第171話 サンフランシスコ炎上
171 サンフランシスコ炎上
最期のアイオワ級に火柱が立ち昇る。
テスラ級戦艦の隙を、水雷戦隊が突入を開始する。
第一水雷戦隊は、艦砲の着弾も恐れずに突撃を試みる。
既に瀕死の戦艦の10Km手前で、回頭する水雷戦隊。
「カサートカと使う。」
「カサートカ用意!」それはロシアを救出されたコロリョフ博士が考案したとされる新型魚雷である。
『カサートカ』とはロシア語で『シャチ』を意味する。
重雷装艦キタカミからカサートカがランチャーで発射される。
それは恐るべき新型魚雷である。
ロケット推進機能を有する魚雷である。
海中での摩擦を軽減するために、魚雷弾頭部から無数の気泡を発生させながら、時速500Kmという高速で航走するというトンデモ兵器だ。
見てから、回避することはほぼ不可能である。
通常魚雷の十倍の速度で航走するのであった。
ロケット燃料は水中でも、燃焼続けることが可能である。
この技術は、宇宙空間で酸素がないのに燃焼できる技術と同じで、燃料の中に酸素を発生する物質が使われているのだった。(酸素魚雷と同じく非常に危険な兵器である)
「高速の魚雷接近、回避不可能です!」絶望的な声が発せられる。
「衝撃警報!」
ド~~~ン、ド~~~ン。
数発の魚雷が、アイオワ級戦艦の船腹で爆発する。
艦橋でも、椅子ごと蹴とばされるような衝撃である。
あっという間に、行き足が止まる。
その瞬間が最後だった。
テスラ級戦艦の主砲が全て、この戦艦に向けられていた。
各艦の発砲炎が朝の海を照らす。
テスラ級戦艦の十字砲火がアイオワ級を包む。
水柱の後は火柱が立ち昇る。
絶望的な光景であった。
最期のアイオワ級が猛烈な火炎に包まれて燃えている。
数十の米軍艦艇がまだ戦っていたが、戦艦に勝てるのは戦艦だけである。
そこからは一方的な虐殺が始まる。
ほぼ無傷なテスラ級戦艦が、次々と米艦を攻撃していく。ハンマーで蟻を叩き潰すようなものである。
そして、その隙間を埋める水雷戦隊が縦横無尽に走り回る。
脅威の魚雷が次々と米艦を水葬していった。
米軍の航空機が、頭上にやってくるが、はるか後方の空母部隊からの直掩が入る。そして、圧倒的な対空火砲。
まともに攻撃できる米軍機はなかった。
そもそも、陸軍機がほとんどでまともに攻撃できるはずもなく、陸用爆弾投下をする程度しかできなかったのだ。
ついに、サンフランシスコ沖30Kmに同盟の打撃部隊が到達する。
テスラ級戦艦6隻の主砲、航空戦艦の41㎝主砲が陸地を狙う。
艦砲射撃を出来る距離にまで侵入したのである。
サーモバリック弾頭を主にした砲撃が始まる。
陸地に次々と火のドームが花開いていく。
もはや、軍人か市民かなど何の意味もない。
圧倒的な艦砲射撃が、サンフランシスコを廃墟に変えていく。
そこに差別など存在しない、平等に死が与えられる。
主目標を捕らえた艦隊は、陸地との距離を縮めると巡洋艦も艦砲射撃に加わる。
こうして、陸地のすぐそこまで近づいて、撃ち続ける。
周囲50Kmには、建物がなくなるまで砲撃は続く。
そして、地下施設には、ハワイ島から再度現れた、ツポレフB1がバンカーバスター(グランドクロス爆弾というのが本来の名称)を投下する。
こうして、サンフランシスコ海軍基地ハンターズポイントは完全に壊滅した。
ニミッツ太平洋艦隊司令官もさすがに、地下に爆弾が浸透してくるなどとは考えていなかったため、地下司令部で圧死するという非業の死を遂げることになる。
サンフランシスコ壊滅から数日、連邦軍艦隊は、沖合を遊弋している。
もはや、太平洋上に敵はいない。陸軍爆撃機も恐れる必要もない。
空中管制機が飛びまわり、接近する航空機を発見し、空母の戦闘機が撃墜するからだ。
真珠湾から進発した上陸部隊が、サンフランシスコ到達まで、周囲を威圧するためである。
サンフランシスコに上陸される恐怖は、全米を恐怖に陥れるには十分なインパクトがあった。
続々と強襲上陸艦や輸送船が到達しつつあった。
航空戦艦搭載のS51ヘリ(シコルスキー社製ヘリ)が完全に対潜活動を行っていたため、潜水艦も手が出せない状態である。そして、米国は知らないが、ソノブイが各所に投下されており接近する潜水艦を発見しようとしていた。
