第5話 あの日のできごと

//SE 木々の間を抜ける風の音。

//SE きらきらと星の音。


「ねえ、星の光って何億光年も前の光が届いているんだよ。

 今光ってるあの星も、もうないかもしれないって不思議だよね」


「織姫ベガは25光年 アルタイルは16光年地球から離れているの。

 織姫と彦星の距離は17光年も離れてるんだって……」

//シリアスに、寂しそうに。 


「君とは、なんだかずっと近くて遠かったよね。

 同じ学区なのに、小学校で一度同じクラスになっただけで、後は中学校も違うクラスだったし。

 なのに、また高校で同じクラスになるなんて……」

// うれしいのか悲しいのか複雑そうな感じ。


「私ずっと、君に謝りたくて……」


「おぼえてるかな? 忘れるわけないよね。

 私が迷惑かけたんだから……。

 小学校の林間学校の時、山で崖を滑り落ちた私を助けてくれたよね」


「ずっとお礼が言いたくて、謝りたくて……。

 でも、あのあと私、君にひどいこといっぱい言ったから、合わせる顔もなくて……」


「『一緒に遭難しただけの黒歴史』?

 そんな風に思ってないよ!

 落ちた私を、一番最初に助けに来てくれたじゃない!」


「『たいしたことじゃない。

 ホントに助けてくれたのは先生だ』?

 何言ってるのよ!

 君は、私にとっては英雄ヒーローだよ!」

//一生懸命な様子。


「あぶないところを真っ先に降りて来て、大人の助けが来るまでずっと一緒にいてくれたでしょ?」


「怖くて、足が痛くてめそめそ泣いていたときも、傷の手当てをしてくれたし、ぎゅうってしてくれた。

 心強かったし、ひとりだったらどうなってたかと思う。たぶん、トラウマになってもう山に星を見に来ることも出来なかったと思う」


// 時間の経過。しばし沈黙。


「なのに私、みんなにからかわれて恥ずかしくて『君のことなんか好きじゃない。全然かっこよくないし、タイプじゃない!』って、みんなの前で言っちゃって……」


「それ、君に聞かれてたんだよね……。君に『俺もタイプじゃないから』って言われたとき、すっごい胸が苦しくて。

 ああ、あの時どうしてウソついちゃったんだろうって」


「すぐに、恥ずかしくて嘘を吐いたって追いかけて謝ればよかったって、ずっと後悔してた」


「だから、あれから声をかける機会をうかがってたの。

 なのに、クラスも全然一緒にならないし……」


「諦めかけてたら高校のクラスが同じでしょ。

 もうこれは最後のチャンスだと思って」


「さりげなく、ホントのタイプはどんな子なのか探りを入れて……」

 //ごにょごにょ。


「君は、その少し地味だけど、他の男の子みたいに意地悪じゃなかったし、からかってもこなかったよね。

 勉強はあんまりだったけど、山のこととか、草花とか詳しいし、頭の良さって、勉強だけじゃないんだって、すごいなぁって思ってた」


//SE 気持ちいい風の吹き抜ける音。


「あのときは、助けてくれてありがとう。

 その後、ひどいこといってごめんなさい」



「『別に気にしてない』?

 私は気にしてるよ! 

 全面的に私が悪かったし。

 私が気にしてるの!!」


「『ひどいこといったからお互いさまだから、もういい』って?」

「ずるい! そういうところが、君、かっこいいんだよ!」


「はあ? 星を見てるのに、私の目が悪いんじゃないかですって??

 失礼ね。星を見てる人は目がいいのよ。

 私の視力は1.5あるよ!」

// ふと我に返って。


「も、もしかして君はメガネ女子の方が好き? メガネ萌え!?」


「そういえば、中学の時に教育実習に来ていたメガネ美人の先生のことが好きだとかなんとか……」


「あー!! メガネか、メガネなのね!!

伊達メガネ買わないと!」


// _φ(・・ )メモメモ


「だから、なんでもない、なんでも。気にしちゃダメなの!」


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