第167話 『PC作戦』完遂

167 『PC作戦』完遂


エセックス級空母2隻を鹵獲、けん引した同盟艦隊は、パナマ運河から急いで遠ざかっていた。


PC作戦は、まだ続いているのだ。


そもそも、この作戦では、ガツーン湖(運河湖)の敵機動部隊を撃破する作戦だったため、終了しても問題はなかったはずである。

しかし、スプルーアンス機動部隊の動きにより、作戦実施は後送りになっていたのである。


PC作戦の敵機動部隊撃滅の方法が問題であった。撃滅方法が、運河湖を破壊して湖上の艦艇群を一掃するという計画であったのだ。

つまり、敵艦隊がいち早く海上に逃れたため、元の目標である運河は無事であった。

その運河破壊を実行に移す必要があったのだ。


イ6000級潜水艦が、ある海域に浮上して、玄武飛行艇に給油し、玄武が運河を攻撃する計画であった。勿論、敵機動部隊はもはや存在しないが、運河破壊はどうしても成し遂げねばならない戦略目標である。


そして、給油を終えた玄武飛行艇が、既に運河に向かっていたのである。

攻撃が成功した場合、運河周辺に存在すると非常に危険な状態に見舞われることが想像できた。(ここでも、給油の時間中だけは海面が凪ぎになる現象、所謂、親衛隊員の言う『奇跡』は起こった)


珍しくも退却する艦船(米軍艦船)にと助言したのは、その事を意識した助言である。

折角助けてやったのだから、大々的に本土で同盟艦隊の存在を宣伝欲しいという意味もあったのだろうか。


爆弾を満載した玄武は夜の海を滑走していた。

その数は20機以上である。

エンジンをガソリンエンジンからターボプロップに換装した玄武は、爆弾を4トンも搭載できた。一トン爆弾を両翼、腹の中に2発である。

腹の中の爆弾は、水上飛行機なので投下できないが、載せることはできるのだ。


赤外線スコープにより夜の中でも問題なく飛行できる。

そして、運河湖が見えてくる。

彼等は非常に狡猾であり、海面を疾走しながら近づいてきたため、米国防空隊のレーダーをくぐっていた。勿論塗装にも、レーダー吸収素材が使われていたために発見されても、小さい反応になっていたであろう。

そして、いよいよ上昇を開始する。


4トンの爆弾は非常に重く必死のエンジンが無理やりに上空へと持ち上げたのである。

それでも、彼らは海面すれすれを飛びながら接近していくのである。

一歩間違えれば、海上にぶち当たり、ひっくり返ることになるであろう。


「こちら、CBリーダー、皆御苦労、退避せよ」

海上であったが、非情な命令が下る。(CBとはキャナルバスターズの略称)

「「「「「了解」」」」」」

パイロットたちが、飛行艇の側面のドアを開けて次々と海面に身を投げる。

しかし、機は、自動的に扉を閉めて高度を上げていく。


「よし全機行くぞ、オペレーターは操作を誤るなよ!」

「了解」


何と、10機の玄武はリモート操縦である。その後続に、10機が有人で続くのだ。

これらのリモートコントロール装置は、まさしくテスラが初めて開発したものである。

リモコンの元祖はニコラ・テスラであり、もっとも得意な分野であった。

TI(テスラ・インスツルメント社)は、リモート操縦技術の最先端を行く会社であった。


落下したパイロットたちは、生きていれば、潜水艦が収容してくれるだろう。

飛行中の航空機からの降下という非常に危険な任務であったため、生死は半々といったところであろう。生き残るために十分鍛えられてはいたが・・・。


それでも、命を賭けてでも任務を遂行するという狂信的な忠誠心、鉄の意思をもってやり抜く、それが親衛隊というものなのであった。



夜でも、運河は稼働している。米軍に関連の物資を大西洋から太平洋に送り込まねばならない。


航空機の接近を知った運河防衛隊が、警報を発し、無暗にサーチライトを照らし、無暗に対空砲火を打ち上げていく。


CB部隊の主たる攻撃目標は、大西洋側のガトゥン閘門である。

またしても、湖面すれすれを飛ぶ飛行艇。

これらの訓練は充分行われていた。バイカル湖という異邦の地で。


そして、湖面では対空砲火はない。

恐るべき襲撃計画なのである。

「よし、攻撃目標を捕らえた、1番から5番まで着水して突入させよ!」

「「「「了解」」」」」


波しぶきを立てながら、5機の玄武は着水していく。

オペレーターは、自分の操る玄武の操縦席に搭載されたカメラによる画像を見ながら操縦していた。

非常に難しい作業である。

それでも、訓練が十二分に施されていた。


着水した玄武は、勢いをあまり殺さず、閘門に対して突入していく。

それらが、5機である。

登載爆弾量は20トンにも及ぶ。

恐らく、そのような巨大爆弾は存在しないが、既に、世界最悪の体当たり爆弾であることは想像できる。


リモート操縦の玄武が、閘門(2列存在する)に2手に分かれて突進していったのだ。

操縦側の玄武は、急速回頭している。とても大きな爆発が自分達をも巻き込みかねないからである。


ズドドッドドドドド~~~ン!!!


火山が噴火したような爆発が発生する。

衝撃波が凄まじく機体を揺さぶる。

辺り一面が爆炎に包まれて、あらゆるものを粉砕してまき散らす。

地形が変わるほどの爆発に閘門が耐えられるはずもない。

運河労働者も警備兵も何も関係なく吹き飛ばした。


ついには、閘門によりせき止められていた湖水が滝のように溢れ出す。


「第一段作戦は成功と認む、第二段作戦を直ちに開始する」

CBリーダーが僚機に命令を伝える。

まだ5機も特攻機が空を舞っている。

彼等は、太平洋側に向かっていくのだった。

今度は、太平洋側のペドロミゲル、ミラフローレス閘門を爆撃破壊するためである。


ペドロミゲル閘門がまたして大爆発を起こす。

そうすると、ミラフローレス閘門が押し寄せる湖水により水没し、攻撃不可能になる。


洪水が大西洋岸の街コロン市を襲う。

太平洋側での落水規模はその数十分の一ではあったが、パナマシティを襲う。


「全機、パナマシティ港湾を爆撃し帰投する」

CBリーダーは、作戦にない内容を勝手に決める。

すでに、洪水に襲われているパナマシティは恐慌状態であり、接近する爆撃機のことなど気にしている者はいない。

2機の体当たり玄武が、落下して、街を炎に包む。

4トン爆弾は、直径100m以上のクレーター作り挙げる。

そして、そもそも、失敗の時に備えて、操縦者側の10機にも、計2発の一トン爆弾がパイロンにつられていたのだ。


さらに計20トンの爆弾がパナマシティに投下された。

無駄に、高性能、そして腕も一流であるため、確実にパナマシティを効率的に破壊したのである。


そして、その爆弾は、空母から降ろされた兵士たちの頭上にも降ってきたのである。

収容されていた宿舎が爆撃を受け多くの死傷者を出すことになってしまったのであった。


まさしく、止めの一撃であった。


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