第13話 18時12分
「なぁ…因崎教えてほしいんだけど」「う、うん…」
俺は応接室に戻ってきて早々、因崎に質問を投げかける。
因崎は決まり悪そうではあったが、どこか腹をくくったように頷いた。
「お前は蛇九も六角も殺してないんだよな」
「もちろんだよ!二人は僕の大切な友達なんだ…殺すわけ…ないじゃないか」
因崎は青白い顔を俺に向け、いつもより強い口調でそう言った。
「だけどさ、蛇九が死んだときのお前の話…宇治治も言ってたけど変だよな」
因崎は自室で蛇九の部屋の物音を聞いたと言った。
そして、借りている本も持たずに慌てて蛇九の部屋へ行くと蛇九が死んでいた、と。
しかし、蛇九の部屋と因崎の部屋は正反対、端っこ同士なのだ。
そしてその間には部屋が4つある。
因崎の部屋から聞こえるほどの物音ならば、蛇九の部屋の下にある応接室にも聞こえるはずだ。
「それは…」
「お前じゃないんだろう?だったら本当のことを教えてくれ」
「………実は僕…」
因崎が口を開く。
どうやら俺の説得(説得と言えるかは謎だが)に応じてくれる気になったようだ。
まぁ、きっと因崎の素直で気弱な性格上、何かを隠すことを悪いことだと感じてしまうのかもしれない。
「僕…自分の部屋にいなかったんだ」
「………いなかった?」
「う、うん…実は宇治治さんの部屋で本を読んでたんだ」
「宇治治の部屋で?」
確かにそれなら蛇九の部屋の物音も聞こえるだろう。
けれど、何故?
何故、因崎は宇治治の部屋で本なんか読んでいたんだ?
「…僕の部屋…日当たりが悪くて…照明も切れかかってたんだ…、だから本が読みづらくて…、そしたら蛇九君が『隣の宇治治の部屋を使えば』って言ってくれたんだ…『宇治治には俺から説明するから』って…」
「いや、でも宇治治の部屋の鍵はどうしたんだよ」
「それが鍵はかかってなかったんだ…蛇九君の話だと、宇治治さんは鍵を閉める習慣がないみたいで…」
「ふぅん…」
因崎は終止、自信なさげにオドオドしながら答えていたが、嘘をついているようには見えなかった。
自分の部屋で読書ができないからといって、わざわざ女子の部屋で本を読むことにしたのも、多分蛇九に強く言われ断れなかったのと、因崎自身が早く本を読みたかったからなのだろう。
理解はできない、が。
「とりあえず…お前が蛇九から借りた本をすぐ読みたいばっかりに、女子の部屋へ無断で入るような変態ってことは分かったよ」
「う…やっぱり勝手に入るのはダメだよね…六角君にも同じことを言われたよ」
俺が意地悪く変態呼ばわりすると、因崎は頬を赤くし恥ずかしそうに視線をそらした。
そういえば…六角が死んだとき、こいつは何をしていたのだろうか。
「六角の死んだ時のことも教えてくれるか?」
「も、もちろん話すよ…!」
因崎の顔が急に曇る。
身体も少し震えているようだった。
「応接室から出たあと…僕たちは六角君の部屋に行ったんだ」
ハロウィンナイト めておすとらいく @egoistman0504
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