第124話 コレヒドール島の最後

124 コレヒドール島の最後


那覇港で燃料弾薬の補給を終えた連合艦隊第7艦隊が抜錨する。

目指すは、フィリピン、マニラ湾の入り口に存在するコレヒドール島要塞である。


巨大戦艦、巨大空母の周囲に駆逐艦や巡洋艦が甲斐甲斐しく行き来する。

空母は長大和型戦艦の船底を採用しているため、非常に強固である。

帝国の空母の装甲は非常に薄いが、この艦は違う。


但し、甲板は違う、装甲空母ではないため、直撃弾を食らえばやはりただでは済まない。

しかし、2段の航空機区画の底には、厚い鉄板が使われており、機関部と居住区を守ってはいる。

そして、甲板の周囲には、無数の機銃と機関砲が積めるだけ積まれており、艦橋部分には5インチ連装砲が3基積まれている。


戦艦は、長大であった。

この時代に300mもある戦艦はいない。

空母随伴用に速度を稼ぐために長くされていた。

巨大水槽で実験を繰り返した結果の形であった。

46糎三連装砲が前後2基で12門である。

その他にも、15糎3連装砲が前後2門と往年の大和と同じである。


しかし舷側には、5インチ両用砲がずらりと並び、無数の機銃と機関砲が山と積まれている。

長大和型戦艦正式名称は、テスラ級戦艦1番艦『ニコラ・テスラ』2番艦『ダン・テスラ』である。何よりも特徴的なのは、船首には30m近い角が生えている点である。

これで、何と330mとなり、ツクヨミタワーと同じ長さになるのである。


巨大空母もほぼその長さをもっている。

此方の艦は、原子力機関はもっていないが、ほぼ某米国の原子力空母同じような形をしていた。

常態で140機の艦載機を運用している。

玉兎級正規空母1番艦『玉龍』2番艦『玄龍』である。

2基の油圧カタパルトを装備し舷側には4機のエレベーターをもっている。


帝国の技術力ではなく、財閥の技術力で最先端のレーダーや通信装備を搭載している。

台湾には、『玄武』の部隊がすでに到着して、彼らを待っている。

100機の玄武が新たに配属された。

K作戦でミッドウェー基地に50機が、ニューギニア基地に50機が配置されており、こちらはポートダーウィン基地爆撃任務に就いている。


戦艦2、空母4、護衛空母2その他巡洋艦、駆逐艦多数の大機動部隊が、東シナ海を征く。

もはや敵潜水艦は存在しない。

圧倒的な大艦隊が、波を切り裂いて進んでいく。

米国の航空隊も豪州の航空隊も艦隊も存在しない。


出てくれば、そのまま壊滅させることができるだけの艦隊でもあった。

レーダーが150Km先まで映しだしており、そのかなり先まで、航空偵察が出されている。

この偵察機にもレーダーが積まれ、周囲50Kmを映し出している。


テスラ通信では、レーダーと通信機器を徹底的に開発していた。

非売品であったが。

当初は、真空管を使用していたため、かなり巨大な物体であったが、そのうちその交換が面倒になったのか、ニコラ・テスラは考えたのである。

これに代わるものはないのだろうかと。


その問いに「トランジスタ?」件の男は、テスラに向かって答えた。

男は、トランジスタの存在は知っていても、構造や製造方法は知らない。

その時、ニコラに劇的な反応が発生した。


突然白目になり、空を見上げる形になって、ビクンビクンと震えている。


その風景はまるでホラー映画である。

「気持ちわるいからその癖辞めない?」

男はのんきに言い放つが、それが癖なのかどうかは誰にもわからない。


宇宙との交信を終えたニコラは平常に戻ってきた。

そして、トランジスタを開発し、製造を開始したことを知る者は少ない。

そういえば、アラミド繊維でもおなじようなことが起こった。


石油化学も世界の最先端を行く、白兎石油であるが、その分野でもニコラの天才が発揮され、防弾繊維を開発していた。

故に、彼等第7艦隊の船員たちは、アラミド繊維できたベストなどを着込んでいる。

シベリア師団、ニューギニア師団では標準装備品である。


トランジスタの採用により、巨大な姿であったレーダーが相当に小さくなったのである。

流石、天才ニコラ・テスラだ。

白目の姿だけは、他の人間、特に妻や子供には見せられないだろう。

某十字教では悪魔付きと判断されても仕方ない、そのような光景である。


巨大空母と改造空母計4隻から次々と戦闘機が発進していく。

もうすぐに、夜が明ける。

第7航空戦隊の航空機隊である。(JG71、72、73、75)である。

7航戦の司令官は山口多聞少将である。

彼は、空母『玉龍』で指揮を執っている。


定数592の航空機が大編隊を編成しながら飛んでいく。

彼等が去ると同時に、60機以上の零戦が艦隊上空を援護する。

護衛空母には、機体の小さな零戦が採用されている。


そのはるか上方を100機の玄武が、飛んでいく。

空母戦隊が露払いしたあとに、正確に爆弾を投下するために、あとからついていくのだ。



途中、敵の迎撃機が舞い上がってきたが、鎧袖一触で完全に破壊する。

すでに、コレヒドール島要塞の航空兵力は残り少ないのだった。


大編隊が来襲すると、対空砲が撃ちあがってくる。

それらを巧みに避けつつ、戦闘機隊は翼下の5インチロケット砲を次々と標的に向かって発射していく。

機銃や機関砲、対空砲などが次々と破壊されていく。

それらが一掃されると、次は急降下爆撃が開始される。

地上の兵士たちが次々と爆発により吹き飛ばされていく。

さらに、攻撃機による緩降下爆撃が開始される。

実にシステマティックに攻撃は実施されていく。

もはや、抵抗することもできず爆弾を浴びる要塞。


戦艦部隊が海上30Km地点に整列する。

全ての主砲が、一点に向かっている。

戦艦ニコラ・テスラが発砲を開始する。

凄まじい発射炎と爆風が波を興す。

ダン・テスラ、伊勢、日向、扶桑、山城の主砲が連続的に射撃を開始する。

弾着観測により修正された第2斉射以降の艦砲射撃が次々と要塞を削り取っていく。

そこには、破壊と死しかなかない。

反撃する相手などそこにはいない。

遠すぎて要塞からは何もできないのである。


「サ式弾を使う」

「サ式弾装填」

恐るべき命令が下される。

サ式弾とは、新型弾頭である。


「発射準備よ~し」

「て~!」


戦艦の主砲が恐るべきサ式砲弾を発射する。


要塞が巨大な爆炎に包まれる。

そのあまりの大きさに、対岸に退避していた、陸軍の本間中将は思わず、声を挙げてしまった。


「なんだあれは!」

巨大なキノコ雲が立ち昇っていた。

しかし、要塞には次々とサ式弾が直撃していた。

全てを炎に包みこんで行く。


一切の命の存在を許さない苛烈な爆炎が要塞を包みこんでいた。




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