第3話 全てを売払い屋敷を出る

たった一年弱で酒井家は滅びてしまった。リーマンショックは有名だが酒井物流商会の倒産は日本では酒井ショックとまで言われ関連した会社も倒産。酒井家はすべてを失った。贅沢を贅沢とも思わず育って来た真理には、余りにその出来事は大き過ぎた。もう周りの世話するお手伝いも執事も居ない。頼れる親戚も被害を受け真理を助けてくれる者はいなくなった。屋敷も抵当に入り住む場所さえも失って、たった一人世間の荒波に放り出された真理。


 既に東京大学へと進学が決まっていた真理だったが、それも無残に散った。頭も良く秀才のお嬢様は大学どころではなくなった。豪邸を追い出された真理はまず住む場所を探さなくてはならない。真理に残された貯金も少なく父と母から貰った宝石類と衣服、父が趣味で集めたワイン。これだけは債権者から逃れたようだ。これは真理名義で貸しコンテナに保管してあった。こんな事態を想定し隠していた訳ではないが結果的にそうなってので誰にも知られていない。ワインは父の遺品でもあり出来るだけ手を付けたくない。


生活して行くために宝石類を親友である園子の手を借りて全て売り払った。散々叩かれて売り払ったのだが、その金額は約八百万になった。元の金額に換算すると三千万超。如何に豪華な品だったかが分かる。父が残したワインは、貸しコンテナは屋内型。ワインだから高い温度の所には保存できない。父は五年分を前払いしてあり当面は真理が払う必要はない。元々父の友人でありそんな契約を交わしていたらしい。

父は真理に生前『もし困った事があったらたら処分して現金化しなさい』と、趣味とは言え父のことだからかなり高価なワインと見られるが今は知る由もない。


つづく


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