第138話 バルバロッサ作戦

138 バルバロッサ作戦


講和条約を結ぶ国々が存在する一方で、西欧では新たな戦争が開始される。

ドイツ軍は破竹の勢いでフランスを占領し、ドーバー海峡をはさんで英国軍と対峙していた。

の世界では、ドイツ軍の航空機は足が短く、英国上空で航空戦を展開することは難しかった。しかし、の世界では、零戦が導入されていたことで様相が変化していた。

『ヌル・イエーガー』と呼ばれるこの戦闘機は非常に長い足をもっており、ドイツ軍の爆撃機を護衛し、戦闘をこなしフランスの基地に帰還することができた。


このヌル・イエーガーを導入させた『モルトケの再来』と呼ばれたエルンスト・ウーデッドは、ヒトラー総統の覚えも大変にめでたい。

さらには、ダンケルクでは、英仏軍兵士30万人を撃滅させることに成功したことで、空軍というよりは参謀本部で幅を利かせるようなっていた。


『アシカ作戦』は見事に成功し、ドイツ軍は英国本土への橋頭保を確保、英国本土で英国対独軍の激しい戦闘が繰り広げられていた。


この英国の窮地もあり、米国はもっともはやく英国を救援せねばならなかった。

その意味でも、日本が簡単に講和を結んだことは、『』を見た思いであった。

だいたい、1000万ドル賠償金など、支払うつもりなどなかった。

ドイツを叩いた後は、サルどもを根絶やしにしてくれるわ!

ローズベルト大統領は、神に誓ったのだ。


そんな時節柄、なぜかヒトラーは急に、ソビエトを攻撃することをおもいついたのだ。

不可侵条約を結んでいるのに、なぜそのような行動が必要になるのだろうか?


ヒトラーの頭の中までは分からないが、すでに英国は虫の息であろうと考えたのかもしれない。

そこで、劣等民族のスラブ人を殲滅することを思いついたのかもしれない。

それとも、同盟国たる日本がオーストラリアと勝手に講和したことに触発されたのか。


1941年6月22日ドイツ軍、バルバロッサ作戦発動。

ドイツ機甲師団がソ連領に一気に侵攻、独ソ戦が開始される。

その際『モルトケ』はこういったのである。

ウクライナ人などは有効に使うべきでしょう。劣等民族ではありますが、良い劣等民族と悪い劣等民族を区別することは重要です。彼らを悪い劣等民族の殲滅に利用するのです。


「ウーデッド、君がそのように優れた人間であることを誇りに思う」ヒトラーがウーデッドをほめたたえたのである。


ウーデッドが予言した通り、ウクライナ人はドイツ軍を歓迎した。

ヒトラーはウーデッドの進言を受け入れて、彼等を優良な劣等民族として配下に加えていった。ソビエト軍は、冬戦争でも示された通り、粛清過多のため、上級将校などが全く足りていなかった。そのため有効な防御作戦を遂行することができず、劣勢を強いられる。


ドイツ軍は、ウクライナ地方というソビエトの穀倉地帯を完全に奪取し、ソビエトに対し優勢を決定づける。

我々日本人には見分けがつかない、ウクライナ人とロシア人の因縁は非常に深い溝となって横たわっていた。

敵の敵は味方の理論が成り立ったのである。


ドイツは、穀倉地帯の奪取による兵糧攻めと、厳冬おいても戦闘を継続できる優れた兵士を同時に手に入れることに成功したのである。


「総統閣下、ソビエトには、もう一つ切っても切れない宿縁の敵が存在します。私が、一筆認めれば、彼らも確実に呼応して、シベリア平原で戦闘を開始することでしょう」これは、彼が、新ロシアに働きかけることを意味した。そう、独ソ戦を待ち望んでいる復讐の将軍が、新ロシアに存在したのである。


「ウーデッド、君は本当にモルトケの再来である。名誉勲章を授けよう」


こうして、ウーデッドは筆を執る。

相手は、咲夜玄兎予備役中将(ロシア伯爵でもある、後に退役する)である。


ついに、時が来たのである。

ロシア皇国の復讐鬼が、ついに立つときが。

・トハチェフスキー大将である。


ロシア皇国の宮殿で、命令が伝えられる。

「トハチェフスキー大将に命じる。スターリンを討て!」

「は!」背中から恐ろしいほどオーラが迸る。

「赤軍兵士一人を残らず皆殺しにしてご覧に入れます」

既に、命令が伝わっていなかった。

顔をあげたトハチェフスキーの両目はギラギラと光っていた。

明らかに狂気に取り憑かれている表情だった。


アレクセイ王は恐怖のあまり、トハチェフスキーを直視できなかった。

「トハチェフスキー、ここで殺気を振りまいても意味はない、く戦場へといけ」ロシア伯爵が、その場を仕切った。

「御意!」トハチェフスキーがもう一度頭を下げた。


こうして、ロシア・ソビエト休戦は終了した。


ロシア皇国は、日本の工場としてその生産力を高めてきた。

そして今、その実力を自らの力として発揮せんと動き始める。


幸いにも、第7艦隊は日本帝国から除籍されていたので、飛行艇『玄武』300機以上が余ロシアに戻ってきていた。


それらは、航空支援を行うためにバイカル湖へと進出する。

玄武の性能をもってすれば、バイカル湖から発進してソビエトの主要都市オムスク(ソビエトの中央アジアでの主要都市)を爆撃して帰還することができた。

バイカル湖周辺のイルクーツクは基地化され滑走路が次々と作られていく。

満州では、最新鋭爆撃機が、すでに開発されていた。

4発重爆撃機『朱雀』である。

玄武の陸上機版であったのだが、エンジンそのものが変わったのである。


ついに、ターボプロップエンジンの量産が開始された。

そのため、朱雀は設計変更を余儀なくされ、爆弾を3トンも積載し飛ぶことになったのである。

燃料も、ガソリンからケロシンへと変わった。

ガソリンの少ない日本では喜ばれたであろうが、ガソリンがいくらでも使える第7艦隊ではそれほど、ありがたがられることはなかった。


戦車もディーゼルエンジンなのでガソリンは使われることは無かった。

その戦車も、90式戦車から、新型戦車へと切り変わっていた。

88mmライフル砲から120mm滑空砲へと武装が換装され、複合装甲を採用した大型戦車になっていた。その戦車は『白虎』(ビエーリ・ティーグ)と命名された。


ロケット技術の進化が、大きく時代を変化させていく。

ロシア皇国の空軍は、PMCに任されている。(雇われている)

ロシアの弱点は兵士の数の少なさである。(ソビエトでは兵士は畑でとれるらしいが、厳しいシベリアでは、畑で兵士は取れなかったのだ)

航空部門まで回らなかったのである。


というか、時代の最先端の技術をPMC側が手放さなかったのが現実である。

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