第126話 ミッドウェー海戦
126 ミッドウェー海戦
歴史的事実に基づけば、空母に搭載されるB25が示す事実とは、日本本土空襲作戦である。
だが、現下の状況から考えればそれは不可能に近い。
真珠湾の米国艦隊は完全に壊滅し、太平洋の制海権は日本に握られている局限状況である。
目標は日本本土ではないはずだ。
米国の目標は、真珠湾基地の復興であるはずだ。
そして、それを確実に邪魔している者は、ミッドウェーから飛来する水上爆撃機である。(K作戦)
彼等にすれば、ミッドウェーに打撃を与えて、勝利が欲しいところである。
彼等は負けすぎているのだ。
為政者は、勝利を欲する。
そのための作戦なのは明らかだった。
ミッドウェーを爆撃して得るものなど特にない。
水上爆撃機を何機か破壊して、それで終わる。
昭和であれば、日本軍の被害甚大。となるはずだったが、残念ながら照和ではそうはならない。
この水上爆撃機『玄武』は、次々と各地の工場で生産されている。
ロシア、満州に生産工場が存在するからだ。
日本国内の工場がもっとも生産数が少ないくらいだ。今、川西では強風や紫電改の製造で手一杯なのである。
「そもそも、彼らがミッドウェーを爆撃して、その後どうなるのでしょうか」参謀が問うてくる。
「さあな、どこかで不時着水するのではないか」
なんでも大量生産できる米国ならではの攻撃方法だ。
本当は、オートパイロットにして、パラシュート降下する予定である。
その降下予定地点には、潜水艦が派遣されているのだ。
一方の第13任務部隊はやはり予想通り、潜水艦につけられていた。
帝国海軍の潜水艦では、暗号通信を夜に浮上してキャッチするのだが、今回の通信には作戦予測が神の名前入りで入れられていた。『空母機動部隊を発見した時は、尾行して行方を知らせよ。』
水中20Knの潜水艦を振り払うことはできない。
30Knの艦船でも常に30Knを出している訳ではない。燃料を余計に消費するからだ。
それに、ミッドウェーと当たりはつけているため、各部隊はその行路上へと移動している。
決して見逃すことは無いだろう。
潜水艦も次々と量産されて、出港していたのである。
彼等は、教祖直属の親衛隊である。
軍服には黒が多めに使われている。
これは、ファシスト党の黒シャツ隊などから影響を受けているのだという。
形式上帝国連合艦隊第7艦隊所属潜水艦隊ということになっている。
すでに、第7艦隊だけは別の国の軍隊のようである。
実際にそのようなものだった。
帝国将官も乗っていたが、かなり信者の影響を受けていた。
「どうも嫌な予感しかせん」フレッチャーは何度もパイプにたばこを詰めては火をつける。
「閣下、我々は、1000Kmも離れた場所から彼らを、飛ばすだけです」
「敵の水爆はミッドウェーとオアフ間を往復できるというぞ、1000㎞など簡単に飛ぶのではないか?」
「ですから北方から仕掛けるのです」
今彼らは、北へと進んでいる。
それでも、燃料の関係からそれほど北へ回り込むことはできない。
彼等は、その後サンフランシスコに戻るしかないのだ。
真珠湾に戻っても、燃料タンクは完全に破壊されていた。
ようやく湾内への侵入を阻害していた原因を取り除いたところで、復旧などあとどれくらい時間がかかるかわからないほどだった。
彼等が行って給油をしてもらえば、残っている燃料を一切合切供出してもらわねばならないのだ。
燃料の輸送艦は足が遅い。
必ずといってよいほど、敵潜水艦の雷撃を受けて、撃沈されるか、本土に帰港せざるを得ない状況に追い込まれていた。
今、オアフ島ではあらゆるものが不足しており、政情は極めて不穏であり、敵のスパイが暗躍しているとの情報もあった。
・・・・・・・・・・
「B25の飛行距離からすると、ミッドウェーと相当離れた場所から発進してくるに違いない。今彼らはミッドウェーの北東にいる。回り込んで、北か北西から攻撃機を放つはずだ」
「は!」参謀は答える。
「潜水艦隊に打電、B25発進後に敵に打撃を与えて速度を鈍らせよ」
「了解しました、通信士官、打電せよ」
「了解、打電します」
第7艦隊は、ミッドウェー島の南100Km程度の場所にいた。
そもそも、敵の爆撃を遮るつもりはない。
ミッドウェー島の基地には、レーダーサイトが存在し、周囲約150Kmをカバーできる。
発見してからでも十分迎撃可能なのである。
艦隊は、それを確認してからでも、北東の方向に進めば、敵艦隊を捕捉殲滅することが可能なのは明らかだった。
敵艦隊には、戦艦(こちらにはテスラ級2隻が存在し、ほかのロケット戦艦は速度が遅いので沖縄に帰投している)がいないのだ。
そして搭載機数でも圧倒している。
それに、いざとなれば、居場所を知らせる通信すらもしてくる味方潜水艦がいるのだ。
戦闘開始前から全てが暴かれていた。
空母が最大船速を出そうと猛烈にスクリューを回し始める。
潜水艦長はそれを合図だと感じた。
まだ夜明けの2時間前である。
ミッドウェー島北方1000Kmである。
「流石は猊下!その予見は神の如し!」艦長は涙を流して、拝跪した。
「戦闘用意!テスラ式酸素魚雷を使う全弾装填」
「テ式魚雷全弾装填完了」
「一斉発射」
「1番から6番全弾発射」仕官によりすべてのスイッチが入れられる。
圧縮空気により魚雷が押し出される。
そして、テ式魚雷が自走を開始したのであった。
航跡をほとんど残さない酸素魚雷である。
空母ホーネットが最大船速で走り回っており、発射音がとらえられることは無かった。
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