第134話 布哇《ハワイ》解放

134 布哇ハワイ解放


ロケットが激しい炎を噴出して、空を駆け登っていく。

そして、ミッドウェー泊地から飛来した水上爆撃機『玄武』200機が、編隊を組んで空中で待機している。


空母の飛行甲板から、艦上戦闘機『紫電改』が次々と発艦していく。

既に数を勘定することを断念せざるえないほどの航空機が、大空を埋め尽くす勢いだった。


彼等は、ロケット着弾後の敵地を攻撃する。

その後に、戦艦部隊による艦砲射撃、そして、強襲揚陸艦からの上陸作戦へと進んでいく。


ニミッツ大将は、レイトンの進言により、すでにオアフ島から遁走していた。

戦力もないのに戦っても無駄である。

この数か月間はまったく何もさせてもらえなかったのである。


基地の修理すら、物資不足が深刻で不可能だった。

敵の通商破壊作戦は完璧に機能した。

あらゆる輸送船が被害を受けた。

潜水艦輸送のみが頼りの綱だった。


陸軍は発狂し、住民を惨殺していた。

このような状態でどのように防衛できるというのか。


ニミッツは来た時と同様潜水艦の人となった。


その潜水艦ですら近ごろは危険が増していた。

ミッドウェーから発進した玄武は、その飛行距離を生かして、ハワイ東方沖でも潜水艦狩りを始めていた。


陸軍兵は狂ったように、銃を空へ向けて撃った。

重機関銃や対空砲はすでに、破壊されるか、弾切れだった。

彼等は、ライフルで玄武を撃つ。


しかし、今日はいつもと全く違った。

戦闘機が、こちらに向かってすっ飛んでくるのが見えた。

パパパ!翼内機銃が発砲したのが見える。

兵士は、上半身を吹き飛ばされて斃れた。


米国陸軍の最悪の一日は始まった。

4000名にまで目減りした兵でオアフ島の全域を守るなど不可能なことだった。

しかも、航空援護すらないのだ。

上がれる戦闘機はすべて修理して、いままで運用してきたが、玄武は固くて撃墜できないことがほとんどであった。

それらの戦闘は連日のことであり、ついには、修理用部品も底をついた。


ロケット弾(V2)により基地のあらゆる場所が吹き飛ばされた。

その後、無数の航空機が空を埋め尽くしていく。

これはいつもと違う!


そして、今、基地内の人間は、軍属も含めて発見されれば、機銃の嵐の洗礼受けた。


戦闘機は昼すぎには一度姿を隠したが、その頃には、沖合に戦艦が

ずらりとその姿を現した。

猛烈な艦砲射撃が場所を限らず始まった。

ワイキキビーチは上陸地点の一つであるため、街すらも吹き飛ばした。


陸軍兵は1000名以上が戦死していた。

山岳への撤退しかないと判断した上層部であったが、遅すぎた。

夜間に移動を開始した部隊が、次々とバンパイアに狙撃されていく。

迫撃砲が撃ち込まれて部隊は、支離滅裂、四分五裂の状態に追い込まれていく。


日系人ゲリラはすでにかなり訓練を受けて居た。

オアフ島を開放するのだ!日系人はすでに解放者として戦っていた。

『日月の神の為に!』

極限状態がそうさせたのか、彼らの精神構造もかなり歪んでしまっていた。

山岳部へとのがれた米軍兵士はその後、日系人ゲリラの執拗な追跡と攻撃を受けることになる。


関東軍の機甲師団は翌日の第一陣で強行上陸を行っていた。

強襲揚陸艦から発したLCACには、戦車も搭載されており、ワイキキビーチへと上陸し、橋頭保を確保する。


戦闘は散発的にしか発生しなかった。

激戦を行うとばかり思っていた彼らは予想外であったようだ。

戦う相手はすでに、山岳部への撤退を行っており、まともに戦えるものはいなかったのだ。


6月6日

オアフ島は占領された。

真珠湾基地に、旭日旗が翻った。


関東軍の精鋭部隊は、陣地の構築を開始、PMCニューギニア師団の精鋭たちは、山岳部に逃れた米国陸軍の掃討作戦へと向かう。


オアフ島を占領した日本軍は、翌日6月7日にマウイ島、6月9日ハワイ島を占領下に置いた。

こうして、難航必至と思われた大事業は案外あっけなく、終了したのである。

ハワイ占領作戦の成功は、ハワイの解放を意味する。


ミッドウェーから、玄武を陸上型爆撃機に改良した『朱雀』爆撃機が複数進駐してくる。

基地の修理が完了するまで、連合艦隊はハワイ諸島周辺に置かれることになった。


多くの水上爆撃機『玄武』はニューギニア方面へと転属させられることなった。

豪州の北部地区爆撃任務に就くためである。


ハワイにいた白人はすべて収容所に入れられる。

日系人にしても、米国の協力者でないかを厳しく調べられる。

一方、ハワイ王国が復権される。

ハワイ王は、王族の血を引く、幼い女の子だった。

ハワイ王は、ハワイ王国復権を国際連盟で表明する。

勿論、代理のハワイ人が出てのことである。


そもそも、ハワイは独立国家であったのだ。

満州国のような胡散臭いところはまったくない。

正真正銘の従来の国家である。

それを米国海兵隊が無理やりに占領したのである。

満州では、列車爆破事件程度で調査された。

しかし、ハワイの米国占領のような明らかな侵略行為は非難されることもなかった。

ハワイは、このような国際政治の在り方を激しく非難したのである。


そして国家として直ちに認めるように意見を述べたのである。


日本、新ロシア、タイ、アジア各国の独立国家が承認の意向を表明した。

国際連盟は非常に、厳しい交渉の場所となっていた。

植民地から分離独立した国家群が、連盟で独立宣言を次々と表明していたのである。

この時点では、大東亜共栄圏は進んでいたということになるだろう。

帝国は、占領した地域の国はすぐに独立させていた。

帝国は、資源を要しているのであって、土地をもとめているのではなかった。


なぜそうするのか。軍の戦闘能力の維持のためであった。

占領政策に兵をばら撒けばすぐに、兵力の確保に支障が出る。

それを防ぐ意味でも、親日本の国家を樹立させておけば満足であったのだ。


だが、このような考え方は、結局戦争の利を全く生かし切れていないのと同じことでもある。


膨大な戦費をどのように捻出するのか、なぜ戦争を行っているのか?

様々な問題に答えが必要になるわけだが、このような中途半端な行いでは、国民を納得させることができない。(占領して搾取を行い、帳尻を合わせるのが帝国主義である、日本は帝国である)


戦争とは外交手段であって、外交とは自らの利益のために行われるのだ。


『欲しがりません、勝つまでは』の国民のスローガンである。

国民は我慢している。

このにおいて、戦局は有利に進んでいる。

我慢している国民が欲しがったとしても、罰は当たるまい。


そのような状況が国内で進行している。

だが、このような政治状況を想定し、解決策をもっている人間がどれだけいるのか。

帝国の場当たり的な戦争はまだ終わっていないのである。





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