第6話
「えー、俺...レオンハルトはここに勇者アイリーンとの婚約を破棄します」
「は?」 「え?」
驚き戸惑う観客の声が響き渡る
それに、隣からは
「ちょっ!? それってどういう!?」
と焦る司会の声
「言葉通りです、俺は勇者と結婚するつもりなんてありません」
「ならば、優勝はお前ではなくなるぞ」
先ほどまで黙っていたアンドリュー国王が俺の目の前に来て口を開く
「それでもかまいません」
「なぜだ! 優勝したという事実さえあれば、お前のこれからの生活は安泰なんだぞ!」
ずいぶんと焦っている様子
早口で怒りを前面に出して話す
「でも、その優勝者が俺である必要はないでしょう」
なんでこの人は、ここまで俺のことを引き留めようとする?
何か理由でもあるのか...?
「ぐぬぬ...本当に優勝と婚約を破棄するのならこの国にはいられぬぞ?」
うーん...考えていた最悪を引いたな
個人的には、穏便に準優勝者であるミカエル・ヘッグを優勝者にするだけで終わってほしかったんだが
まぁ、これ以上国王に刃向かう必要もないし...この人の決断を覆すのは国王の側近でもおそらく無理だろう
「わかりました、準備をしてすぐに出て行きます」
そう言って、俺は大会の会場を後にしようと歩き始める
「おい! レオン!」
歩き始めた俺にセドリックが走ってくる
「本当に行っちゃうのか?」
セドリックの目には少しの涙が浮かんでいる
「ごめん、でも..勇者と結婚するわけにはいかない
お前も気をつけろよ、あいつは...危険だ」
「え...それってどういう──────」
それ以上は俺は答えず、再び歩き始める
セドリックには申し訳ないけど...お互いのためでもある
王に刃向かった俺と一緒にいるのを見られでもしたら...セドリックまでこの国で生きられなくなる
セドリックと話しながら、横目で国王らの様子をうかがっていたが怒りながらも勇者になにやら話しに行っていた
ひとまず、セドリックは大丈夫だろう
後は、俺が...逃げるだけ
と思っていたが、そんなにうまくことは運ばないらしい
「逃がすと思っていたのか?」
すでに抜刀した勇者が俺の行く手を阻むように立つ
「はぁ...まぁ、闘いは避けられないか」
と、俺も剣を構える
ただ、勇者の実力がどんなもんかわからない以上、正面からぶつかるのは危険だな
どうにかして、ひとまず初撃だけは回避しないと...
ゴクリとつばを飲み込む
「参る!!!」
勇者は地面が割れるかと思ってしまうような、とんでもない脚力で走り出し...
「はやっ!?」
回避は間に合わない! 防御に...
「
相手の進路に巨大な氷壁を作り出す
だが、まだ大会で使った魔力が回復しきっておらず...
「こんなもので...! 私を止められると思うなっ!!」
勇者の一太刀で、氷壁は砕けてしまう
そして、すぐに加速し攻撃を仕掛けてくる
「くっ!」
なんとか相手の剣筋を読んで、こっちの剣をぶつけるので精一杯だ
一回でも予測を間違えれば...切られて負け
今、勝つのは不可能だ
魔力が全回復していれば話は別だったと思うが、逃げるしか手はなさそうだ
一瞬でも隙を作り出す!!
「斬火薙ぎ」
先ほどと同じように、相手の剣筋を読み、弾くだけではなく剣に炎を纏わせ...全力で薙ぎ払うっ!!!
「ぐっ!」
勇者が炎を避けようと、後ろに飛び退く
今しかない!
「
創造魔法で翼を作り出し、風魔法で一気に上空へと飛び出す
「逃がすな、お前らっ!」
勇者の声とほぼ同時に、大量の矢が俺をめがけて飛んでくる
「あぶなっ!?」
なんとか風魔法で矢を弾き飛ばす
危なかった、風魔法を使って飛んでなかったら、とっさに弾けなかったかもしれない
ひとまず、ここを離れて捕まる前に出発の準備を──────
「ストーンキャノン!!!」
勇者が手配した魔法使いが放った岩の弾が俺にまっすぐ飛んでくる
「ぐああっ!!」
片翼もってかれた...
今、俺は翼をただ創り出しただけでなく感覚をつないでいる
だから、痛みは感じてしまう
これが、デメリットなんだよな
感覚をつないでいないと、上手く操作することが出来ないから仕方がないところもあるが
「仕方ないか、このまま逃げる!!」
片翼の状態になりながらも、俺はさらに風魔法を強め勇者たちから離れていくのだった...
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