終章1話
終章01
西暦1947年1月1日
(聖歴4年1月1日)
皇国が西暦の廃止を宣言してから4年、世界に対して聖歴4年が宣言される。
神聖皇国首都サンクトゲントブルグ(旧シドニー)の大聖堂で祝福の儀式が行なわれている。
連邦傘下の国々は、この聖歴を容認、受け入れた。
当然、ドイツ帝国、米国などの北米、南米などの国々、アジア各国もさすがに反対こそしなかったが、以前西暦は続けられる。
大戦勃発から多くの人々が亡くなった。
しかし、連邦(旧大日本帝国から分離し太平洋同盟諸国となり、その後太平洋連邦となった)の主要軍人は皆生存していた。
死んだ者たちは、皆敵国であった。
太平洋戦線において、連邦軍は常に有利を保ち、一方的に敵を粉砕し続けた。
今や米国の西海岸は東方からの開拓者と原住民(インディアンと呼ばれていた人々)が国家らしきものを形づくり独立を宣言していた。
連邦が米国を牽制するためにつくられた国家であった。
勿論、当初武器弾薬も提供されていた。
だが、休戦条約を締結した後には、武器供与が停止される。
原住民の国は、連邦に参加する国となった。
東方の開拓者たちは、500万人以上が上陸しており、米国と未だ戦闘を続けていた。
武器弾薬の供給が停止された開拓民は苦境に陥り、一時壊滅するのではと考えられていたのだが、闇で弾薬が供給され始める。
連邦は、まだ戦闘を継続させる必要性からの処置であった。
東海岸工業地帯は、造船部門、主要都市が壊滅的な被害を受けており、連邦との継戦能力を完全に喪失していた。
核搭載潜水艦の自爆攻撃が造船の主力都市を完全に破壊し、一般住民も含めて技術者たちもあの世へと送り込んだのである。主要な造船所の近くには海軍の基地もあったのだ。
それに加えて、英国本土のからの戦略爆撃は工業都市を破壊していた。
米国の上流階層には、ユダヤ系が数多くおり、連邦本土に多くのユダヤ人が救出されていたことも大きい。
世論は、たとえ敗北しても、直ちに戦争を終結させることを大統領に要求したのであった。
斯くして、戦争は停止したのだった。
厳かな雰囲気が満たされた大聖堂には、法王が最上段に座り、その妃(ロシア皇国の王の姉)が横に座っている。
流石に寄る年波に勝てるはずもなく、かなり年を取った。
勿論、気品のある美しい婦人という感じになっている。
そして反対側には、日本での嫁が座っていた。こちらはまったく年齢がいっているようには見えなかった。娘といわれても信じることができるくらいである。
しかし、表情に乏しい。美しい顔だけに残念である。
正妃(ロシア)は、側妃がいることは聞いていたが、初めてその姿を今見たのである。
彼女は、サンクトゲントブルグ(ロシア領内の)にずっとおり、外界にでたことはないまさに箱入り娘なのである。
一段下の父、元ロシア皇帝が苦々し気に、法王を見ている。
彼は、未だ20台の青年に見える。
あの薬の所為で、若返ったままの姿を保持しているのである。
彼の息子(ロシア皇国の王)よりも若く見える。
赤いじゅうたんをはさんで立っている武士も同じく若く見える。
それは、維新の時代を駆け抜けた兵であり、今次大戦でエースとなった空のサムライである。
日本側の妃の後ろには、実の息子、玉兎(ダン・テスラの魂が入魂された)もいる。
ダンは、例の薬により生き返り、日本側の妃により生まれた、非接触型生物である。
(性行為なしでうまれた奇跡の人物の事)彼も、青年のまま全く年を取ったようには見えなかった。
記憶上の弟のニコラ・テスラは一段下にいるが、彼の方が年を取り、彼の父にも見えるし、 ダンが、若いころのニコラそのもののように似ていた。
側妃は、名家の出であるという話であったが、実は皆その素性を知らない。
『ある時突然、空から降ってきた』というのが、昔の法王しる者がかたったという言葉である。
ある日を境に、嫁にやってきた人物である。
しかし、ダン以外にも息子がいる。
最初の息子(リュート)は接触型生物であった。
しかし、リュート以降の息子は非接触型ではないかと思われた。
法王は常に忙しく、それどころではなかったのである。
しかし、リュートに似た息子が11人もたっている。
彼らは、全員が親衛隊の航空隊の将官である。
抜群の技量で、当たる敵すべてを撃ち落としてきた。
エース中のエース。
彼等をして、パーフェクトナイトと呼ばしめるほどであった。
抜群過ぎて、誰にも技術を伝授できないほどである。
父親(法王)だけは、彼らをPSと呼んでいるらしい。
『彼らはおそらく、PS計画の産物に違いない』父親(法王)はたまに、意味不明の言動をすることが有る。親衛隊は、皆、彼が神と通信していると考えているので、気にすることは無い。
誰もが、『PS計画』って何ですかなどと聞くことはないのだ。
流石に、多すぎるので、上段には、リュートとダンだけが立っている。
他の息子?は下の段で整列している。
その横には、ペルシャ皇国の王のミカエル・トハチェフスキー元帥が膝をついている。
彼も又、若いままであった。
彼は、ペルシャ湾の油田地帯を完全に武力制圧しており、ペルシャ皇国を成立させ、王となったが、今、その王の席を退位しようとしていた。
彼は、スターリンにより粛清されたミハエル・トハチェフスキーの親族ということであり、スターリン討伐にそのすべてを賭けていた。
今、そのスターリンもいない。(死体は確認されていないが、ウラル山脈に投下されたバンカーバスターにより死亡したのではと考えられている。その後彼の存在を確認できる証拠は何一つない)
スターリンが討伐されたことにより、全てを返上する決意を固めたのである。
石油社会が到来すれば、巨万の富を約束された土地ではあった。
その国は、法王のロシア人の息子に譲位する段取りであり、今回そのように発表される。
その代わりと言ってはなんだが、この旧オーストラリアは日本人側の息子(リュート)が継ぐことになっている。
トハチェフスキー元帥は、連邦軍に復帰し、現在進められている、南部アフリカ攻略作戦に赴くことになっている。
今回は、その祝勝会も兼ねている。
アフリカの地は現在、混沌としている。
嘗て、西洋列強が、モザイクのように支配していたが、今やその宗主国が次々と倒れていた。
そして、代わりにやってきたナチスの軍団も総統の突然の死により、指揮官を喪失してしまった。
マダガスカル島を占拠していた連邦軍は、この機を逃さず、『オーバーロード作戦』を実施してアフリカ南部の資源地帯を速やかに占領することとなった。
現在、アフリカ大陸には、主要な軍隊は存在しない。
ナチスの残党や、フランス残党軍程度である。
北アフリカには、イタリアが進行しているが、その速度は遅々としていた。
連邦軍の攻略目標はアフリカ南部の資源地帯であり、北に興味はないのだった。
資源と技術、物流の支配により、今後の世界を統制していくというのが、神聖月読皇国の考え方である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます