第10話

武具屋を出て、ギルドへの道中


「あれ...?」

たくさんの人が集まり、何かを見つめている

その「何か」には、動きと音があるようだ

あれが、映像魔法ってやつなのか?


映っているのは...「げっ」

勇者と国王だ

本格的に行動をし始めているようだな

しっかり、音までは聞こえないが...大方、俺についての情報だろう


ここで、聞くのは危険だな

さっさとギルドに行くべきだ..と顔を軽く隠しながらギルドの方へ走り出す


────────

「まだ、ここは大丈夫だよな」

さっきの人混みからは離れているが...

そっと扉を開けると...


「すごいタイミングで戻ってきたわね...」

と、ため息をつきながらジェーンが迎える

何か知っているのだろう


「なぁ、街で何が起こってるんだ? さっき、映像魔法で勇者と国王が映ってたんだけど」

「あれは...あなたを捕まえるように指示していたのよ」

やっぱりか...

「ギルドにも国王の御側付きの人が来たわ 私以外に人がいなくてよかったわね」


確かに...ジェーン以外だったら、俺はここで捕まってた訳か


「まぁ、それはいいわ どうせ、情報を手に入れたらすぐにここを出るんでしょ?」

「あ、あぁ..そのつもりだ」

「装備も新調できたようね」

「まさか、案内されたところがお前の親戚とは思わなかったがな」

そう言うと、ジェーンは少し微笑みながら手に持っていた地図を机に広げる


「これは...?」

「この世界の地図よ、ここがケメリカ王国ね」

ジェーンが指さしたのは、地図の中央より少し右あたり


「まぁ、一応候補はいくつか用意したけど...」

自分で確認して...と言って、俺の元に地図とメモを近づける


メモに書かれている候補とその国の情報はこんな感じだ

・プルソハ...人間族の国 文化もケメリカ王国とは類似している が、ケメリカ王国とは距離が近く追っ手がすぐに来る可能性が高い ケメリカ王国から北へ


・シボルグ光国...エルフが多い国 人間族とは関係はそれなり 全く人間族がいないわけではなく、ケメリカ王国とはそれなりの距離がある ケメリカ王国から西へ


・ノティス...獣人が多く生活している 人間族とは関係がよくない かなり人間族は少ない ケメリカ王国から東へ


プルソハよりも北へ行くと、魔族の生活域に近く危険

逆にプルソハよりも南であれば基本的に魔族の影響は少ない(それでも国によるし、どんな国でも魔族侵攻の危険はある)


他にもあるが、いきなり行くには遠すぎるため、まずはこの三国から選ぶことにはなるだろう


どちらにせよ、中継地になることはほぼ確実だし...プルソハでいいか

魔族の生活域が近いのであれば、勇者でも簡単には追ってこれないはずだ

不用意に追ってきて、自国の戦力を削るようなこともしたくはないだろうし


「決まった?」

俺の様子を見て、ジェーンが近づいてくる

「あぁ、ひとまずプルソハに行こうと思う」

「わかったわ、それじゃあギルドの冒険者登録証を出して」

「...なんだそれ?」

嘘でしょ...と言いたげな目で俺をジェーンが見てくる

聞いたことない気がするんだが...


「剣術学校に入学したときに登録したはずだけど」

「...あ、なんかしたような」

ひとまず、持っていた鞄の中を一通り漁ってみる

確かに、入学してすぐ登録したような...でも、鞄に入れてたっけな

もしかしたら、学校の寮に置いてきたかも...


「あ、あった」

無事、俺の心配は杞憂に終わり、登録証をジェーンに手渡す


何か作業をし始めたかと思えば、すぐに登録証が手元に戻ってくる

「これをプルソハに入ってから見せれば、問題はないよ」

「見せなかったら?」

「それは、不法入国で捕まるね」

なるほど、せっかく逃げたのにその先で捕まりかねないわけだ


「ジェーンがいてくれて助かった、本当に」

「まぁ、そっちの事情はわからないけど大変なのは伝わる それに、得体の知れない勇者とかよりも...私はクラスメイトのほうが大切だしね」

本当に...人の温かさが身にしみる


「ありがとな、いろいろと」

「ううん、これが仕事だからね」

「そだ、次学校に行ったとき...セドリックにはよろしく頼む」

「....わかったわ、慰めるぐらいはしといてあげる」

「助かる」

「うん、じゃあ頑張って」


俺がギルドを出たのを見て、ジェーンはそう言い扉を閉めた


ここからは、正真正銘独りだ

もう退けないところまで来た


「おい、あれってまさか!」

「レオンハルトっ!? 俺が捕まえる!」


まずい、もう見つかった!?

早くしないと囲まれるっ!


最悪の事態を想定し、勢いよく走り出したのだった 

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