第145話 平和国家
145 平和国家
昭和の世界では、日本は、米英蘭豪など世界列強に宣戦布告した。
それ以前に、中国戦線(支那事変)が泥沼の様相であった。
その中で、兵力の招集が大きな問題になっていた。
この照和の世界には、中国戦線は未だ開かれていなかった。
さらには、ソビエトもなく、日本は平和であったのだ。
かの法王には、神教の信者が億単位で存在した。
そして、その参加の同盟の兵力はその気になれば、数千万人をも動員できるほどの人口を抱えていた。
神教の親衛隊(月光の旅団)は、数万の単位で存在したが、同盟軍の兵士はそれほどはいなかった。
今、インドネシア、ベトナム方面で徴兵が行なわれている。
豪州への戦力投入が決定されてからである。
神教親衛隊の教導隊が、現地に入り兵士を徹底的に鍛えていく。
神の千年王国を豪州に切り開き、太平洋に平和国家の連邦を形成し、自助・互助で成長するためである。
そのために、今は先住民のアボリジニ、ニューギニア人部隊が戦っている。
平和の礎を築くためである。
彼等の戦い方はゲリラ戦である。
数の問題でどうしてもそのような戦い方になる。
だが、あと半年もすれば、インドネシア方面から万単位の師団が次々と上陸してくるであろう。そして、真珠湾の同盟艦隊も駆けつけてくる。
オーストラリア政府は一方的な戦線布告で混乱の渦中であった。
何故、米国の奇襲爆撃が、豪州への戦線布告になるのか。
オーストラリア外務省は、満州政府へと連絡を取ったが、
「戦線布告したのは、同盟国としての立場である。我が国は同盟の決定に従っているに過ぎない。詳しくは、ハワイ王国へと問い合わせてほしい」と回答される羽目に陥る。
ハワイ王国では、
「ハワイ王国として戦線布告したものではなく同盟国家として宣戦布告したのである、決定は月読神教の法王が決定したものであり我が国は、同盟に従っているのである」
「法王とは誰ですか」
「我が国の摂政ではありますが、現在、当地にはおりません、法王庁は、ウラジオストクにございますので、そちらへお問い合わせください」
法王庁
「法王は大変ご立腹なさっています。米国の汚い奇襲攻撃は、神教の教えに反しています。米国の手先のオーストラリアとお話する気はないとおっしゃっております」
「手先ではありません。日本とも講和条約を結んでいます」
「法王は日本とも縁を切られました、日本は、法王を裏切ったのです、いずれ報いを受けることでしょう」
要領を得ない会話が延々と続く。
簡単に言えば、彼等はヤル気だということであり、オーストラリアを本気で占領支配する気だけはあるということである。
日本の工業地帯が爆撃を受けて快哉を叫んだオーストラリア政府は、窮地に立たされていた。
「とにかく日本に調停を頼みこむしかない。日本へ飛べ」
首相が外務大臣に命令する。
だが、ことはそう簡単ではない。
ポートダーウィン方面は激戦地であり、一旦、別方面に飛ばねばならない。
そして、次に行きつく場所も、ニューギニア方面であり、ここは、まさに神教の精鋭が支配する島となっていた。
そして、インドネシアの島々も、豪州への戦争準備に入っていた。
西に向かってもハワイが神教の聖地となっている。
オーストラリアはすでに固められているのだ。
そう、後は大量の占領部隊を送りこみさえすれ、占領できる。
国土が広大であるため、兵数こそ多くいるが、今この問題もクリアされていた。
日本では不可能であった大量の兵員を近場から大量に徴発し、送りこむことが可能であった。
米国への緊急通信だったが、流石に、ダッチハーバーにいる米国艦隊をすぐさま、ハワイ攻撃させられるわけではなかった。
攻撃してもそう簡単には、陥落させることは不可能である。できるならば、奇襲攻撃よりハワイ奪還を先にしている訳である。
今やオアフ島も要塞化され、占領するためには、万単位の死者がでることは明らかだった。
それどころか、ハワイ島までもが巨大航空基地、要塞として立ちふさがっていた。
ハワイ王国復活時、その催しとして、米国兵を大量に処刑している。
彼等は、オアフの山中に逃れて抵抗を続けていた兵士たちであった。
彼等は半死半生でとらえられ、式典で処刑された。
処刑を執行したのは、ハワイ人達である。
故に、彼ら(ハワイ人)は決して、米国に負けるわけにはいかなくなっていた。
負ければ今度は自分たちが処刑されるからである。
彼等は、死ぬまで戦わざるを得ない。
そのように仕組まれていたのである。
日本に豪州からの休戦の斡旋が届いた。
しかし、米軍の本土爆撃でかなりの衝撃を受けていた。
ことのほか、陛下の精神状態が悪い。
「時間稼ぎにしか過ぎないでしょう」
「空母ができれば戦争は再開される」
「彼等が約束を守ることはありません。(彼らが約束を重んじるのは、相手が人間の時だけなのです)」
ある男が言い放った言葉が思い出される。
予備役に編入され退役し、出奔した元中将である。
不敬罪により、手配されているが、日本を脱出すれば、逮捕などできるものではない。
その出奔により、多くの国民が日本から出国していた。
企業群も日本から離れていった。
アジア各国も日本を相手にしなくなった。
彼等の動きは当然だ。
日本が自分達を独立できるまで守ってくれると信じていたのだ。それが、自分の都合のためだけに大局を見ずにわが身可愛さに終戦した国家など誰が相手にするだろうか。
「大本営会議を行う。」
天皇が侍従長に命じる。
「は、では陸海軍を招集します」
「うむ」
それにしても、講和条約まで結んでおきながら、だまし討ちとは非道な輩である。
今頃にして知っても遅いのであるが、日本は少なくともこの1年以上を平和に過ごしてこられたのである。
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