第172話 『月号作戦』の狙い
172 『月号作戦』の狙い
月二号作戦が、米国ワシントン州で展開されているころのことだった。
月三号作戦が展開され始めていた。
日本の領土となっていたミクロネシアの島々、特にグアム島で戦闘が開始される。
日本軍は、兵力配備を最小限としていたが、そこに突如として、軍隊が現れ、街を占領し始めたのである。
ミクロネシア諸島群は、日本からの独立を宣言し、日本兵や一般人を追放した。
日本軍はまさかの事態に対処できずにいた。
本土が、米軍の爆撃を受けて、その対応に力を入れていたそのすきを狙われたということである。しかし、そもそもが、日本ではなかった土地である。
戦争が終われば何ら痛手ではないと判断された。
だが、その判断は大きく太平洋を揺り動かすことになる。
台湾独立。そもそも台湾には、月読教徒が多数存在していた。
台湾を防衛するために、要塞を形成していたのは、月読教の信徒たちの建設会社である。
台湾にいた軍隊の中にも独立に加担したスパイが存在したのである。
要塞にも極秘の脱出路が存在し、スパイは見事に要塞を占領。
要塞守備軍にも当然裏切りものは複数存在した。
台湾人のほとんどが、独立派へと切り崩されていたのである。
その波は結果として、沖縄をも『琉球国』として独立を宣言させた。
そもそもが、琉球王国を島津藩が占領していたのである。
独立後速やかに、連邦に加盟すれば、巨大な軍事力の傘に入り込めば、日本では口出しできないと唆されていた。
沖縄要塞には、唆された琉球派が多数詰めていた。
彼等は、本島人とは基本的に違うおいうのだと思いをもっていた。
既に、那覇港には、連邦軍艦隊の艦船が入港していた。
それは台湾でも同じことである。
沖縄を要塞化していたのは、同じ系列の企業である。
ラバウル島だけは、連合艦隊の根拠地として残っていたが、輸送が完全に止められることになる。後に、ラバウルも連邦の所属地となる運命であった。
満州国は、朝鮮半島をすでに満州国領として取り扱っていた。
こうして、日本は月号作戦と共に、立派な孤立した島国になったのである。
逆鎖国の形になってしまったのである。
同様に、スリランカ島独立、マダガスカル島独立。
連邦に加盟。
ペルシャ皇国、連邦に加盟。
エジプト、連邦に加盟。
ドミノ現象が加速する。
ワシントン州が独立宣言。
アパッチ諸族連合国が誕生する。
こうなると、国土が広いことが、このような活動に利点を与えてしまう。
サンフランシスコ防衛で陸軍主力が動いていたために隙が生まれた。
サンフランシスコ橋頭保には、ペルシャ皇国の三等市民兵到着。
ペルシャ湾の産油地区を武力で占領した新ロシア皇国の機甲部隊は、そのまま、ペルシャ皇国を名乗り、同地を支配する態勢と取った。そして、反政府勢力は、逮捕され、遠路海路で輸送され解放されたのが自由の地アメリカ、サンフランシスコという訳であった。
「武器を提供するから、戦ってこの土地を手に入れろ、間違ってもこちらに銃を向けるなよ、死ぬからな」
アラビア語、ペルシャ語でそういわれたのである。
実際に、反抗した人々は簡単にその場で射殺される。
三等市民とは、奴隷である。
反抗は許されず、人権も認められない。
戦功をあげれば、二等市民に格上げされるのだが・・・。
こうして、アラビア軍団、ペルシャ軍団が形成された。
その間も、北京軍団などの中国系軍団に、増援が送り込まれていた。
「お前達、中国人に後れを取るなよ、確保できる国家の面積が減ってしまうぞ!」
「ついに、十字軍の仇をサンフランシスコでとれるのだ、お前たちは、神子様に感謝せねばならんぞ!逆十字軍だ、征け、神の御元へ!」
こう、叱咤激励される。当然、中国人軍団も同様のことを言われている。
・・・・・・・・・・
「どうしてこうなった!」執務室で新大統領になったトルーマンは、葉巻を握り潰した。
「大統領、こうなっては仕方ありません、サンフランシスコを空爆しましょう」
補佐官が進言する。
「サンフランシスコは我が国土なんだぞ、まだ、市民も数多くいるのに」
そうなのだ、サンフランシスコに上陸した部隊の一部はすぐさま市民を拘束していった。
そして、捕虜となった彼らは、軍の施設に監禁されているのであった。
皇国親衛隊は、狡猾な集団である。
人間の盾として、市民を容赦なく使い潰すつもり満々であった。
彼等にとって、教祖を称えない邪教の人間はまったくもって生きる価値のない動物でしかなかったのだ。
選挙に悪影響があることは間違いない。しかし、これ以上、猿どもの勝手にさせる訳にはいかない。今や、黄色どころか、黒い猿(ニガー)などまで混ざっているというではないか。
人類(白人のこと)に対する冒とくである。
「許されん!断じて許されん!」
トルーマンは、大規模空襲作戦に許可を与えるサインを行ったのである。
B29 の各部隊に招集がかかり、ロッキー山脈東側、コロラド州デンバー近郊の基地に集められる。各所に臨時飛行場を造成し、対空砲を準備、制空戦闘機が配備されていく。
サンフランシスコに上陸した猿どもを人間の盾ごと焼き尽くす。
『メギド作戦』が開始されたのである。
州兵、予備役、退役兵、現役部隊ありったけの兵力も集められる。
B29の爆撃のあとは、陸軍兵力で一掃せねばならないからである。
B29を護衛するための戦闘機もありったけ集められる。
一万機以上が周辺に集められる。
しかし、この動員計画の所為で、英国軍、アイルランド方面とアイスランド方面で破綻が訪れるのである。少し後になるが。
この大規模反撃作戦はすぐに皇国情報部がつかむところとなる。
何故なら、米国軍には、複数の黒人が輜重兵などとしてこき使われていた。
彼等の中には、報酬に眼がくらむ人間が複数いたのである。
元々、奴隷として連れてこられた人間たちの末裔である。
仕方がないことだろう。
その恨みを忘れろと言うのは、無理な話である。
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