第133話 ハワイ占領作戦
133 ハワイ占領作戦
米国のミッドウェー島攻撃作戦は、一つの転換点となった。
この作戦の失敗により、米軍空母は、太平洋上に存在せず、また有力な打撃艦隊も存在しないという、真空状態が作り上げられたのである。
連合艦隊司令部では、直ちに、ハワイ島占領作戦が検討され始めた。
だが、第7艦隊では、検討の段階はすでに過ぎており、関東軍から抽出された精鋭部隊、ニューギニアに駐屯している陸軍海兵師団およびPMC八咫烏師団のニューギニア師団などをハワイへ上陸させるための準備が急速に進んでいた。
そもそも、ミッドウェー海戦に際し、関東軍の精鋭師団は、沖縄やサイパン、グアム迄進出し、上陸作戦にむけた訓練を盛んに行っていたのである。
日本本土においても、訓練済みの日月神教義勇兵が数万の単位で、仙台港に集結していた。
兵力の集結が行なわれている港湾には、輸送船や強襲上陸用艦船が続々と集まっていた。
上陸兵力は、15万人となる。
「作戦はまだ構築段階です」連合艦隊の参謀宇垣纒が言っているが、第7艦隊の司令官は、柳のようにそれを受け流していた。
「君たちは、考えるのがすきなのだろうが、攻勢は今を置いてないことは明らかだ。南雲機動部隊を直ちに呼び戻し、一兵でも多く上陸兵を輸送するように言ってはどうなのか」
「そのようなことが、軍で可能だとお考えなのですか」と宇垣。
「可能だ、現場において臨機応変の対応が必要なのだ。そもそも、ミッドウェー海戦前に、山本長官には、この計画は話していた。」と第7艦隊司令官。
「山本長官!本当なのですか?」
「確かに聞いていたが、認めた覚えはないぞ」
「じゃあ、今すぐ認めていただきたい」と第7艦隊司令官。
「本当にそんなことが可能なのか」と山本長官。
「閣下、現下の情勢でしか、ハワイを占領できません。敵陸軍は5000程度です」
「しかし」
「しかしもへちまもないでしょう、ここで手を打たねばいままでの勝ちが無に帰するというものです、何のために陸軍を爆撃し、特殊部隊を潜入させ、住民の不満を煽っているとお思いか、今こそすべてを賭ける時でしょう」賭け事が大好きな長官を煽っているのである。
「中将の発言は、少し行き過ぎではないですか」と宇垣。
「黙れ!小童!貴様らがやらんのなら、私の艦隊だけで行う。いいですか、その後どうなっても知りませんぞ」怒りを爆発させた第7艦隊司令官。
彼の制服は一人だけ違った。ファシスト党の影響を受けて居るため、黒を基調とした軍服であった。誰も、口にしないが、軍規違反である。
「まあ待て、咲夜。我々もやらんとは言っておらん。作戦と立ててといっているのだ」
山本もこの男が怒りだせば止められるものではない。
「悠長なことを言っている場合は終わりました。すでに、石原閣下も手を貸してくださっている。乃木の海兵団も手を貸してくれています。ハワイを落とさねば、我々は絶対に勝つことはできません。ハワイを落とし、豪州を孤立させる。そうすれば、米国は太平洋の足掛かりをすべて失うのです。そのことは、何度も我等だけで話し合ったでしょう」
秘密結社(兎の穴)の中では、半数は咲夜派である。
山本は穏健派。
石原は、独自の思想をもっている。
そして、乃木兄弟は、咲夜派である。
咲夜が言えばおおむねその流れになってしまう。
「それに、南雲には、すでに電文を送っています。すぐに台湾方面に戻ってくるでしょう」
命令でもない命令で人が動いていた。
そして、一つだけ真実が存在する。
連合艦隊が無くてもそれは本当に実践可能であるということ。
強襲揚陸艦部隊は、すべて第7艦隊旗下である。
軍が使っている輸送船もその半数は、この男の会社の持ち船である。
この男がへそを曲げれば、全て止まってしまうというのはあながち嘘ではなかった。
陸軍の一部が賛同しているように思えるが、それは間違いである。
彼等は早く太平洋で決着をつけて、自分たちの戦争を開始したいと考えていた。
特に関東軍は中国侵略を想定していた。
最新鋭の機甲師団がどの程度の戦闘をこなせるのか。
その試金石が、ハワイ占領作戦となるのだ。そういう意味で、陸軍、特に関東軍はヤル気を見せていた。
かくしてなし崩し的にハワイ占領作戦が開始されることに決定する。
1942年(照和17年)6月5日払暁。
大船団がオアフ島に向かっていた。
大日本帝国連合艦隊と連合艦隊所属第7艦隊旗下の上陸船団。
強襲揚陸艦は、空母のような形態に見える。
後部ハッチから、上陸用のLCAC(ホバークラフト)を輩出し、飛行甲板には、シコルスキーアビアーツの戦闘ヘリが配置されていた。
すでに、ガソリンエンジンの時代は終了し、ターボシャフトエンジンが動力となっている。
第7艦隊は、このころ、新造戦艦と空母が次々と合流していた。
テスラ級戦艦の3,4番艦、加えて玉兎級空母3、4番艦である。
後続には、空母にしか見えない強襲揚陸艦が長い隊列を組んでいる。
この上陸作戦には、国内に存在する数多くの輸送艦も加わり、関東軍の機甲師団などを運んでいる。
開戦初期に鹵獲された米国空母エンタープライズ、レキシントンも防空空母として第7艦隊に参加している。
それを迎え撃つ米国艦隊は、戦艦ワシントン一隻と十数隻の駆逐、巡洋艦程度である。
情報将校のレイトン大佐が早くもこの作戦をキャッチしていたが、彼らは何もできなかったのだ。すでにオアフ島内はかなり混乱していた。
市民たちは、お互いが疑心暗鬼になり、同色の人間しか信用しなかった。
日本人移民、ハワイ島原住民、米国軍人、米国人、中国系労働者。
様々な人々がいたが、食料危機は深刻で、精神をやられた陸軍兵士が、日系人を襲撃したりしていたのだ。
しかし、彼等には、日系以外のアジア人も日本人と変わりなく見え、彼らをも襲っていた。
一方、そんな彼らも、狙撃され、暗殺される事件が多発していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「発射!」
「発射!」
ロケット戦艦の後部から、真っ赤な炎を噴出しながら、V2ロケットが空へと舞あがっていく。
ハワイ占領作戦の幕は、このロケット発射により幕を開けたのである。
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