橋頭保部隊が上陸を開始する。
その後は、大量の兵士が、海岸へと押し寄せる。
彼らは、そのほとんどが中国人である。
中国は、各国により分割統治されているが、反政府組織の者は殺された。そして従順な民間人は、国民となるために、この上陸作戦へと招集された。
数十万の兵士が、それほど訓練を受けずに戦場に送り込まれているのが実情だった。
米国は、ロッキー山脈で陣地を築き交戦する構えである。
泥沼の戦闘が各地で発生する。
中国人兵士の後ろには、精強なインドネシア軍兵士が督戦隊として見張っており、逃亡する兵士は銃殺されていく。
こうして月1号作戦は見事に成功した。
だが、月号作戦は1号だけではなかった。
月2号作戦がひそかに開始されていた。
それは米国在住ゲリラが武装蜂起するというものである。
ワシントン州にあるブレマートン。そこには、ピュージェット・サウンド海軍工廠という重要な海軍の基地が存在する。
このブレマートンは、バッチハーバー基地から飛来するツポレフB1に爆撃を受けていた。
そして、かねてからこの地には、神教の特殊部隊員が潜伏し、ネイティブアメリカン(インディアンの事)をゲリラ組織化し、訓練を施していた。
そもそも、この土地は彼らの地であったものを、無理やり取り上げられていたものである。
武器さえあれば、組織化さえできれば、彼らの運命は変わっていただろう。
そして、今其れが行なわれているのである。
そのゲリラが、ブレマートンを襲撃し、基地を壊滅に追い込んでいく。
これが2号作戦であった。この2号作戦の実施により、米軍は、西海岸の南北の敵に対応することを求められることになる。
ロッキー山脈で迎え撃つために陣地構築していた米軍は、ワシントン州でも同様の陣地を作らねばならなくなったのである。
そして、サンフランシスコには、広大な航空基地が造成される。
北京軍団、四川軍団、広州軍団など出身地により区分された部隊ががサンフランシスコで形成される。
これは、所謂、棄民政策である。中国本土においておけばやがてゲリラかするであろう中国人を、武力を背景に、米国戦線へと投入し始めたということである。
ロッキー山脈につくられた基地には、バンカーバスターが投下され始めると、米軍の士気は急激に低下していく。
基地の場所が発見されると、確実に投下された。
山脈に横穴を掘っていてもお構いなしで吹き飛ばすのだ。
サンフランシスコの制空戦闘機は、黒い機体のジェット戦闘機部隊が進駐してきた。
まさに、死神と同じくらいの意味をもっていた。(RAZグルッペンのこと)
ハインケルF5EタイガーⅡジェット戦闘機を越える戦闘機をぶつけねばとても倒せるものではなかった。
そして、米国には、まだ決定的なジェット戦闘機は存在しなかった。
だが、超える戦闘機をもってしても、このエース部隊には到底かなうこともなかったであろう。
数人の人間は、異常な技量を有していた。
教祖の息子は言うに及ばず、バルクホルン、ハルトマン、マルセイユ、そして航空学校の教官の息子(日本人とドイツ人のハーフ)たち、日本人では岩本徹三、西沢、笹井、坂井など(歴史的に有名な者がスカウトされて訓練を受けて居た)が所属していた。
そして、もっと恐ろしいことが発生していた。
何と、教祖の息子龍兎(リュート)と同じ背格好の息子たちが次々と現れたのだ。
その数11名、いつの間にそれだけの子供ができたのだろうか?
しかも、同様の技量をもっていたのである。
その同一性に人々は恐怖を感じたのである。
瓜二つどころではないくらいにそっくりである。
そう、まるでコピーされたかのようにそっくりなのである。
教祖曰く『彼らはPS計画の産物であって、決して私の子などではない。しかしそれを言うと私の命が危ないので言うことはできない』と後に発表されるギレーネ司教の手記、『蝉噪録』には記されていたという。すでに、このころには、精神の病に侵されていたかもしれない。
そう彼こそは、『ルナシスト』(月の光を浴びると心がおかしくなる人々、所謂『狼男』のようなものも含む)の代表者なのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます