第155話 報復宣言
155 報復宣言
1943年(照和18年)4月18日から始まった第2次太平洋戦争であったが、ダッチハーバー基地から発した長距離爆撃、さらには、中国大陸からの長距離爆撃により米国は一定の成果を上げた。
大日本帝国は、反撃するためにダッチハーバー基地の攻撃を企図、連合艦隊をダッチハーバー基地に向かわせるものの、スプルーアンス機動部隊に裏をかかれ、3隻の空母一挙に失ってしまう。だがそのスプルーアンス機動部隊も同盟潜水艦隊の攻撃により2隻の空母が自沈する羽目に陥った。大規模反抗作戦を企図していた米国太平洋艦隊であったが、この事態により、戦局はまたしても膠着してしまう。
大日本帝国は大きな打撃を受けたが、同盟の主要工業都市を爆撃しようとしていた爆撃機は完全に迎撃され、B29爆撃機が多数撃墜され、支援戦闘機なく攻撃することは不可能であるという結論がなされた。
同盟に対する攻撃は、中国大陸において大きな動きを呼び起こす。
満州国陸軍の中国侵攻、そしてそれに呼応するアジア各国、モンゴル、チベットなどの軍が中国本土に同時侵攻を開始する。
中国本土に戦乱と虐殺の嵐が吹き荒れる。
中国の基地を借りていた米国爆撃機部隊は、インド方面に脱出せざるを得なかった。
こうして、米国の日本本土爆撃計画は頓挫してしまう。
米国の誤解は、大日本帝国こそが同盟の中核であり、連合艦隊を壊滅させれば太平洋の海上覇権を取り戻せると考えていたことにある。
実際には、帝国海軍の影に隠れる形で、第7艦隊が活躍していた事実を認識できていなかった。
これは、日本本土でも同様で、活躍したのは連合艦隊(ある意味正しい)で、第7艦隊の存在があまり知られていなかったのである。
月読教の教義は、やられたら3倍でやり返す。
同盟軍本体は、オーストラリア占領に力を入れていたが、ついに完全に掌握した。
ここで、教義に基づいてついて実行することが宣言される。
「千年王国の基礎たるこの聖なる土地を我々は手に入れた。これは神の御加護である。神はここに千年王国を建国することを望まれている。我が教徒たちよ!」
シドニーにある広場には、様々な人種の大衆が押し寄せていた。
彼等は、孤児から育てられた信徒たちである。様々人種の孤児が集められていた。
その方が、色々と使いやすいであろうという打算であった。
スパイ活動するには、やはりその国の人種の方がやりやすいのは当然である。
そして、様々な国には、当然孤児はいくらでも存在した。
孤児は、小さいころから、法王(件の男のこと)こそ自分の父親であり、命の救い主であると徹底的に教育(洗脳)される。
10年も経てば、立派な戦士が養成されるのである。
彼等は死をも恐れず働くだろう。
そのように、教えられたからである。
彼等は、厳しい教育を受け、訓練を受ける。
彼等の軍事訓練は、特殊部隊並みの強度である。
彼等は、エリートなのである。
学業や訓練を達成できなければ、普通の部隊に落とされる。
学業だけが抜きん出れば、さらなる高等教育に向かい、教団の技術を担う人間になる。
「我々は、今新たな嵐に遭遇している。合衆国が我が国の前に立ちはだかり、我らが同胞の工場を攻撃してきたのだ。幸いにして我が軍の神兵が悪魔の爆撃機を全て撃墜したのである。神の御技である!」
「オオオオオオオオ~~~~!」
壇上の法王が手で聴衆を押さえる。ピタリと歓声が止む。
「我々の教えは、やられたらやり返す。『目には目を、歯には歯を』私は自らが先頭に立って、米国に制裁を加えることにした!」
「猊下!それはおやめください!」
壇上に居並ぶ親衛隊の将官たちが悲痛な声を挙げ、法王の足にまとわりつく。
「どうか、おやめください、猊下の御身になにかあったら我々は生きていけません」
「我が子たちよ」法王は、いささか演技くさい大げさなそぶりで、将官たちをかき抱く。
「しかし、心配など必要があろうか!神の意思たる私には、どのような矢玉も届きはしない。絶対の神の守護が私にはあるからである。そして、神の戦士たる汝らは恐れる必要などあろうか!たとえ死んでも、神の国に召される汝らこそ神の戦士であり、それこそが救いである!」
「「「「「「オオオオオオオオ~~~~!」」」」」」」
良く聴けば、法王は死なないが、お前らは死んでも戦えと言っているのだが、教徒たちは理解しているのかは、不明だった。いつの世も死ぬのは前線の兵士であり、作戦を立てる参謀などは、生き残るものである。
「我々、神国月読教国に敵などいない。恐れるべきは自分自身の弱さである。汝らが命を賭けてこの国の為に戦わば、敵など一瞬で砕け散るであろう!彼らには、神の加護などない。只の邪教の徒であるからである。さあ、国民よ、戦え。神の為に。戦えよ、この国の為に!」
「「「「「「オオオオオオオオ~~~~!」」」」」」
「法王猊下ばんざ~い!」
「「「「「法王猊下ばんざ~い!」」」」」」」
「命を棄てて任務を全うします!」
「「「「「「「「「命を棄てて任務を全うします!」」」」」」」」」
集団の異常心理を利用したこの集会では常に、神国宣伝省の人間が、入り込み、人々を誘導している。(大声で唱和する人間たちなど)
「邪悪なる十字教徒を騙る邪教徒どもを殲滅せよ!」
「「「「「「「オオオオオオオオ~~~~!」」」」」」」」
「法王猊下ばんざ~い!」
「「「「「法王猊下ばんざ~い!」」」」」」」
絶叫が会場を満たす。
1943年12月8日、オーストラリア全土を掌握した神聖月読皇国が米合衆国に対し報復を宣言したのである。
南半球にあるオーストラリア改め神聖月読皇国では夏真っ盛りであった。
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