第11話

幸い、追ってきた連中はどうやら一般市民らしく、捕まることなく王国の門の前へ


「...やっぱり、見張りはいるか」

ここで翼を用意して、飛んで逃げるのも手ではあるが...


それだと、逃げた方向が大勢に見られるリスクがあるんだよな

なるべく、徒歩で逃げたいところだが...使えそうな魔法とかないか

と、自分の手札を思い出す


あれ...この魔法は確か学校の授業で習った...?

これなら...!


と、俺は見張りの方へ片手を伸ばし唱える


聖域の印ホーリー・ディメンション

そして、唱え終えると見張りの足下にケメリカ王国の王家の紋章が現れる

まぁ、なんというか...あいつの血筋の魔法を使うのは癪だが、仕方ない


そして、その紋章は魔力ではない、不思議な...神々しい光を放ったかと思えば、次の瞬間には見張りが膝から崩れ落ち、そのまま倒れ込む


この魔法は、授業によれば悪しき者を捕らえる時に使う魔法だ───とか言ってたか

全然違う用途...むしろ逆になったが、まぁいいか

これ以上、何か考え始めるとキリがない気がする...と諦めをつけ、見張りの横を通り無事門を突破


「少し急ぐか」

おそらく、すぐに別の見張りが来て俺の逃走を報告するだろうな

って考えると、結局飛んで逃げようが門をちゃんと通ろうが変わらなかったか

ひとまず、さっさと距離を取ろう...と俺は北の方角へと走り出したのだった



────────

昼過ぎに王国を出て、そこからは追っ手が来ることもなく、気づけば夕方

王国の周りは、農民が管理する畑が広がっていた

でも、そろそろ他の国へつながる森が見えてくるはず


「お、あった...」

本当に森なんかあったのか...という驚きと、かなり深い森への恐怖が半々

もういつ、魔物が出てきてもおかしくない


「はぁっ!」

深く息を吸い、勢いよく吐き出す

まぁ、ルーティンというかそんな感じか 大会の時は、怒りでそれどころじゃなかったが

そして、ルーティンと同時に人や魔物の魔力や他の何かの殺意を察知する特殊な視界を展開


これで、奇襲を受ける可能性は下がった

だいぶ、戦闘しやすくなる


そこからは、右手で剣を構え...左手では灯りを確保するために光の魔法を発動し、進んでいく

もちろん、特殊な視界も絶賛展開中で魔力の消費はとんでもない


こんな後先考えず、使っていいのかと思うところもあるが、ジェーンによれば森の中には魔物が近寄れず武器等が使えない、セーフエリアというものがあり...その中には、王国とまではいかない、小さな村があるらしい

それに、そこで休息を取るのは冒険者の常識らしい


つまり、何日かはそのセーフエリアとやらを転々としながら森の北側まで行くことになるな

なんて、考えていると....


「っ!」

さっそく、魔物を察知

大きく後ろに下がり、正確な位置を探る


「どこだ...」

「オオオォォォッッ!!」


雄叫び...右かっ!

すぐに、視線を右へ そこには、人型の...ちょっと直接的にはあまり使いたくないが醜い顔をした魔物がいた 一般的にはオークって呼ばれてたか

武器は...槍か

間合いを取り間違えなければ簡単に勝てる


現状、向こうも俺の存在は認識している

お互い、攻撃は届かない 魔法は除いて

しかし、ここで魔法はなかなか難しいところがある

木と木の間隔が狭すぎて、狙い撃ちできない

すぐに、敵の姿が見えなくなる

魔法攻撃をする際には、特殊な視界には頼れない

もし同時使用すれば、魔力を一度に使いすぎてどっちの質も低く、実験してみたことはあるが特大の火球をぶつけても木一本すらも焼けなかった

つまり、森にいる間は剣対何か(この場合は槍)


長ったらしく考えたが....さっさと攻撃を仕掛けないとな

この不毛な睨み合いをさっさと終わらせないと


一瞬、見えたオークの姿で大体の隠れた位置を把握し一気に接近する

槍で突かれる前に、死角から切る!


「はぁっ!」

素早く切れるように、いつもの訓練の時よりも小さく振りかぶり一気にオークの首めがけて振り下ろす


「ガッ...! アアアアァァァ!!」

オークの首は最後に叫びながら、どこかへ吹き飛ぶ

そして、残された体は力なくその場に倒れ


これで、ひとまずは...危機は去ったか

それにしても、森の中は戦いづらいな

今までの戦い方を少しは変えないと、相手に攻撃は当たらない


「はぁ...夜進むのはやはり危険か」

狭い上に、暗い 光魔法を使っているとはいえ、戦闘中は随分不自由だ

今日はさっさとセーフエリアに行って休もう

明日以降、朝一番で出発して夕方前にセーフエリアに到着出来る流れを作ればいい


そう考えながら、警戒しつつ..俺はさらに森の奥へ進んでいくのだった






───────

おまけ


この世界の魔族と魔物の区別について

魔族は、魔物の上位互換 すべての種が、魔物が進化したもので特徴が強化されている 魔物は、この世界の様々なところに存在し各自で獲物を狙う もちろん、種族ごとで集まることはある 逆に、魔族は生活域...自分たちの王国をもち魔王の下で生活をしている こちら側(人間族、エルフ、獣人など)と魔族側で一度起こった戦争では、魔族の下に世界中から魔物たちが呼び寄せられ支配下に置かれ、戦争が行われたという記述も残っている


おまけ終わり

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