第173話 『メギド』対『ソドム』
173 『メギド』対『ソドム』
『メギド作戦』の為に、陸軍、陸軍航空隊、州兵などが大量に集められていた。
一挙に、サンフランシスコを空爆により完全破壊して、敵軍を全滅させる。
そこには、捕虜の命など無視する決定がなされていた。
サンフランシスコの基地や建物には、人間の盾が展開されていた。
しかし、そのような事情を許せば、被害が拡大する。
ロサンゼルスとサンフランシスコはすぐそこにあるのだ。
上陸した部隊は、各地に進撃を開始した。
どうやら、中国人とアラブ人がその主力であり、所謂切り取り放題を約束されているらしい。
彼等は非常に残虐で、強盗殺人強姦は朝飯前である。
酷い惨状が各地で繰り広げられる。
もはや、四の五の言っている状態は過ぎているのだ。
一刻の猶予もない。
ロサンゼルスやサンディエゴを襲われれば太平洋岸が好きに荒らされることになる。
サンフランシスコの橋頭保が強固になれば、連邦艦隊にサンディエゴ基地が襲われることは火を見るよりも明らかだった。
米国太平洋艦隊は実質的に壊滅状態であった。
ニミッツ大将も戦死し、実質的に司令部も喪失していた。
大西洋艦隊を派遣しようにも、南米大陸を回りこむ必要があり、南米諸国には、親ドイツの国が増えていた。
既に欧州戦線は、ドイツ第三帝国の支配下に置かれていた。
頼りになる人間の盾、ソビエトもほぼ崩壊していた。
もはや、本島を失った英国とアフリカにいるフランス亡命政府軍位しか敵がない状態であった。ドイツは優勢なのだ。
何としても、サンフランシスコからばい菌を繁殖させるようなことは断じて認められない。
トルーマンは密かに、マンハッタン計画の爆弾をサンフランシスコに投じようかと考えていたのだ。
だが、現実はそれを許さなかった。
そもそも、この計画は遅れに遅れていたのだ。
先ず、一番最初にウラン鉱石である。ニューヨークの倉庫に眠っている筈だったコンゴ産の鉱石が何者かに盗まれていた。
仕方なく、オーストラリア政府にウラン鉱石の提供を打診していたが、そのオーストラリア政府が、今や存在しない国になってしまった。
急遽、カナダでウラン鉱脈を探すことから始めねばならなかった。
しかし、カナダの宗主国、英国が危急存亡の秋を迎え、鉱石掘削などに関わっている余裕がなくなった。米陸軍が自前で何とか探し出して、掘削している途中なのである。
まだ、爆弾製造を行うほどに鉱石を掘れていなかった。
そして、今や、ワシントン州を占拠した、インディアン共が、越境して攻撃を仕掛けてくる始末である。
中でも、彼らの狙撃技術はぴか一で、次々と狙撃を成功させ、米軍を苦しめていた。
追いかけても、巧妙に逃げ切る技術ももっていた。
しかも、近ごろでは、日本軍の特殊部隊、ハワイではバンパイアと恐れられた、夜間狙撃部隊もやってきているようだった。
事実は少し違っていた。
先ず日本軍ではなかった。
そして、夜間狙撃用スコープはかなり小型化され、アメリカインディアンに提供されていたのである。勿論、軍事教官は存在したが、夜間狙撃を行っているのは、アメリカンインディアンである。彼らは優秀な戦士であるので、武器を与え、訓練を行えばすぐにその腕前に到達できた。
このころ狙撃用スコープは、赤外線ではなくなり、光倍増管を使用したものに代わっていた。
野外で優秀な戦士にまさに鬼に金棒状態になったのである。
インディアン達は、種族ごとにまとまることなく、白人に各個撃破されていったが、ここにきて、部族を越えた大連合が結成された。彼らの悲惨な未来を、何某という教祖が、力を込めて語ったために起きた化学変化であった。
「まだできていないのか!」
「大統領閣下、その通りです、日本にしてやられました」
トルーマンは肩を落としたのだった。
その頃、サンフランシスコの港に2隻の巡洋艦が入港した。
艦名は『インディアナポリス』と呼ばれている。
インディアナポリス1と2であった。
元は、違う名前であったが、米国の鹵獲巡洋艦の名称をそう名付けたのである。
恐らく、その名称の艦船はすでに海の藻屑となっているはずだった。
しかし、教祖は、その船を見るなり、この船の名を『インディアナポリス』と名付ける。
「特別な任務のための艦とする」
教祖(今は法王)の言うことは絶対である。そのような事について誰も文句のあるはずもなかった。
インディアナポリスはウラジオストク港から真珠湾を経由してはるばるやってきていた。
シベリアのある一角には、ある種の工場が存在し、ずっと研究が行っわれてきたのである。
ロシア領内には、ウラン鉱山が勿論あった。ニューヨークから運び込まれた物資も同様にここで処理されていたのである。
・・・・・・・・・
「『ソドム作戦』を発動せよ!」
法王が下した命令にすべての親衛隊が敬礼をし、声を挙げる。
ホールに呼応の声が響き渡る。
サンフランシスコの臨時航空基地に駐機したB1爆撃機。
B1爆撃機(ツポレフ95に似た4発爆撃機)の4機に、『真ツアーリボンバ』各1発が搭載される。
そのB1と同じ数多くのB1爆撃機が駐機していた。
ロッキー山脈の頂上部には、既にいくつもの防空レーダーが設置され、敵航空機を警戒している。
何故早くもそのようなことが可能であったのか。
それは、S51ヘリ(シコルスキー社製のヘリ)が部品を空輸したからである。
『メギド作戦』の為に大集結していた米軍。
しかし、今基地全体に空襲警報が鳴り響いている。
サンフランシスコとは約2000Kmの距離がある、それは超長距離爆撃機ツポレフB1の攻撃範囲内である。
邀撃戦闘機が舞い上がり始める。
爆撃を何としても防がねばならない。
流石に爆撃部隊には護衛戦闘機はないため、何とかできると思われた。
なんとかして、高度1万まで上がった邀撃戦闘機に思いもよらず、真っ黒な戦闘機が襲い掛かった。
ハインケルのジェット戦闘機が、いかに高性能と言えども、2000Kmも飛んできて戦闘などできるはずがない。
しかし、目の前の戦闘機が翼下のロケット弾を、無数にばらまき始める。
まずは、射程外からロケット弾により攻撃、編隊が崩れたところに、突っこんで狩りまくるという戦法である。
ロケット弾の弾頭部には、テスラ信管が備え付けられており、当たらなくても近くを通るだけで爆発する。
このロケット弾攻撃で邀撃部隊の三分の一が、何もできぬまま後退していく。
撃墜されなくても、飛び散った破片が、戦闘力を削ぐからである。
鬼神、悪魔と恐れられる、黒い死神、ハインケルF5EタイガーⅡが瞬く間に、プロペラ機を叩き落としていく。
爆撃機に近づくどころか、逃げることすらできずに火を噴いて落ちていく。
レシーバーからは、味方の泣き声や悲鳴だけが流れてくる。
「何故だ!」こんなところまで飛んでくるなんて非常識にもほどがある。
その時、隊長機が火を噴いた。
勿論、この戦闘機の航続距離では、やってきて戦闘することは不可能だった。
片道燃料ならばなんとか到達できる程度なのである。
だが、彼等精鋭中の精鋭であれば、それが可能な方法があったということである。
勿論、航続距離を延ばすため落下増槽も積んでいるが、それ以外にも別の方法があったのである。
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