第7話 一緒に見た一番星


//SE フクロウの鳴き声。

//時間の経過。夜が更けてきた。


「君がなんでソロキャンしてるのか、私が知らなかったみたいに、君は私がなんで星が好きなのか、知らないよね?」


「私はね。あの日、君と沢で見上げた一番星が忘れられないの」

// 思い出してうれしそう。


「どんどん日が暮れてさ、足は痛いし、怖くて、怖くて。

 このまま、誰も助けに来なかったらどうなっちゃうのかな?

 って、クマが出て来たり、オオカミが出て来たりして、食べられちゃったりしないかな? とかね。

 悪い方に悪い方に考えて、震えてずっと泣いてたよね」


「あの時、君が私の手を握って言ったんだよ」


「『星が見えるから大丈夫だって』」


「見上げてたら、金色の星がキラッと輝いて、その後、満天の星空になった。

 真っ暗な沢の底で見たあの星ほどキレイな星は、まだ見たことがないの」


「だから、ずっと、ずっと探してるの」


「あの日見た星を」


「そうだよ。ずっと調べてる。

 天文部に入ったし、プラネタリウムにもしょっちゅう通ってる」



「でもね。今日、わかったことがある」


「今日見た星は、みんなあの日のように、全部輝いてたの」

// 期待を込めて。


「星は輝くものだろうって? 

 ちがうの、そうじゃなくて!」


「特別なの。今日の星空は特別なの!」

// 伝わらないのがもどかしく、少しぐすんとなる。


「ぐすっ。な、泣いてないよ。泣いてないって!

 この、どんかん!」


「もう、あやまんないでよ。八つ当たりした私が恥ずかしいでしょ……」

//SE たき火の音。




「え、お腹が空いてるから、ぐずってるんだろうって?

 子供じゃないんだからそんなわけないでしょ……」


// ぐうう お腹の音。

// はぜるたき火の音。



「君、何か作ってくれるの?」

// 期待感。



//SE ジュージュー 肉を焼く音。


「鳥のスパイシーグリルとバターライス?

 コーンスープはお湯差しただけだけど?」


「すっごい、おいしそうなんですけど!?」


「え、ちょっとまって、料理できるってこのレベルなの? すごくない??」

//あわてふためく。


「もぐもぐ……。ごくごく……」

「なにほれ、おいひすぎる!!」

// 食べているので、活舌悪い。


「君はさ、勉強以外はなんでもできるね……。

 料理も勝てる気がしない……。

 お腹いっぱいになって、元気になるかと思ったけど、これはヘコむわぁ。立ち直れないよぉ。

 憎っくき料理男子め!」

//わあっとまた泣く。


「私は料理あんまりできないし、星座の相性もイマイチだし、メガネ女子でもないし、全然、君の好みじゃないだろうけど……」



「私は、君のことが好きなの!」



「なかなか、クラスが一緒にならなかったけど、ずっと見てた……」


「なんで、君の好みを知ってるかって? 友達に聞いたし、あと今日、散々聞いたし……」


// カサッとメモ帳を取り出す音。


//たき火の音の音 ぱちぱち


「ぐすっ。ごめん。今日、告白するつもりなかったのに。勢いで言っちゃた。たはは」

//から元気。


「もうちょっと、好みをリサーチしてからと思ってたんだけど、もう5年も片想いしてたんだから、いいか……」


「急にごめんね、困らせて。また夏休み明けから、気まずいね」


「今の、忘れていいから。友達でっていうか、クラスメイトとしてまた2学期からよろしくね」

// 涙を拭き。笑顔で。


「えっ? ちょっと、まって。

 昔から、かわいいと思ってた?」


「わ、私のこと??

 うそでしょ。そんな素振りはまったくなかったじゃない……」


「あの時から、私のことが好きだった?

 好きな子だったから、助けに来てくれたってこと?」


「ず、ずるい!! 今それ言う??

 あきらめようと思って、友達にって言ったのに」


「は? 信じられない? ホントに、君のこと好きかって?? そこ疑うの?」 

 

「……まあ、ソロキャンの場所を君の友達に聞き出して、自分のサークルの天文観測日にあわせるくらいには好きよ」


「……うん。そうとうだね」

// 恥ずかしがりながら



「私の英雄ヒーローだって、言ったじゃない」



「それに、君と見る星は特別なのよ」


// 満天の笑顔。

//SE 星の輝く音。

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