第8話
武具屋に入ると、目の前には大量の剣、防具が壁一面にかけられていた
この武具屋、ケメリカ王国では一番と言われている有名なお店...らしい
さっき、ジェーンにそう聞いた
俺の場合は、まだ剣術学校に入学して一年弱だから学校側から支給された武具だけでやっていけてるんだよな
だから、一度も武具を新調しに来たこともないし
「あなた...見ない顔ね」
考え事をしていると、奥の工房からこの武具屋の鍛冶師らしき人物が出てくる
「あ、あの...武具を新調したいんですけど...」
「...あなた、もしかしてさっきの剣術大会で優勝してた?」
え? なんで、知ってるんだ?
終わってから、そこまで時間経ってないしまだ広まってないと思うんだけど...
と、不思議に思っている俺の考えを読んだのか
「さっきの剣術大会は映像魔法で、ケメリカ王国全体、どこでも見れたのよ?」
えぇ...そんな魔法あったのか
魔剣士の修行をする中で、闘いに使える魔法しか使いこなせるようになってないし、仕方ないところもあるけど
「ちなみに、表彰式もですか?」
「もちろん、でも私は仕事があったから表彰式までは見てないけどね」
...これまずいぞ
表彰式まで見ている人が、大勢いるって考えると...想像以上に俺に時間は残されてないかもしれない
突然、冷や汗が止まらなくなってきた
「まぁ、それはいいの 武具を新調するんだったっけ?」
「え、はい」
そうね...と少し鍛冶師さんは考え込み
「これなんて、どうかしら」
奥の工房に戻ったかと思えば、剣と防具一式を持ってきた
「これは...?」
見た感じ、店中に置いてある武具と変わらなさそうだけど
...こういうときに鑑定スキルがあれば便利だけど、それもさっき言った理由で覚えてないんだよな
「まず、この剣から教えようか」
と、剣を鞘から抜き話を続ける
「この剣はね...魔法を纏わせる闘いに適した特殊な剣なの」
「適した...?」
俺、大会のとき普通の剣で使ったけど
「そう、別に普通の剣でも纏わせることは出来るわ
でも、普通の剣でやるとね 剣がすぐに壊れちゃうの」
あ、そういえば...大会終わった後、使った剣...普通の闘いではつかないような傷があったかも
「どうやら、心当たりがあるみたいね
さっきの大会を見ていた限り、あなたは...この国では珍しい魔剣士みたいだしあなたが必要とするならこの剣を売ってもいいわ」
ありがたいはありがたいんだけど、やっぱり魔剣士が珍しい...とか才能がどうとか言われるのはな...ちょっと、引っかかるなぁ
でも、こんな俺にぴったりな剣が次にいつ見つかるかなんてわからない...か
「じゃあ、お願いします」
「わかったわ...それじゃあ、次はこの防具ね」
と、剣を鞘に収め壁に立てかけると、防具を手に取る
その防具は、鎧のようなものではなくみんなが街に出かけるときに着るような随分と軽装に見える
「これは、魔法の攻撃を無効化する防具よ」
「え?」
そんな防具あるのか!?
「もちろん、無効化にも限度はあるわ
連続で無効化するのは...せいぜい中級魔法三発程度まで」
「...それだと、長旅では使えなさそうですね」
さすがに、中級魔法を三発無効化して役目終わり...だとな
ジェーンが、かなりの長旅になるって言ってたし、もうちょっと頑丈なものを...
と、俺が考えていると
「大丈夫よ、さっき【連続】って言ったでしょ」
「え、それってどういう...」
思わず前のめりになる俺に、
「まぁ、落ち着きなさい ちゃんと話すから」
と一瞬で防具を置き両手で俺を制止する
「あ...すみません」
俺は我に返り、慌てて頭を下げる
「いいわ、気にしないで」
「話を戻すわね、この防具には自動で損傷を修復する機能があるの」
えぇ...そんなのありなのか?
そんなものがあるって話今までの人生で聞いたことないぞ
たかだが、十五年ではあるが
もしかして、この鍛冶師...とんでもない人なんじゃないのか?
「そんなもの、どうやったら作れるんですか!?」
「君は...エタソノミアって知ってる?」
「...なんですか?それ?」
「まぁ、簡単に言うと絶対に壊れない石よ
それを加工して作った武具がこれらなの」
と、さっきの剣と防具に向けて指を差す
何か当たり前のように言っているが、そんなもの..おそらく簡単には加工できないはず
それに、どこでそんなものを入手したのか...
やっぱり、この人普通じゃない
「あの...そんな貴重な素材一体どこで手に入れたんですか?
それに、あなたは何者なんです?」
「貴重な素材ね...まぁ、間違ってはないけど入手するのなんて簡単よ
なぜなら、それを加工できるのは私以外に存在しないから」
は?
すごい人だとは思うが、なんでそんな人がここにいるんだ
そこまでの実力があれば、王国専属の鍛冶師をしていてもおかしくはない
確か、王国がもつ騎士団の武具をつくる鍛冶師集団は実際にいたはずだ
「まぁ、この武具をあなたのほかに使いこなせる人もいないだろうし、全部教えてあげるわ 座りなさい」
と、椅子を二人分持ってきて、俺の前に置く
本当は、こんなことしてる場合じゃないのはわかってる
でも、この人の武具を使う以上...知らないといけないと思う
そう考え、俺は用意された椅子に座るのだった
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