第12話

さらに夜は深まり...


最初の戦闘のあと、結局四体ぐらいの魔物と戦い...ようやくセーフエリアに到着


「疲れた...」

体には疲労がたまり、もう足が重くなっている

剣を構え、振り続けた腕もズッシリと重くなってしまっていた

そんな状態で、なんとかセーフエリアの中へ足を踏み入れると


「あなたは...冒険者ですか?」

セーフエリアに住んでいる人だろうか

奥の方から一人出てくる


「あ、はい ここで休めると聞いて...」

「大丈夫ですよ、こちらへ」


そう手招きされ、案内される


(それにしても、不思議だな)

この魔物が多くいる森の中で生活をすると、決めるなんて簡単なことじゃないと思うが...見た感じ、かなり多くの人がここで生活しているようだ

セーフエリア自体、決して小さいわけではなく住民の住居以外に大きな畑や農場、それに俺が今案内されている冒険者向けの宿屋までそろっている


「ここです」

そう案内してくれた人が言い、俺はそっちに目を向ける

宿屋...なのか?

もはや、学校とかって言われても不思議に思わない大きさだが


「あぁ...大きさに驚いているんですか」

「え、はい....失礼かもしれないですけど、ここってそんなに冒険者の方来るんですか?」

決して馬鹿にしているわけではなくて、それだけ規格外の大きさということなんだけど


「来ます、ここは森の中と言っても外と近いですし冒険者になってそれほど時間が経ってない人も腕試しで」

「でも、冒険者以外にもいるんじゃないですか?」


説明を聞いてもやっぱり、異常と感じてしまう


「そうですねぇ...冒険者は冒険者でもギルドから依頼を受けた人が来ることも多いですね たまに、セーフエリアの周辺にとんでもない強さの魔物が現れることも多いですから」

「へ、へぇ...」


そんなのは初耳だ

ここで少し情報を集められてよかったな

知らなかったら、他の魔物と同じ程度と考えて返り討ちにあってたかもしれない


「さ、お疲れでしょうし...そろそろ部屋に行ってください

宿屋の方には部屋を用意してもらってますから」

「あ、ありがとうございます」


そうして、俺は案内してくれた人と別れ宿屋へ


「こんな遅い時間に部屋を用意していただいてありがとうございます」

「いえ...これが仕事ですから」


宿屋の女性はそう淡々と言い、慣れた手つきで部屋の鍵を俺に渡してくる


「それでは...あちらから二階に上がってください」

指さした方には、階段が見える

そっちに俺が歩き出そうとすると、

「あ、そうだ....あなた、食事はどうするんですか?」

「あ...あぁ、まだ食べてないですね この辺で食べられるところとかって...」


彼女は、少し考え込み...

「そうですね...もうこの時間だと営業してるところを見つけるのは難しいでしょうから、あなたさえよければ私が作りましょうか」

え?

そんなサービスあるの?


驚いている俺を見て、「これは仕事とは別です 私が勝手にやろうとしてることですので」

と、慌てて補足する


そんな慌てるものか...?と思いつつ

「じゃあ、お願いします」

「わかりました、向こうに食堂があるので座って待っててください」


階段とは逆の方向を指さし、調理場の方へ歩いて行った


さっき、仕事とは違うって言ってたよな

俺何かしたっけ....普通、そこまでしてくれるものなのかなぁ

まぁ、せっかくだしごちそうになればいいか


ここを出るときには、少しだけ多めにお金払っておこう

まだ、ケメリカ王国からもらった...?お金が余ってるし

それに、どうやらセーフエリアにはギルドがあるところもあって...そこなら魔物の落とした素材とかを換金できるみたいだから


なんて、考えながら俺は食堂の椅子に腰を下ろす



それから、ほんの数分でさっきの人が料理を持ってくる

「これは...」


いつもケメリカ王国で食べている食事と違うな...


俺が料理に違和感を持っているのに気づいたのか、説明をしてくれる

「その料理は、ここら辺に現れるジャンボオークの肉を使っています

あなたがいたケメリカ王国では、魔物の肉は使われていないのでしたか?」


やっぱり、そうだよな

「あぁ、いつもは自分たちで育てた牛とかの肉が使われていた」

「そうですか、それでしたらつくり直しましょうか」

「いや、そこまでは別にしなくてもいい...けど、一つ聞かせてくれ」

「なんですか?」


首をかしげながら、彼女は視線を料理から俺へと移す


「そもそも魔物って食べられるものなのか? いや、出してくれてる時点で食べられるとは思うんだけど...」


ちょっと混乱しつつ、そう聞くと

「ふふっ、大丈夫ですよ ちょっと味にクセがあるものもありますけど」

と彼女は笑いながら答える


「そっか、じゃあいただきます」

「はい」


恐る恐る、一口食べてみる...と

「美味しい」

思わず、口から感想が漏れる


「よかったです、じゃあ私は仕事に戻りますね 食器はそのままで大丈夫です」

そう言って、立って歩き始める


「本当にありがとな」

一言、お礼を言うと彼女はもう一度笑い、歩いて行ったのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る