を二枚出した。
「これでお願い出来ないかな」
二千円で人に頼むなんて笑われるだけだが、此処では二千円も価値が違う。彼らが空き缶集めて一日働いて多くても五百円程度、少ない時は百円に満たない。つまり四日間以上にも相当する。六十前後の男の目の色が変わった。
つづく
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