第179話 大艦隊
179 大艦隊
ハワイの真珠湾、フィリピンのマニラ湾などからニュージーランド沖に艦隊が集結している。このニュージーランドの南島マオリ王国を名乗り、今北島のアンザック軍と戦っている。
マオリ王国は、侵略者の末裔から島を奪回するために激しい戦闘を行っているのである。
オーストラリアから、排斥された人々は、ニュージーランドへと渡らざるを得なかったが、これで戦力を纏めることが可能となり、島を支配していたマオリ王国に宣戦を布告したのである。
そして、北島を根拠地に南島と戦っていた。
武器の性能でマオリ王国が優勢だったが、北島の支配権は、かつてのアンザックの元にあった。
だが、沖合に集結した連邦軍艦隊戦艦群は圧倒的であった。
ニュージーランドのアンザックを集めたのは連邦である。
それ以前にマオリ族は国を建ててはいなかった。
連邦にとってニュージーランドはそれほど重要な地ではない。
何故なら、ここには地下資源がないからである。
これに対して、ニューカレドニアなどは、資源、そして戦略的意味において鉄壁の防衛網に組み込まれている。
「全艦に通達、実弾射撃訓練を開始する、準備用~意!」
「撃て~~~!」
沖合を埋め尽くす艦艇から、あらゆる砲が発砲を開始する。
この艦隊には、連邦所属のアジア各国の艦艇も混じっており、本当の海戦は今回が初めてなのである。
連邦の各国は、月読皇国製の艦艇を買わされて自国内の海洋を守備することになっていた。
それらの錬成の一環として、このニュージーランド北島攻撃訓練が行なわれている。
主力艦は、連邦主力艦隊の戦艦群である。
圧倒的な火力により、辺りが黒煙に包まれていく。その中でも物凄い数の曳光弾の光跡が花火のように空を登っていく。
島内では、爆発が次々と発生していた。
一応マオリ王国からの救援依頼を受けた形になってはいるが、連邦艦隊に本気度はない。
主力艦隊はこれから米国艦隊と決戦に及ばんとしていた。
その前のデモンストレーションである。
アンザック側には、艦隊を攻撃する手段はほぼないに等しい。
一方的な砲撃である。
本来の彼等であれば、島に上陸して、火炎放射器で塹壕や洞窟等を焼いて回るのだが、今回は行わない。
彼等の戦いではないからだ。
その代わり、南島の航空基地から、バンカーバスターを搭載したツポレフB1爆撃機が北島の山間地を爆撃する計画であった。これがマオリ王国への援助である。
(マオリ王国が独立を勝ち取り、全島を占領支配できれば、皇国の食肉の供給地として地位が約束されている。)
あまりの砲撃の数により、自分達の放った砲弾がどこに着弾しているかを判別することが不可能であるため、訓練としては大失敗であった。
特に、サーモバリック砲弾(FEB:燃料気化爆弾)は当たり一面を火の海にするので、訳が分からなかったのである。
訓練用に積んだ砲弾を撃ち尽くして、彼らは満足してニュージーランドを後にしたという。
ウェリントンはまさに草木一本残らぬほどに破壊されていた。
その後の航空作戦も本当に必要かどうか不明だが、バンカーバスターの投下訓練として行われた。いくつかの山に大きな開けて終了した。
この訓練による精神的衝撃によりアンザックの兵士の多くが心を折られた。
勿論、折れる心が残っていた者は、幸いであった。死体すら残さず死んでいった者たちが無数にいたのである。
連邦主力艦隊は、ニューカレドニア島のヌメア港で補給を受けた。
米国艦隊は、パナマ運河を通ることが不可能なため、ホーン岬を経由せねばならない。
そして、米国のモンタナ級戦艦は、運河を通過することがそもそもできなかった。
今は、アルゼンチン、ブエノスアイレスで補給しているという。
アルゼンチンは、中立の態度をとっているもののナチスドイツと通じている。
故に情報はすべて、連邦にも届いているのだった。
それにしても大艦隊であった。
昭和の日本が敗戦間近い頃、太平洋上には、敵の大機動部隊が好きに駆け巡り、島々を襲い、占領していったが、それに等しい、いや、それ以上の大艦隊であった。
それは、太平洋に向かう米国艦隊の数倍の規模に登る。
武装解除された日本艦を加えた連邦艦隊は圧倒的な数になっていたのである。
このような大艦隊と刺し違えることなど不可能であることは一目瞭然である。
まさに大艦隊がそこに集結していた。
昭和の日本人が抱いていた幻想が現実化できなかったように、米国艦隊がこの艦隊に一矢むくいても雀の涙ほどの痛みしか感じないのは間違いなかった。
彼等を倒すには、法王座上艦テスラ級戦艦三番艦『J・ブローニング』を一瞬で撃破し、法王を殺すしか手は無いのだ。(戦略的敗北を覆す戦術的勝利。必殺の一撃)
テスラ級戦艦(超大和級戦艦)
第1番艦 ダン・テスラ
第2番艦 ニコラ・テスラ
第3番艦 J・ブローニング(法王座上艦)
第4番艦 R・ディーゼル
第5番艦 I・シコルスキー
第6番艦 W・フォン・ブラウン
玉兎級正規空母(超大型空母)
第1番艦 玉兎
第2番艦 ゲント法王
第3番艦 M・リヒトホーフェン
第4番艦 R・リヒトホーフェン
第5番艦 T・オステルカンプ
第6番艦 M・トハチェフスキー
正規空母
加賀、土佐
航空戦艦(多目的ヘリ搭載)
伊勢、日向、扶桑、山城
エセックス級正規空母(甲板等改修済み)
エセックス、イントレピッド
その他鹵獲空母(甲板等改修済み)
エンタープライズ、レキシントン、ホーネット、ワスプ、 ヨークタウン
大日本帝国からの鹵獲艦
大和級戦艦(防空装備等改修済み)
大和、武蔵、紀伊
長門級戦艦(防空装備等改修済み)
長門、陸奥
金剛級戦艦(防空装備等改修済み)
金剛、比叡、榛名、霧島
正規空母(甲板等改修済み)
飛龍、翔鶴、瑞鶴
大型艦だけでこれだけの大艦隊が編制されていた。
巡洋艦、駆逐艦、輸送艦などを数えれば、膨大な数に登る。
そして、既にチリ沖に展開する潜水艦隊。
世界の3分の1を制覇し、資源を一人占めしている神聖皇国の力であった。
小型艦は、連邦加盟国がせっせと建造したものである。
旧型化した艦は、全て払い渡しされ輸送船の警備になどに当たっている。
各国の物資輸送の警護はこれまた、皇国支配下の警備会社により執り行われていたのである。
あらゆる利権で利益を上げつつ、世界の主要資源を手に入れて、飴と鞭で太平洋の諸国を支配する。
それが、神聖皇国の正体であった。
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