第5話 親友 園子

 世間知らずのお嬢様が、世間という荒波の海に放りだされた。

 頼れるのは小学生時代からの親友、園子だけだ。園子はそれほど金持ちではないが中流家庭より上で、金には苦労しなかったが贅沢出来るほどの家庭でもなかった。普通の高校生らしくアルバイトを何度か経験している社会の仕組みも知っている。

 大金持ちの子が家もなくなれば、それは想像がつく。園子は出来る限りの協力をした。


 就職先も探せない真理に代わり園子が探してあげた。なのに、やっと見つけたアルバイトの仕事は三日で辞めた。二ヶ月はその繰り返しだった。

 ついに怒った園子は、真理を怒鳴り散らした。

「もう真理、いい加減にして! いつまでお嬢様気分でいるの。そんな事でどうして一人で生きて行けるの?」

「五月蝿いわね。園子に言われなくても分かっているわよ。でも嫌なものは嫌なの」

「ああそう! それなら勝手にしたらいいわ。私はもう知らないわよ」

 園子は、ついに堪忍袋が切れた。真理も意地を張って二人は別れてしまった。お嬢様育ちの割には人一倍気が強く負けず嫌いの真理。

 そんな気が強い真理を怒鳴っても意味がなく、園子には考えかあった。こんなお嬢様育ちは世間の厳しさを肌で感じなければ分からない。側にいれば頼って来る、だから一度突き放しことにした。そんな園子に両親は苦言を述べた。


「園子、まだ酒井真理さんと仲良くしているの。言ってはなんだけど貴女に災いが、及んだらどうするの」

「お母さん、それはないでしょう。酒井家とはお父さんもお母さんも付き合いがあったでしょう。少なからず恩恵も受けたはずよ。それなのに倒産したら付き合うなと言うの。それに真理はご両親も亡くしたのよ。豪族のお譲さんだったけど真理とは本当に仲が良かったの、だから助けてあげたいの。世間知らずが豪邸を追い出されてアパートの探し方も分からない子なのよ」

「分かったわ、貴女がそこまでいうなら助けてあげなさい。私達も真理ちゃん好きよ素直だし、金持ちを自慢することもなく、いい子なのは間違いないし」


つづく

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